競争原理が働いていないため価格を下げる努力の必要がない

 高速道路のSA・PAのガソリンスタンドは、セルフが少ない印象がある。たとえばNEXCO中日本管内だと、全部で64あるスタンドのうち、セルフは13カ所のみ。残り51カ所は有人店舗だ。割合にすると約2割ということになる。一方、全国平均のセルフ率は約3割。SA・PAのセルフ率は明らかに少ない。なぜなのだろう。

 答えを簡単に説明すれば、「SA・PAのガソリンスタンドには、競争原理が働いていないから」である。

 SA・PAのガソリンスタンドは、セルフ率が低いだけでなく、ガソリン価格そのものが非常に高い。全国平均に比べると、現状、リッターあたり約20円も高いのが実情だ。これは、SA・PAのスタンドにかけられていた規制が緩和されてからの現象である。2008年まで、SA・PAの燃料価格には上限制度があり、前月の全国平均価格が翌月に適用され、事実上の全国統一価格となっていた。

 ところが、2006年からの原油価格暴騰の際、SA・PAのスタンドが一般店より断然安い状況が生まれ、SA・PAが給油客で渋滞。2008年、上限価格が廃止され、価格を自由に決められるようになった。なぜこれほど価格が高いのか、SA・PAのスタンドで店員に尋ねると、「燃料を運ぶのに高速料金がかかるから」といった答えが返ってくるが、事実は異なるようだ。

 SA・PAは、高速道路上のため、基本的には黙っていても客が来る。近年はあまりの価格の高さが原因で、かなり敬遠されてはいるが、それでも仕方なく給油する客は必ずいる。まぁ交通量が少ない路線では営業が成り立たず、撤退が相次いでいるが……。

販売した量に応じた値引きがないことが高い価格につながる

 とにかく、石油元売り各社は、SA・PAのガソリンスタンドに対しては、「報奨金」的な値引きを行っていないらしい。一般道のガソリンスタンドでは、安売りしても数量を多くさばけば、元売りから値引きが受けられる。そこで値下げをしてでも、多くの客を取ろうというスタンドが現れ、周辺のスタンドも対抗上値下げを行っている。SA・PAの場合、そういった競争が起こらない環境にある。よって、一般道のスタンドに対する価格差は、さらに少しづつ広がりつつある。

 ところで、近年はセルフスタンドだからと言って、ガソリン価格が安いわけではなく、フルサービス店とほとんど変わらなくなっている。経営する側にとっては、フルサービスのほうがガソリン以外の商品を売りやすいが、お客側としては、セルフスタンドのほうが手早く給油を済ませられる面もあり、セルフが必ずしも安さで勝負する時代ではなくなっている。

 ただしSA・PAのスタンド場合、オイル交換やパンク修理などのサービスは、有人店でも現状ほぼやっておらず、「給油できるだけありがたいと思え」的な、上から目線状態になっている。もはや、「SA・PAにはガソリンスタンドはない」くらいのつもりで自衛するしかないが、NEXCO各社は、いい加減、給油&メンテナンスサービスの著しい品質低下に関して、何らかの対策を打ってもらいたい。