東急電鉄は鷺沼駅の既設カメラを使って転落検知システムを構築

写真拡大

 鉄道各社が駅ホームにおける安全対策を加速させている。ホームからの転落を防ぐにはホームドアが最も有効だ。だが、億単位の費用がかかることから、設置は利用客の多い駅に限られ、扉位置や車両の長さが異なる列車への対応など技術課題も残る。このため情報通信技術(ICT)を活用し、簡易な方法で転落や転落可能性を検知し、列車との接触事故を防ぐ技術の導入も進む。

 駅ホームではこれまで、視覚障害者が安全に利用できる環境づくりに取り組んできた。ホーム方向を突起で知らせる「内方線付き点状ブロック」の普及が進み、声かけ・見守りキャンペーンといった啓発活動も広がる。一方、転落要因の首位は酔客で全体の6割を占める。体調不良や携帯電話使用に伴う転落も多く、視覚障害者向け施策だけでは、安全の確保は不十分だ。

 東京急行電鉄は田園都市線の鷺沼駅(川崎市宮前区)で、駅既設の監視カメラを使った転落検知支援システムの運用を始めた。ホームから転落した人や転落しそうな人を自動検出し、駅員に知らせる仕組み。「周りに人のいない時間帯に活躍する」(東急電鉄)と期待を示す。

 パナソニックの人工知能(AI)画像認識技術を展開。カメラの映像をリアルタイム解析する専用サーバーを駅に設置した。警報とともに、システムが何を検知して判断したのかを専用端末の映像で確認でき、早期の的確な対応を可能にした。

 西武鉄道は新宿線の新井薬師前駅(東京都中野区)で、列車とホームの隙間に転落した利用客を発見する設備の実証試験を始めた。曲線ホームのため、列車停止時に「数十センチメートルの隙間が生じる箇所がある」(西武鉄道)という。利用客が隙間に挟まる、または転落した場合、運転士に異常を知らせて安全に脱出できるようにする。

 オムロンソーシアルソリューションズ(東京都港区)が開発。ホームの下に取り付け高さの異なる2台のレーザーセンサーを設け、音と光で知らせる仕組み。上のセンサーで挟まりを、下のセンサーで転落を検知する。

 転落や、転落して列車に接触する事故は減少傾向にある。依然として視覚障害者の事故はなくならないが、自殺を除く全体の転落件数は、2014年度3673件が16年度2890件、接触事故も14年度227件が16年度187件と減っている。

 ホームドアの普及が進めば、転落件数の減少はさらに加速すると見られる。他方、各駅の利用状況や環境に応じた安全対策の検討も欠かせない。
(文=小林広幸)