1955年に初代が登場したトヨタのクラウンは、じつに60年以上の歴史を誇る日本を代表する高級車です。

しかし、トヨタは困った問題を抱えています。クラウンの歴史と同じようにオーナーの年齢層もスライド。クラウンオーナーの平均年齢は70歳を超えているといいます。

そうしたなか、新型となる15代目はオーナーの若返りをねらって登場しました。

その手法はというと、まずクルマそのものをスポーティにする。次にコネクティッド関係を充実させて若者の使い勝手にマッチしたクルマにする、などが挙げられます。

代々、クラウンは日本の交通事情に則したクルマ作りを行っていてボディサイズもそれに合わせたものです。新型クラウンは、全長が4910mm、全高が1455mmで先代とほぼ同じサイズ。全幅は1800mmでこれも先代と同じ。大きくすれば広くなるのはあたり前ですが、日本の交通事情を考えれば1800mmはギリギリのサイズと言えます。

そのシルエットはクラウンそのもの。並べて見るとそれなりに違うのですが、遠目ではクラウンにしか見えません。ホワイトのボディカラーのモデルで高速道路を走ると、先行するクルマが次々とペースダウンします。おそらく覆面パトカーと間違えているのでしょう。

搭載されるパワーユニットは3種類あります。もっとも排気量が大きなものが3.5リットルV6で、299馬力のエンジンに180馬力のモーターが組み合わされたハイブリッドとなります。次は2.5リットル直4で、エンジンが184馬力、モーターが143馬力のハイブリッドです。2リットルは直4ターボのピュアエンジンで245馬力の出力となります。

もっともクラウンにマッチするエンジンは3.5リットルハイブリッドでした。バランス的には2.5リットルハイブリッドがよく、おそらくこれが売れ線となるのでしょう。2リットルターボはちょっと低速トルク不足を感じました。

と思ってしまった私ですが、果たしてそれでよかったのでしょうか? クラウンが若返りを狙っているなら従来通りの重厚長大なパワーユニットがマッチしてはいけないような気もします。ただ、高齢者と若者が好むパワーフィールに違いがあるかどうか? は不明です。クラウンのような上級セダンならば年齢に関係なく低速から高速までしっかりとしたトルクがあるエンジンのマッチングがよくてあたり前ですから。

シャシー性能は非常に高いものを感じます。ここ3代くらいのクラウンに乗ったことがない人は、たぶんクラウン・イコール・柔らかい不安定な足まわりという先入観を持っているでしょうけど、クラウンの足まわりはどんどん締め上げられていてとくに13代目以降のクラウンはかなりの高レベルのシャシーが与えられています。

試乗車はグレードが異なり、採用される制御デバイスも異なるのですが、どのモデルでも基準となるシャシー性能は高いものです。なかでもRS系であった2リットルモデルは、電子制御の可変ダンパーを採用したAVSが装着されます。モードをスポーツS+にすれば、コーナーを攻めるような走りも十分にこなします。AVSはパワーユニットに関わらず、RSグレードには装備されますので、3.5リットルハイブリッドならば、ビックリするような走りができるかも知れません。

コネクティッドの部分ですが、これはあまり試す機会がありませんでした。決め手となるのはDCMを標準で搭載し常時通信を行いクルマが単独で走行しているのではなく、まるで飛行機の管制システムのような状態になっているということ。

ナビゲーションをはじめ、さまざまな機能がオペレーターを通して行えるほか、路車間通信なども充実。万が一の事故の際には自動的にオペレーターに配信され、救急車やドクターヘリの手配まで行われます。さらに、車両情報についても通信され、エンジンオイルの量や定期点検のお知らせなどがディーラーから行われるほか、警告灯点灯時の処置方法のアドバイスなども行われるという至れり尽くせりの情報サービスが用意されています。

クラウンのユーザー層若返りに一体なにが必要なのか? の答えはきっと簡単には出てこないことでしょう。ただひとつ言えるのは愚直にいいクルマを作ればユーザーはついてくるということではないでしょうか?

それともうひとつ、そろそろクラウンを世界デビューさせてはいかがでしょう。やっぱり世界に出して世界のユーザーに磨かれないと光りきれないのではないと思います。日本には全幅1800mmの素晴らしいクルマがある……ということはきっと通じるはずです。新型クラウンにはそのポテンシャルがあると感じられた試乗でした。

(文・写真:諸星陽一)

【トヨタ・クラウン試乗】オーナーの平均年齢が70歳超のクラウン。若返りをねらった新型の出来はいかに?(http://clicccar.com/2018/08/18/618592/)