国際大会の初戦は難しい。いきなり躓きたくない、好スタートを切りたい、といったメンタリティに駆られるうえに、対戦相手が格下となれば「絶対に落とせない」とのプレッシャーにも縛られる。

 8月14日に開催されたアジア大会のネパール戦は、そんなゲームだった。テレビで見ていても、ぎこちなさが読み取れた。

 森保一監督が率いるU−21日本代表は、開催地のジャカルタに準備万端で乗り込んだわけではない。チームは12日に千葉県内に集合し、その日の夜にジャカルタ入りした。12日の夜にJ2リーグに出場した神谷優太(愛媛)、ケガによる入れ替えで招集された大南拓磨(磐田)は、試合前日の13日夜にチームに合流した。

 アジア大会はFIFAのカレンダーに含まれた大会ではないため、代表チームに選手の拘束力がない。海外クラブに所属する冨安健洋(シントトロイデン)、伊藤達哉(HSV)、堂安律(フローニンゲン)らは招集できず、国内クラブの選手も1チームから複数人を選ぶことはできなかった。

 U−21日本代表として活動するのも、5月末から6月上旬にかけてのトゥーロン国際トーナメント以来である。さらに言えば、現地でのトレーニングは13日だけで、ネパールとのグループリーグ第1戦に臨んでいる。前半早々のゴールだけに終わった1対0の勝利は、その意味で想定の範囲内と言っていい。

 徹底して守備を固めてくる相手との対戦は、実力差が歴然としていても簡単ではない。16日に対戦するパキスタン戦でも、先制点を奪うまでは激しい抵抗にあうだろう。2点、3点と加点できれば相手のモチベーションも細くなっていくが、そういった試合展開へ持ち込めるかどうか。

 チームはもちろん優勝を目ざして戦っていくわけだが、アジア大会のより現実的な目標はチームの底上げになるはずだ。すなわち、試合を通して個々のレベルアップを促すことである。

 おそらく森保監督は、20人の登録メンバーを漏れなく起用していくに違いない。そうするべきである。同じポジションの選手を競わせることでも、レベルアップを図っていくのだ。

 そうした個々の成長を土台として、チームのパフォーマンスが試合ごとに高まっていくのが理想だ。グループリーグについては、チームとしての完成度はともかく結果が出ればいい。何よりも、選手たちの意欲的なプレーを見たいものである。

 14年のアジア大会に出場した20人のその後を振り返ると、16年のリオ五輪へ辿り着いたのは遠藤航、大島僚太、中島翔哉ら8人だった。予備登録の鈴木武蔵と野津田岳人を加えても10人である(鈴木は久保裕也の招集がかなわなかったため、繰り上げでメンバー入りした)。

 アジア大会から10人が五輪に絡んだとの見方ができる一方で、10人は競争から脱落していったとの視点も成り立つ。いずれにせよ、2年後の東京五輪へ向けて、本格的な競争がここから幕を開ける。

 それもまた、選手たちの意欲を感じ取りたい理由である。与えられた条件がどんなに厳しくとも、いまからこの瞬間から戦えなければ、五輪で戦えるはずはないのだ。