アッパー層の男性ほど、ストイックに身体を鍛えている。

鍛えれば鍛えるほど、結果が見えるのが筋トレ。

浮かび上がるシックスパックに、盛り上がる上腕二頭筋、甘美な陰影を描く広背筋…。

筋肉が成長する過程に、男たちはヤミツキになるという。

ならば、止まらない筋肉への情熱を、聞いてみよう…。




【今週の筋トレ男子】

名前:木島さん(40代)
職業:会社経営
身長/体重/体脂肪率:178cm/74kg/15%
筋トレ歴:5年
通っているジム:SHIBUYA FITNESS SHAREZ


80kg目前、ライザップに駆け込んだ


40代に突入した途端、これまでとは異なり急に痩せなくなる…というのは、よく聞く話。

男女とも新陳代謝が下がるため、20代、30代と同じようなライフスタイルのままで、体型をキープするのは難しくなるのがその理由だ。だが、そこで気を引き締めて自分を律するか、老いに身を任せるかは人それぞれだろう。

今回取材した木島さんは、その前者を選んだ人である。

「40の大台に乗ったら、急激に体の衰えを自覚しまして。このままじゃヤバイ…と思いつつも、見て見ぬふりを続けてきたのですが、さすがに体重が80kg目前に迫ったときに、ダイエットを決意。ライザップに入会したんです(笑)」

現在のマッチョな肉体からは想像もつかないが、30代は仕事が忙しく体を動かす時間が全く持てなかったのだという。

とはいえ、20代、30代はスノーボードやサーフィンを楽しんでいたと聞けば、運動リテラシーがゼロではないわけで。なぜゆえ、ライザップを選択したのだろうか。

「性格的に短期決戦じゃないとやれないな、と思ったからです。あとはやっぱり、お金をかけた以上、痩せなきゃって思うんじゃないかと(笑)。

ライザップに入ってわかったことは、ダイエットは9割が食事で1割が運動ということ。2か月間、炭水化物は完全に絶ち、野菜もコーン、じゃがいも、トマトなど少しでも糖質が含まれるものは一切口にしませんでした」

30万円を投資した結果、2か月間通って80kgから15kgの減量に見事成功。

だが、その姿を見た周囲の人間に「なんか、小さくなったね」と言われて、ショックを受けるのだった。


無謀にも大会出場を決意。その単純な理由は…?


大会でファイナリストになることを目指し、鍛え始める


80kgから65kgへ。絞るだけ絞って脂肪は削れたが、それが逆に貧相に映ったとを知り、鍛えることを決意したという木島さん。

通い始めたのは、奥渋谷に佇むパーソナルトレーニング専門のジム、SHIBUYA FITNESS SHAREZ。紹介されたのは、“ベストボディジャパン2013”の優勝者でもある岡崎トレーナーだった。



肩甲骨外側の筋肉、広背筋を鍛えるトレーニング。重さは約50kg


「実は鍛えることを決めたときに、自分自身もコンテストに出場することを目標に据えたんです。ライザップ同様、何か目標を決めないとやめちゃいそうだったので、保険をかける意味で(笑)。」

それまで肉体美を競うコンテストといえば、プロのボディビルダーが競うもの、というのが一般的だったが、フィットネスブームにより、細マッチョ部門など一般人が参加できる大会がブームになっていたのも後押ししたのだという。

木島さんが目標にしたのは、“ベストボディジャパン2014”の40代部門で、ファイナリスト15人に選ばれること。大会まではたった1年しかなかったが、岡崎トレーナーの元で、ハードな肉体改造がスタートする。

「最初はトレーニング終わりで、毎回吐いていたくらい辛かったです。ただ、準備期間が1年もなかったので、それくらいやらないと追いつけないと言われて」

トレーナーの岡崎さんが補足する。

「大会に出場する人は、週5回以上トレーニングを積んでいる人がほとんどなんです。正直な話、週2回っていう人はほとんどいない(苦笑)。それでも木島さんが出ると決めた以上は、こちらも真剣にサポートすると決めました」


家族や周りの人、全員でサポートしてくれた

上腕二頭筋や三頭筋など大会では上半身の筋肉が大きく評価されるとか


2013年8月。ライザップで65kgまで絞った体だったが、今度は筋肉を増やすために、食べて食べて12月には82kgまでに増量。そして、そこから脂肪だけを落とし、筋肉量を上げていくトレーニングが始まった。

好きなレストランは『水剌間』や『アウレリオ』、『トラットリア アマルフィターナ』などだが、この期間は外食はもちろん封印。

食事は3食ほぼすべて、「サラダチキン、サラダ、ときどきゆで卵」だという。

「トレーニングの日だけ、パワーを出すためにおにぎり1個を食べますが、それ以外は毎日一緒です。大会1週間前にはさらにカーボオフ、前日は塩サウナと水風呂の交互を5〜6セット繰り返して、体中のありとあらゆる水分を抜いてむくみを極力まで抑えたり。もう本当にツライですよ〜(笑)」



BCAAやプロテインバーは、いろいろ試した結果これがベスト


ちなみに彼は飲食業を含め多角的に事業を展開する経営者。

仕事で常にたくさんの人とコミュニケーションをとっているために、当然、食事のお誘いも多い。だが、バーベキューでも会食でも徹底してストイックな姿勢を貫く木島さんの姿を見て、最初は本気で取り合わなかった人間も徐々に応援してくれるようになったという。

「大会当日のヘアセッティングも衣装を揃えてくれたのも、全部知り合いのヘアメークさんやスタイリストさんでした。仕事仲間もたくさん応援に来てくれて。いろんな人からの愛をひしひしと感じましたね」



大会出場時の木島さん。書類審査を通過し予選通過者55人に選ばれた

大会の結果は?そして筋トレ効果で、若い頃より断然モテる!視線を感じる!


しかし残念ながら結果は予選敗退。ファイナリスト15人には残れなかった。

「それでも子供が手作りの金メダルをかけてくれて、“お父さん、カッコよかった”と言ってくれたときは、号泣しちゃいましたよね。無謀とも言われたけれど、本当に挑戦してよかったと思う」

普通ならこれでようやく通常の生活に戻るのだろう。だが、木島さんは違った。

一般人からしたら到底理解できないそのストイックさ。それを維持するためのモチベーションは一体どこにあるのだろうか。


動機はなんでもいい。大事なのは継続


「そこは男ですからね、単純に“モテたい”っていうことじゃないですか(笑)。20代、30代よりも、今のほうが圧倒的にモテてるのを実感してます。視線もそう。社員旅行で沖縄に行ったとき、子供をプールに連れて行ったときなど、こんなに見られるんだ、ってくらい視線を感じますからね(笑)」

ファッションも昔より変化した。

「僕の人生のほとんどは、シルエットが出ないダボッとルーズな服でした。それがスリムフィットな服を選ぶようになりましたね。本当はLサイズだけど、二の腕をピチッとさせたいからあえてMサイズを選ぶとか(笑)」

肉体が生まれ変わり、ファッションも生まれ変わる。すると驚くほど「40代に見えない」「若いですね」と言われる機会も増えたという。

「単純に嬉しいですよね。あと、体が軽くなった分、姿勢も良くなったし、ずっと悩んでいた腰痛も解消されて健康的になりました。肌もキレイになったと思います。禁煙も出来ましたし。体を鍛える動機は、ぶっちゃけなんでもいいんですよ。大事なのは継続すること」

そう、木島さんの筋肉ライフはまだ続いている。



ジムには週2回、仕事の合間を縫って通っている


「子供に“パパ、またコンテスト出ないの?”って言われたのを機に、また来年出てみようかなと思って。目標は次こそファイナリストです」

そう言ってトレーニングに励む姿は、アスリートそのものだった。

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筋肉で世界を目指す男が登場。