俗語で「犯罪」を意味する「ケイパー(caper)」。「ケイパームービー」とは、一般的にはそれぞれが得意技を持つプロの犯罪者集団を主役に、緻密な計画で難攻不落の大きな獲物を狙う映画のこと。日本で一番なじみ深い“ケイパーもの”といえば、なんと言っても「ルパン三世」だ。

からくりが連鎖していく「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」……いわゆる某番組の“ピタゴラ装置”や凝ったドミノ倒しのような爽快感を味わえることから、非常にファンの多いジャンルのひとつ、ケイパームービー。

今回は数多くあるケイパームービーの中から、一度は観ておきたい10作をピックアップしてみた。

オーシャンズ11』(2001)

ターゲット:地下巨大金庫に集まる1億6,000万ドル以上の大金

“犯罪者チーム”と聞けば、恐らく多くの人が真っ先に思い浮かぶであろう作品が、ダニー・オーシャン率いる10人の犯罪スペシャリストたちの活躍を描いた本作『オーシャンズ11』。1960年公開の『オーシャンと十一人の仲間』のリメイクで、刑務所から仮出所したばかりのオーシャン(ジョージ・クルーニー)が、友人ラスティ(ブラッド・ピット)に連絡を取り、服役中に企てた三大カジノの金が集まるラスベガスの地下巨大金庫の現金強奪計画に乗り出す。

ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、ジュリア・ロバーツ、ドン・チードル、ケイシー・アフレック、アンディ・ガルシア、バーニー・マックなど、錚々たるキャスト陣。キャスティングを聞いただけでもワクワクする、それはゴージャスな大人のエンタテインメント。

『グランド・イリュージョン』(2013)

ターゲット:被害者に支払われなかった保険金

 アトラス、メリット、ヘンリー、ジャックら4人のマジシャンが「フォー・ホースマン」と名乗り、それぞれの得意とするマジックを駆使して大金を強奪する様子を描いた本作。

ラスベガスのショーでパリの銀行から大金を奪うというマジックでその知名度と人気を爆発させたフォー・ホースメンたちは、FBIとインターポールから追われることになる。

主人公である天才マジシャン、アトラスを演じたジェシー・アイゼンバーグは見事なハマり役。マーク・ラファロ、ウディ・ハレルソン、メラニー・ロラン、アイラ・フィッシャー、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマンなどなど、本作も豪華な顔ぶれが並ぶ。なんと言ってもみどころは、プロマジシャンであるデヴィッド・カッパーフィールドがマジック監修を務め、実現可能なマジックをよりドラマチックに楽しむことが出来るという点。この「ドラマチックに」というのは、“映画だからこそ”の醍醐味ということ。マジック好きにはたまらないだろう。

『スニーカーズ』(1992)

ターゲット:スーパー暗号解読機ブラックボックス

それぞれがスネに傷を持つハッカー集団「スニーカーズ」が、暗号解読機をめぐる陰謀に挑むサスペンス。元ハッカー、ビショップが率いるハイテクのプロフェッショナルたちは、警備システムの不備を証明する調査を生業としている。ある日、彼らは自身の過去を盾に、アメリカ国家安全保障局の職員を名乗る人物から違法のハッキングを依頼される。それはやがて国家を揺るがす陰謀へと発展していく。

タイトルの「スニーカーズ」は「忍び寄る・コソコソ歩く(sneak)」といった意味。また「スニーカーを履いた集団=革靴を履くようなホワイトカラー層ではない」といったはみ出し者としての皮肉も含んだ彼らの靴もまた、スニーカー。

ロバート・レッドフォード、シドニー・ポワチエ、ダン・エイクロイド、ベン・キングズレーといった名優たちの共演に加え、23歳でこの世を去ったリヴァー・フェニックスの雄姿が見られる本作。今となっては時代を感じるハッキングシーンを踏まえても有り余る魅力。爽快な後味を残すケイパームービーの秀作。

『10人の泥棒たち』(2012)

ターゲット:幻のダイヤモンド​「太陽の涙」

男女10人の泥棒たちが世界にひとつしかない幻のダイヤモンド「太陽の涙」奪取に挑む、韓国発のサスペンス・アクション。「伝説の泥棒」と呼ばれるマカオ・パク(キム・ユンソク)は、「太陽の涙」と呼ばれるダイヤモンドを巨大カジノから盗み出すという計画を、元相方ポパイ(イ・ジョンジェ)に持ちかける。招集されたクセのあるメンバーたちはそれぞれ野心を胸に秘め、カジノに潜入する。

キャストにはキム・ユンソク、イ・ジョンジェをはじめ、チョン・ジヒョン、キム・ヘス、アンジェリカ・リー、サイモン・ヤムらアジアのスターが勢ぞろい。香港、マカオ、釜山とアジア各都市を股にかけた壮大なロケーションに、スタントなしのアクション、冒頭のシークエンスから観客の心を掴む巧みな脚本は見ごたえ十分。

『ミニミニ大作戦』(2003)

ターゲット:50億円相当の金塊

1969年製作のイギリス版と2003年製作のアメリカ版の2度映画化された本作。天才的な頭脳を持つ窃盗のプロ、チャーリーが、イタリアにある最新型金庫に厳重保管されている50億円相当の金塊を強奪する計画を立て、その道のプロフェッショナルたちを集める物語で、イギリス版ではマイケル・ケイン、アメリカ版ではマーク・ウォールバーグがチャーリー役を務めた。アメリカ版では共演にシャーリーズ・セロン、エドワード・ノートン、セス・グリーン、ジェイソン・ステイサム、ドナルド・サザーランドなどが名を連ねる豪華さ。

街中の狭い空間をミニ・クーパーがちょこまかグングン動き回るカーチェイスは、可愛らしくスタイリッシュ。泥棒たちも魅力的で個性豊かな面々。タイトルに敬遠せずに観てほしい一作。

『黄金を抱いて翔べ』(2012)

ターゲット:銀行の地下にある20億円の金塊

高村薫のデビュー作となった同名サスペンス小説の映画化。時代設定を現代に変更し、監督を井筒和幸が務めた。

犯罪者や過激派相手に調達屋をしてきた幸田(妻夫木聡)は、大学時代からの友人・北川(浅野忠信)から銀行地下にある15億円の金塊強奪計画を持ちかけられる。幸田と北川は、北川の弟・春樹(溝端淳平)と銀行でシステムエンジニアをしている野田(桐谷健太)、自称留学生のスパイ・モモ(チャンミン)、元エレベーター技師の爺ちゃん(西田敏行)を仲間に加え、作戦を決行する。

淡々と進む前半、加速する後半。どこか憎めない男たちの泥臭い強盗劇。

『60セカンズ』(2000)

ターゲット:4日間で“超”高級車50台

窃盗の世界から足を洗っていた超高級車窃盗のプロ、メンフィスの元に現れた昔の仲間アトレー。彼はメンフィスの弟と共にある組織に命を狙われており、メンフィスは彼らを救うため、一定の時間内に超高級車50台を盗む羽目になる。ニコラス・ケイジ、アンジェリーナ・ジョリー、ロバート・デュヴァルらが出演の本作は、1974年製作の『バニシングIN60”』のリメイク。

目を見張るのはアストンマーチン、ベントレー、キャデラック、シボレー、フェラーリ、フォード、ジャガー、ランボルギーニ、ベンツ……“超”がつく高級車の数々。“ドロシー”、“ジーナ”、“バーバラ”など女性名で呼ばれる“彼女たち(車)”が一堂に会するシークエンスは車好きなら見逃せない。スリリングで大胆、どんな車も60秒で盗む伝説の車泥棒の兄弟愛の物語。

『華麗なる賭け』(1968)

ターゲット:刺激とスリル !?

1968年製作のスティーヴ・マックィーン、フェイ・ダナウェイ共演による本作は、1999年にピアース・ブロスナン主演の『トーマス・クラウン・アフェアー』としてリメイク。実業家として成功している大富豪トーマス・クラウンには、才能と情熱を傾ける泥棒としての顔がある。ある日トーマスは5人の部下と共に、かねてより計画していたボストン銀行襲撃を成功させ、260万ドルの大金を手に入れる。ボストン銀行が加入していた保険会社から派遣された調査員ビッキーは、トーマスを怪しいと踏み、彼に接近する。

オープニングから全編を通して個性的な凝った演出が目を引く、スタイリッシュなクライム・ロマンス。一度は耳にしたことがあるだろうミッシェル・ルグランの名曲「風のささやき」をバックに、格好良くて美しい贅沢な103分に痺れる。

『アスファルト・ジャングル』(1950)

ターゲット:100万ドルの宝石

スターリング・ヘイドン主演、ハードボイルドの巨匠ジョン・ヒューストン監督によるフィルム・ノワール。その後の数多くのケイパームービーに影響を与えた元祖的作品。

出所したばかりの男、ドックは賭博業者コビーに宝石強盗の計画を持ちかける。二人は資金提供者となる悪徳弁護士エメリックをはじめ、金庫破りのルイ、運転手のガス、用心棒のディックスを仲間に引き入れ、強奪計画を実行に移す。

悪徳弁護士の愛人にマリリン・モンローが出演しているのも本作のみどころで、モンローは本作で注目されるようになった。無名俳優たちによるドキュメンタリータッチの群像劇。人間臭い彼らの哀愁が胸に沁みる。

『ベイビー・ドライバー』(2017)

ターゲット:アメリカ合衆国郵便局にある未使用の国際郵便切手

幼い時の事故の後遺症による耳鳴りが、音楽を聴く間は消え、驚異のドライビングテクニックを発揮するベイビー(アンセル・エルゴート)。その腕を買われて犯罪者たちの“逃がし屋”として暮らす彼はある日、恋に落ちる。裏社会から手を引こうとするベイビーに対して組織のボスであるドック(ケヴィン・スペイシー)は、彼女デボラ(リリー・ジェームズ)を餌に強盗の協力を強いる。強盗メンバーはドックとベイビーの他に、バディ、ダーリン、バッツ。

まるで歌うようにエンジンを震わせ、踊るようにアクセルを踏むベイビーの姿に痺れる本作。言葉少ないベイビーにとって音楽だけが社会と交わる手段だ。心を掴まれる印象的なオープニングは思いのほか雄弁で、観客もリズムを刻みたくなって思わず身体が疼く。カーアクションと音楽を見事にリンクさせたエドガー・ライト監督による、最高にクールなボーイ・ミーツ・ガール。

今回紹介した作品の他にも『スコア』『インサイド・マン』『ペントハウス』『技術者たち』『ローガン・ラッキー』『ホットロック』『黄金の七人』『トプカピ』に『地下室のメロディー』などなど……まだまだたくさんあるケイパームービー。

計画実行のスリルはもちろん、同時に進行する人間模様も注目したいところ。外出禁止が普通に叫ばれる今年の猛暑。室内でハラハラドキドキを堪能してみては?

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