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第1回:ベントレー・コンチネンタルGT 400kmの旅で探るスポーティとラグジュアリー
第2回:ベントレー、手仕事の驚異 ファクトリーで目の当たりにした「特別」への探求
第3回:2台の「コンチネンタル」に試乗 大きく異なるキャラ、ベントレーの歴史を語る
第4回:ベントレー、意匠のインスピレーションどこから? デザイナー語る過去と未来
第5回:コンチネンタルGTの「レシピ」 ベントレー主要部門のリーダー語る、開発背景
   ― シャシー開発部長編
   ― W12エンジン設計部長編
   ― 電気電子機器部長編

 
新型ベントレー・コンチネンタルGTの開発背景に迫る第5回の最終話。今回は電気電子機器部長を訪ね、あの「回るインフォテインメントディスプレイ」やヘッドライトへのこだわりを探る。

AUTOCAR JAPAN sponsored by ベントレー・モーターズ・ジャパンtext:Steve Cropley(スティーブ・クロプリー)
photo:Luc Lacey(ルーク・レイシー)

もくじ

ー いかに軽くするか
ー 可能な限り最高の品質で
ー 番外編 ヘッドライト開発裏話

いかに軽くするか

新型ベントレー・コンチネンタルGTのすべてに搭載されているコンポーネントがある。200名からなるクルーの電気電子機器チームの技術力、熱意、実績を象徴するものであり、チームのボス、ダン・ホイッタカーがよく持ち歩いているものだ。

明らかにダッシュボードのコンポーネントだとわかる三角形のプリズムで、ヒンジがついているため可動するものだとわかる。ひとつの面には大きなディスプレイがついている。

しばらくして、それが新型コンチネンタルGTのダッシュボードにある回転ディスプレイだと気付く。クルマをスタートするときに堂々と現れ、様々な現代的機能へのアクセスを提供するものだが、ドライバーがシンプルさを好むなら隠しておくこともできる。

われわれはクルー本社ビルから少し道を下ったところにあるピムズ・レーン自動車ショールームでホイッタカーと面会し、電圧やLEDなどについて話し合ったのだが、彼は目の前のテーブルの上にていねいにこのお宝を置いた。

クルーにきて18年になる彼は「主として電気関連の」プロジェクトを成功させ、全社の電気・電子装備を統括する今のポジションにまで栄達した。ワイヤリング、ライト、電子機器など、みな手強い相手だ。

新型コンチネンタルGTは先代から大きく前進していると彼は言う。「電気的な視点から見ると、先代からキャリーオーバーしたものはありません」と彼。「考えてもみてください。ずいぶん前のクルマです。われわれはミュルザンヌ、ベンテイガで新規開発を行ってきましたが、このコンチネンタルGTでさらに前進しました」

「ワイヤリングハーネスを見るだけで、どのように変わったのかわかりますよ」と手首の半分ほどの太さのワイヤーの束を指さしながら彼は言う。「クルマの機能は大幅に増えましたが、ハーネスの束はそんなに太くなっていません」

他社と同じく、ベントレーもひとつのワイヤーに多くの異なった信号を通すマルチプレックスバスを使うようになったからだと彼はその理由を説明する。

「15年前は、ライトひとつ点灯させるにもバルブ、ワイヤーセット、リレー、スイッチが必要でした。今日同じことをやれば、腕の太さほどのワイヤーの束が必要になるでしょう」現状では、ベントレーのワイヤーの総重量はおよそ50kg。軽量化へのあくなき努力の結果である。

しかし、電子機器関係でもっとも注目すべき挑戦は回転ディスプレイだとホイッタカーは言う。なせだろう?

可能な限り最高の品質で

「われわれはベントレーのダッシュボードにiPadのようなものを取り付けたくなかったのです。あのクルマのようなね。だから隠さなければなりませんでした」

「検討を重ねた結果、ダッシュボードから回転してディスプレイが現れるというこのアイデアを思いつきました。そうすると、開閉動作も緻密で堂々としたものにしたかったので、当然ながら時間がかかります」

「でも、米国では選択してから隠れたディスプレイが使えるようになるまでの時間に制限があるのです。そこで最終的には2種類のスピードを設けました。標準とせっかちなひと向けのクイックの2種類です」

「その上、中に入っているディスプレイは熱を出すため、冷却ファンが必要になります。このファンはアリゾナ砂漠でも北極圏でも正常動作しなくてはなりません、もちろん」

ホイッタカーの電気専門家集団がインテリアデザイナーや製造の専門家と協力して、どのような「サプライズ」の仕掛けを盛り込むか慎重に考えて決めなくてはならないのは、こうした困難さが理由である。

「本当に差別化となるものは何なのか、確信が持てるまで慎重に検討しなければなりません」と彼は言う。「そして、可能な限り最高の品質でそれを実現しなければならないのです」

ホイッタカーの審美眼はオーディオの選択や搭載方法にまで及ぶ。新型コンチネンタルでは標準のベントレー・サウンドシステム(これ自体、他のクルマのオーディオより格段に良いものだが)と2種類のオプションを選択することができる。バング&オルフセンの「ライフスタイル」システムと、ベントレーお馴染みの超高級メーカー「ナイム・オーディオ」のシステムである。

「ふたつのブランドのシステムを導入するにあたっては長い議論がありました」と彼は説明する。「しかし、B&Oの音は独特の素晴らしさを持っているので、ナイムのシステムと比べても全く遜色ないオプションになると思いました。お気に召していただけると信じています」

番外編 ヘッドライト開発裏話

新型コンチネンタルGTのヘッドライトは、電気電子機器部長のダン・ホイッタカーと彼のチームにとって難題だった。

ベントレーのデザイナーは伝統的な丸形のままを主張したが、ホイッタカーは対向車の目をくらませることなく明るい視界を確保できるマトリックスLEDを採用したかった。

問題は丸形のマトリックスLEDなどどこにもなかったことだ。既製品はほとんどすべて幅広の薄型だったので、まったく異なったレイアウトが必要となった。

新型ヘッドライトは独立に調整可能な6個のLEDが上半分に並び、下半分にはひとつのロービーム用LEDが配置されている。ベントレーの関係者によればとても明るいそうだ。

見栄えもひときわ素晴らしく、ガラスのカッティングが深みと高級感を増している。一重楕円のテールライトはシンプルなスタイルを印象付けているとホイッタカーは言う。左右のテールライトの間にシャットラインが入っていないこともその印象を強めている。

(第6回は8月31日に公開予定)