100万円台?いえ、この高級感で18万円なんです!プロも驚く超高コスパ腕時計『メカニカル ムーンフェイズ』のクオリティとは


【詳細】他の写真はこちら
コスパ最強!実用時計の値段で買える新世代の複雑時計

MECHANICAL
MOON PHASE RK-AM0001S
実勢価格:18万3600円
問い合わせ:オリエントお客様相談室
042-847-3380
本誌で何度も書いたとおり、今、国産時計がかなり面白い。値段が控えめで丈夫なだけでなく、ケースやムーブメントの仕上げは良くなり、実用時計の枠を超えた魅力を持つようになったのである。
その最右翼が、今回取り上げるオリエントスター『メカニカル ムーンフェイズ』だろう。セイコーエプソンの傘下に加わって以降、オリエントの時計は、ユニークさに加えて、高級時計並のクオリティーを手に入れた。しかも、戦略的な価格のままに、だ。
このモデルは、月齢を示すムーンフェイズと、駆動時間を示すパワーリザーブ、そして日付を示すポインターデイトを備えている。
普通、こういった機構を載せると、値段は跳ね上がるが、本作はわずか17万円。しかも、安かろう悪かろうではないのが、今のオリエントスターらしい。

メカニカルムーンフェイズが搭載するのは、1971年(昭和46年)に発表された46系という自動巻きである。そもそもは平凡な自動巻きだったが、オリエントは細かく手を入れ、やがて同社の屋台骨を支えるムーブメントに成長させた。同社と統合したセイコーエプソンは、46系をさらに改良し、+15秒から-5秒という良好な精度と、高級機のような仕上げを加えた。
その一例が、ムーブメントに使われる青いネジだ。普通、数十万円代の時計に使われる青ネジは、焼いて青くしたのではなく、色を付けた擬似的な青ネジである。加熱してブルーに変色させたネジが欲しければ、最低でも100万円は払わねばならない。しかしオリエントスターは、10万円台の時計に、焼いた本物の青ネジを与えたのである。
他のディテールも手間がかかっている。このモデルが使っているのは、青く塗装した針だ。青焼きでないのは残念だが、青く焼いた針はコストがかさむため、やむを得ない。
ただし、色味は青焼きした針並みには鮮やかだし、分・秒針の先端もきちんと曲げてある。針の先端を曲げると、時計を斜めから見た際に、時間が読み取りやすい。昔の高級時計では、よく見られたディテールだが、コストがかかるため今や採用例は希だ。それにモダンな時計に、曲げた針が似合わないのも事実だ。

対してオリエントは、このクラシカルなムーンフェイズウォッチに、曲げた分・秒針を与えてみせた。何度も言うが、この時計の定価は170万円ではなく、17万円なのだ。しかも、針の中心に、高級時計よろしく、蓋をかぶせている。中心に蓋をかぶせると、針の軸が見えなくなって高級感が増す。これも、珍しいディテールだが、本作では採用されている。

ストラップも凝っている。普通、10万円台の時計が付けるストラップは、カーフか、せいぜいアリゲーターの型押しをしたカーフストラップだ。理由はやはり、アリゲーターやクロコダイルストラップが高いため。
しかし、セイコーエプソンはどうやって調達したのかは分からないが、本物の本ワニ皮革ストラップを用意した。バックルも、ストラップを痛めない三つ折れ式で、いかにも高級時計らしい。
個人的な好みを言うと、もう少しケースは小さく薄くあって欲しい。ただ、趣味時計の要素は加味しているとは言え、もともと実用時計と考えれば、直径41mm、厚さ13.8mmというサイズは許容範囲か。
ともあれ、オリエントスター メカニカルムーンフェイズのコスパは驚異的である。ありきたりの実用時計に飽きた人は、ぜひ一度、店頭で腕に置かれたし。充実した機能やその質感は、17万円という定価を決して感じさせないはずだ。

広田雅将(ひろたまさゆき):1974年生まれ。時計ライター/ジャーナリストとして活動する傍ら、2016年から高級腕時計専門誌『クロノス日本版』の編集長を兼務。国内外の時計賞の審査員を務めるほか、講演も多数。時計に限らない博識さから、業界では“ハカセ”と呼ばれる。
※『デジモノステーション』2018年10月号より抜粋。
関連サイト
MOON PHASE RK-AM0001S
text広田雅将