大杉漣さん

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 今年(2018年)2月21日に急逝した大杉漣さん(享年66)。亡くなる直前まで現場にいたほどの仕事好きだったが、生前に撮影されていた映画の公開はまだこれから。少なくとも3本の映画が公開されるという。

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 8月18日より東京・武蔵野スイングホールで上映会が開催されるのが「神楽鈴の鳴るとき」(小沼雄一監督)。国の重要無形民俗文化財である「河口の稚児舞」をモチーフにした作品で、「千と千尋の神隠し」や「君の名は。」などのスタッフでもある増山修氏が原案・脚本、製作総指揮を務めた。劇場では、主演の加藤明子や小沼監督、増山氏などを招いたトークも行われるが、もし大杉さんが存命であれば、トークにも参加したことだろう。

大杉漣さん

 そして10月6日には大杉さんがプロデュースした最初で最後の作品、そして主演も務めた「教誨師」(佐向大監督)が公開される。300の顔を持つ男とまでいわれるほど、あらゆる役をこなした大杉さんだが、初プロデュースというのが意外だ。彼は製作側、監督をやってみたいという気持ちはなかったのだろうか。

「どうでしょうか。みなさんと一緒になって作品を作りたいという人でしたから、色々気持ちはあったかと思いますけど。基本は演じることが本人の役割と考えていたように思います」とは、大杉さんのマネージャーである。

「教誨師」をプロデュースしたのは、佐向監督が大杉さんの事務所ザッコに所属していたことも大きかったのだろう。

 また、この作品では主演というのも大杉さんには珍しい。なにせ「バイプレイヤーズ」(テレビ東京系)に出演していたほど、脇役が多かったのだから。

「そうですね、10年前の『ネコナデ』(大森美香監督)がその前の主演作かもしれません。若い頃はいろいろやっていましたけど……」(同)

ピンクリボンとブルーリボンで受賞

 舞台俳優をやりつつ、日活ロマンポルノや新東宝映画などのピンク映画に出演もした大杉さんだが、主演作もあるのだ。有名なところでは、「おくりびと」の滝田洋二郎監督が1983年に撮った「連続暴姦」ではその演技力が評価され、ピンクリボン賞主演男優賞を受賞。

 のちに「HANA-BI」(北野武監督)でブルーリボン賞助演男優賞を受賞した際に、大杉さんはこう挨拶している。

「ピンクリボン賞とブルーリボン賞の両方を取ったことがあるのは、おそらく僕ぐらいのものでしょう。快挙ですよ」

 大杉さんの主演作品は「教誨師」が最後となるようだが、出演作はまだある。10月20日には、東広島の酒蔵を舞台にした「恋のしずく」(瀬木直貴監督)も公開(広島では10月13日より先行公開)される。8月には、ロケで使用した柄酒造が西日本豪雨災害で被災し、監督はじめスタッフなどおよそ30名がボランティアに参加した。蔵元役だった大杉さんが元気であれば、きっとここにも参加していたはずだ。

「そうですねえ、優しい方でしたから、自分ができることが何かないかと考えたでしょうねえ」とは大杉さんのマネージャーだ。他の2本についても、

「きっと宣伝に走り回っていたでしょうね。とにかく仕事が大好きで、1本1本の作品に全力で当たっていましたから。だからこんなに仕事もいただけたわけですし……」(同)

 それにしても、亡くなって半年になろうというのに、まだ公開される作品があるとは……。業界誌記者がいう。

「大杉さんが出演していた作品、まだあるんじゃないかといわれています。確かに仕事好きで、映画学校の生徒達の出演依頼にも応えていたくらいでしたからね。それに大杉さんの場合、自分が作った事務所の運営のためという一面もありました。所属俳優に大杉さんが気の置けない舞台役者などを集めた事務所だったので、稼ぎ頭だったことは間違いありません。CMもトヨタや大塚製薬、アサヒ飲料など大手も多かったし、そうした収入もなくなったわけですから、運営は大変でしょう。大杉さんが亡くなり、他の所属俳優も移籍させ、年内にも事務所は解散する方向と聞きます。ただ、事務所内では大杉さんに次ぐ活躍を見せていた古舘寛治(50)などは引く手数多でしょうが、まだテレビや映画での活躍が少ない俳優達の移籍先探しは難航しているようです」

 好きな俳優の仕事を最期までやり抜いた大杉さんの唯一の気がかりに違いない。

週刊新潮WEB取材班

2018年8月18日 掲載