大都会東京の素敵な「裏切り」。こんなに自然豊かな島があるんです。

写真拡大 (全28枚)

「どこにもいかないまま、夏が終わってしまった…」「9月になったけど、まだまだ遊び足りない!」

そんな不完全燃焼を抱えているあなた。週末にひょこっと「東京の島」へ出かけてみるのはいかがでしょうか。思わず「ここは東京?」とつぶやいてしまう、うれしい「裏切り」に出会えること請け合いです。

「島好きライター」である薮下佳代さんが、東京の島の楽しみ方を5回にわたってガイドします。

島好きライター
薮下佳代(やぶした・かよ)
編集者・ライター。2009年、新島を訪れてから東京の島の魅力にはまり、2011年、大島から神津島までの5島を紹介する東京の島のガイドブック「島もよう」(エスプレ)を制作。2018年夏、東京11島を取材した「東京 島の旅 伊豆諸島・小笠原諸島」(京阪神エルマガジン社)を出したばかり。
 
東京にも島があるのをご存知ですか?

日本列島には無人島も含めると、6,852もの島があるそうです。なかでも人が住んでいる有人島の数は416島(平成27年国勢調査より)。
 
そのうち、東京都には11島が存在しています。
※イラスト中、青点線は船、オレンジ点線は飛行機、黄色点線はヘリコプターの運航路。
その11島は、本島から近い順番に…
 
●大島(おおしま)
●利島(としま)
●新島(にいじま)
●式根島(しきねじま)
●神津島(こうづしま)
●三宅島(みやけじま)
●御蔵島(みくらじま)
●八丈島(はちじょうじま)
●青ヶ島(あおがしま)

 
これらの9島は伊豆諸島と呼ばれています。さらに南へ行くと小笠原諸島である、
 
●父島(ちちじま)
●母島(ははじま)

 
があります。
休みともなれば沖縄の離島やハワイへ行っていた私が、東京の島を知ったのは今から9年前のこと。“灯台下暗し”とはまさにこのことで、東京に住んでいるのに、それまで東京の島のことを何も知らなかったのです
新島の淡井浦(あわいうら)海岸。白い砂にどこまでも透き通る海。新島はサーファーたちの聖地のひとつだ。
そんな島好きな私が思う東京の島の特別さは、「東京から行ける」ということ。世界でも有数の大都市から、自然豊かな離島までもが楽しめてしまうのですから。

これが例えばニューヨークやロンドン、パリやベルリンから少し足を延ばして、そうした離島へ行けるならば、旅行の際には訪ねてみたいと思いませんか?まだまだ知られざる東京の一面、それが東京の島なのだと思っています。

第1回では、まずは東京に島があるということ、その魅力について、たっぷりとお伝えしたいと思います!
 
 
まず、東京の島への行き方からご紹介しましょう。島へのアクセスは、船と飛行機、ふたつの手段があります

どちらもオススメなのですが、選ぶポイントは、時間と料金のバランス、でしょうか。

船の乗り場は、浜松町駅から歩いて15分ほどの場所にある竹芝桟橋。ここが島への玄関口となります。浜松町の駅前で、スーツ姿のサラリーマンたちと、いかにも島へ行きそうなバックパックやスーツケースを持った旅人たちが入り交じる光景は、いつ見ても不思議な感じがします。
 
●交通手段1 大型客船
大型客船「さるびあ丸」。甲板に出てどこまでも続く海を眺めていられるのは大型客船ならではのお楽しみ。東京〜神津島、東京〜八丈島を結ぶ航路などがある。
島好きな人が選ぶことが多いのは、やはり「大型客船」。他の手段と比べて所要時間が少々長いのですが、料金が一番安く、島旅らしさを存分に味わえます

夜、竹芝桟橋を出て朝、島に着くので、船の中でぐっすり眠れば朝からフルに遊べますし、夜景が美しい東京湾を見ながら甲板でビールを飲むのは私にとって至福の時間です。
 
 
●交通手段2 高速ジェット船
高速ジェット船「大漁」。カラフルでポップな船体は、気分が上がること間違いなし。
「高速ジェット船」はその名の通り、海の上をすべるように走ります。揺れも少なく、船酔いしやすい人に一番オススメです。

所要時間も短く、朝出て昼には到着!カラフルなカラーリングも思わずカメラを向けたくなるかわいさで、運航している4船には「セブンアイランド 愛・虹・友・大漁」と全てに名前がついていて、青い海の上を走る姿も絵になりますよ。
 
●交通手段3 飛行機
調布飛行場から飛んでいる小型飛行機。定員が19人のため、もちろん機内サービスはなし、残念ながらキャビンアテンダントはいませんのであしからず。
また、もうひとつの手段である飛行機についてもご紹介しましょう。
調布にある飛行場から伊豆諸島の大島、新島、神津島、三宅島の4島へは、小型飛行機が1日2〜4便(時期によって変動あり)が出ています
小型飛行機から見える三宅島の眺め。島の海岸線がくっきり。船では味わえない極上の時間です。
19人乗りで所要時間は25〜50分ほどと、あっという間に島へ到着。江ノ島やみなとみらい、富士山などの景色や、島々を上から楽しめるとあって、船に比べると料金は高いですが、移動しながら遊覧飛行ができると考えればお得ではないでしょうか。

また、八丈島へは羽田空港から全日空(ANA)が1日3便運航しており、こちらも所要時間は55分。1時間足らずで南の島へ行けちゃうんです。
※利島、式根島、御蔵島、青ヶ島へは船のほか、ヘリコプターや連絡船が運航しています。
 
 
週末を使って東京の島へ行くならばとっておきの段取りをご紹介しましょう。(船と飛行機の両方が運航されている、大島、新島、神津島、三宅島、八丈島へ行く場合に使える方法です)

金曜の夜、仕事を終えたら浜松町へ。島へ渡る人たちのワクワクと熱気で夜の竹芝桟橋はひと際、にぎわっています。

ビールとおつまみを買い込んで大型客船に乗り込み、甲板でまずはビールで乾杯。船内にあるレストランで島焼酎を飲むのもオススメです。

ほろ酔いで眠りにつけば、いつのまにやら翌朝には島へ到着しています。
 
 
土曜の朝から島を堪能して1泊したら、日曜は最終便の飛行機で帰ります。そうすれば、たったの1泊2日ながら(船中1泊のぞく)島を存分に楽しめますし、行きを船にすることによって料金もぐっと抑えられて一石二鳥というわけ。
 
 
島についたら、何をするか。

11の島、それぞれに美しい海があり、暮らしがあり、東京とは思えないダイナミックな景色が広がります。
三宅島の黒々とした大地は火山岩。2000年の噴火の跡があちこちにあり、自然がむき出しのまま残っています。
父島や母島など、南へ行けば行くほど、その地理的環境ゆえ、独特の景観と文化を持っており、見るもの出会うものにきっと圧倒されることでしょう

そんな島でのオススメの過ごし方といえば…「何もしない」こと。これに尽きます。

観光スポットをただ見て回るだけでは、島を感じたことにはなりません。
見てください、この青さ!新島の羽伏浦(はぶしうら)海岸は、それはもう絶景なんです。
透き通る海を時間も忘れて眺めたり、車や自転車を借りてあてもなく島を走ったり、キラキラと瞬く満天の星空に包まれて、パワーみなぎる温泉で芯から温まったり。朝は少し早起きして海風にあたりながら散歩したり、新鮮なお魚でおなかを満腹にして、民宿の畳の上で昼寝したり…。

そんなふうに、島に流れるゆったりとした時間に合わせて「何もしない」のが一番のぜいたくだと私は思っています。

島にはコンビニもなければ、スーパーがあることもまれで、何でもそろう商店が数軒あるのみ、なんて場合も。けれど、ないものを探すのではなく、あるもので楽しんだり、面白がれる人にとっては宝物のような場所なのです。

もちろん、アクティブ派にはダイビングやサーフィン、釣り、ハイキングなどが体験できるスポットもたくさんあります。御蔵島や父島では、ドルフィンウォッチングも楽しめるんですよ!
三宅島で見つけたちょっとした遊歩道。この先には驚くほど青い海が! こんな道を見つけるだけでワクワクしてきませんか?
島を楽しむには、少々コツが必要です。

地図を見て最短距離を行くのではなく、あえて違う道を行けば、自分だけの島の景色を見つけることができるかもしれません

宿の人や島の人にもどんどん話を聞いてみましょう。夕日がきれいに見える場所や、魚が釣れる秘密のスポット、急変する天気や海況など、ググってもすぐには分からない、生の情報が手に入るはずです。普段、東京での暮らしではなかなか体験できない時間を、島で過ごしてほしいなと思います。
 
 
八丈島で見た「うみ」への看板。こういう“出会い”に導かれて、自由気ままに歩きたい。
 
 
東京に住んでいる人にとって、東京の島は“パラダイス”なのかもしれない。そう思うことがあります。

忙しくてへとへとになっても、船に乗れば別世界へ連れて行ってくれる。島で何もせず、ただ過ごすだけで、なんだか元気が湧いてくるのです。

そして東京に戻っても、また日常へとすんなり戻っていける。海を隔ててはいるけれど、どこか地続きな感じもして、やっぱり東京の島なんだなと思うのです。
 
 
朝晩のひんやりとした空気に、秋の訪れを感じ始めた今日この頃。夏の終わりを感じて少し寂しくなった人もいるのでは?でも、大丈夫。まだ間に合います!まだまだ夏の終わらない東京の島へ、さあ、旅立ちましょう

次回からは、特におすすめしたい4つの島をご紹介していきます!
 
↓もっと詳しく知りたい方は↓ 
 
 
「島の旅」といえば、沖縄? それともハワイ? いえいえ、実は東京にもあるんです、すぐに行ける素晴らしい島々が。次の週末にでも思い立ったら船や飛行機でらくらく行ける伊豆諸島から、上陸できるかは“運次第”な絶海の孤島・青ヶ島、そして24時間もの船旅を経てたどり着ける憧れの小笠原諸島まで。東京の有人島11島すべての過ごし方、見どころ、ごはん屋さん、宿、おみやげまでを紹介する、唯一無二の旅行ガイド。(京阪神エルマガジン社 1200円+税)
イラスト/阿部伸二(カレラ)
写真/志鎌康平、原田教正、衛藤キヨコ
編集・文/薮下佳代
デザイン/矢部綾子(kidd、マップ)、桜庭侑紀