フルーツ感覚で美味! 食べられる「ホオズキ」は栄養面でもおすすめ

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執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー)
医療監修:株式会社とらうべ


毎年7月に開催される浅草寺の「ほおずき市」は、下町の夏の風物詩として定着している行事で多くの観光客も訪れます。

縁日ではたくさんの鉢仕立ての「ホオズキ」が売られるのですが、これは観賞用です。

そんなホオズキが食べられること、ご存知でしょうか。

今回はちょっと珍しいホオズキの食べ方や栄養価についてご紹介しましょう。

「ホオズキ」には食用と観賞用がある

「ホオズキ」を漢字で表わすと「鬼灯」「鬼燈」と書きます。

赤いちょうちんがぶら下がっているようなフォルムのホオズキは、「ナス科ホオズキ属」の植物で数多くの種類があります。

あの独特の形状の袋は「ガク=花びらの付け根」で、袋のなかに実がなっています。

袋状に育ったガクは、8月頃に赤色に色づきます。

実は昔からホオズキには食用と観賞用が存在します。

観賞用を食べることもできますが、毒性を持っている可能性がありますので、もし食べるときは食用ホオズキを選んでください。

食用ホオズキ

果実は薄いオレンジ色が一般的です。
甘酸っぱい味でフルーツとして利用されています。

植物名ではショクヨウホオズキ、オオブドウホオズキ、シマホオズキなどがあります。
市場では、ストロベリートマト、フルーツホオズキ、オレンジチェリーなどの呼び名で売られています。

ヨーロッパでは古くから食用ほおずきを栽培していて、料理に利用してきました。
日本でも近年食用の栽培が進み、7〜10月頃が旬といいます。

観賞用ホオズキ

果実は赤い色をしています。
味は苦みがあるうえ、前述のとおり毒性を持つ可能性が考えられますので食用には向きません。

ただし、中国では酸漿(さんしょう)などと呼ばれ、生薬として利用されてきたようです。
サンズンホオズキ、丹波大実ホオズキ、ヨウラクホオズキなどがあります。

食用ホオズキの栄養価

食用ホオズキには、次のような栄養素が豊富に含まれています。

βカロテン


 

100gあたり643μg(トマト540μg、イチゴ17μg)

 強い抗酸化作用を持っています。細胞は、鉄と同じで酸化するとサビます。
 そうすると、さまざまな機能が低下して老化を早めてしまいます。

 たとえば、皮膚の細胞ではシミやシワの原因に、臓器の細胞では機能低下の原因になります。
 このような酸化を抑えるのが抗酸化作用です。

 また、皮膚や粘膜の健康維持に関わるビタミンAの前段階の成分で、健康な肌を保ち免疫力の維持にも働きます。

ナイアシン


 

100gあたり2.28mg(トマト0.7mg、イチゴ0.4mg)

 代謝を促す働きがあり、食事から摂取した糖質、脂質、たんぱく質をエネルギーに変えたり、アルコールの処理をサポートしたりしています。
 毎日の食事はもちろん、ダイエット中や二日酔い予防にも積極的に摂りたい栄養素です。


 

100gあたり0.43mg(トマト0.2mg、イチゴ0.3mg)

 血液の赤い色素の構成成分であり、酸素運搬という重要な役割を果たしています。
 不足すると貧血につながり、倦怠感やめまいなどを引き起こします。

 貧血を起こしやすい女性は、とりわけ積極的に摂りたい栄養素です。
 そのほか、代謝促進や神経伝達、コラーゲン生成にも関わる重要な働きがあります。

イノシトール


 

100gあたり66mg(トマト40mg、イチゴ57.4mg)

 ビタミンに似た働きを持つ栄養素です。
 肝臓に脂肪が蓄積しないように調整する働きが注目されています。

 また、細胞膜の構成成分でもあり、ヒトの身体に欠かせない重要な成分です。

ホオズキの取り入れ方

特産品として、デパートの果物売り場や直売所、インターネット販売などを通じて入手可能です。

さらに、最近では家庭菜園で育てる方も増えているとのこと。

ミニトマト程度の扱いやすい大きさや誰にでも好まれる甘酸っぱい味から、デザートやジャムに加工するなど、果物の位置付けで取り入れられることが多いようです。

ドライフルーツで販売されているものもありますので、ヨーグルトや手軽につまむおやつ、サラダに加える食べ方もおすすめです。

ホオズキに含まれるβカロテンは脂溶性ですから、油と一緒に摂ると吸収率が高まります。

一方、鉄分はビタミンCや酢と一緒に摂ると吸収率が高まります。

つまり、ドレッシングをかけるサラダの具材には最適と言えます。

食べるときの注意点

ホオズキが属する「ナス科」の植物には、アルカロイド類(アルカロイドという構造を持つ成分)が含まれています。

アルカロイド類には毒性を持つものも多く、多量に摂取すると、吐き気・嘔吐・頭痛・痙攣・下痢などの健康被害が起こる場合があります。


<アルカロイド類の例>

● ジャガイモの芽に多く含まれる

「ソラニン」

● トマトの未熟果に多く含まれる

「トマチン」

● 茶葉に含まれる

「テオフィリン」

● タバコ草に含まれる

「ニコチン」


ホオズキに含まれる「ソラニン」や「ヒストニン」などのアルカロイド類は微量ですし、観賞用に比べ食用は含有量も少ないですから、過度の心配は無用です。

ただし、ヒストニンは子宮収縮作用が確認されていますので、妊娠中の女性は避けた方がいいでしょう。

食用ホウズキの旬は7〜10月頃。興味のある人はフルーツ感覚で試してみてはいかがでしょうか。


<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー。
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供