ハンドル右側に設けられたプロパイロットボタン

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日産自動車のミニバン「セレナ」に初搭載された同一車線自動運転「プロパイロット」。高速道路の巡航時はもちろんのこと、渋滞時においても、前走車との距離を見ながら、車が加減速し、かつ常に車線の中央を走るというこの機能。果たして本当に渋滞で機能するのだろうか。実際に試してみることにした。

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「プロパイロット」は、5段階ある「自動運転」レベルのうち、レベル2「ステアリング操作と加減速の両方が連携して運転をサポート」に該当する。自動運転といえど、現時点では「運転支援」のシステムであり、主に運転をサポートする技術。万一事故を起こした際の責任はドライバー側にあることは言うまでもない。

現在、国産車で自動運転レベル2を搭載するのは、日産の「プロパイロット」のほか、SUBARUの「アイサイトのツーリングアシスト」のみ。日産は2020年の本格的な普及を目指していると言われている。

■ わずか2ボタン操作で使えるプロパイロット

現在、日産自動車のラインアップのうち、プロパイロットを搭載するのは、ミニバン「セレナ」とSUV「エクストレイル」。そして2017年10月に登場した同社電気自動車の2代目「日産リーフ」だ。今回は日産リーフで実験してみた。

実際に利用する前に、プロパイロットの概要と使い方を説明したい。プロパイロットは先行する車両の車間距離を一定に保つ「インテリジェントクルーズコントロール」と車線中央付近を走行するようにステアリングを制御する「ハンドル支援」の2つを組み合わせたもの。荒天時などの利用条件によっては、どちらかの機能が使えない場合がある。

利用方法は「クルーズコントロール」と使い方は同じ。ハンドル右側にある「プロパイロットボタン」を押した後、希望する速度に到達した段階で、その左隣にある「SET-」というボタンを押すだけだ。速度調整はアクセルのほか、「SET+」「SET-」で5km/hきざみで設定可能。車の画面上に横線や前走車のマークが出れば「インテリジェントクルーズコントロール」が機能している。そして、車線マークが緑になると「ハンドル支援」が働いていることになる。

このハンドル支援中、車は自動で車線の中央を走るからといって、ハンドルから手を話してはいけない。あくまでも運転支援であり、離すとハンドル支援機能は解除される。

さて。今回テストに選んだのは、東名高速下り線「大和トンネル」だ。取材日は8月5日(日)の夜8時。渋滞が特に酷い時間帯、普段なら避ける時間に敢えて挑むことにした。

スタート地点は御殿場IC。足柄サービスエリアを過ぎてしばらくすると、曲がりくねった下り坂がスタート。ここでプロパイロットをオンにすると……ハンドルに手を添えるだけで、時速80km/hで車がクルーズするではないか! ハンドルが小刻みに動きながら、ドライバーの意思とは関係なく車が走る不思議な感覚。日産自動車の技術力を信じていないわけではないが、何かあったら……と思ってしまうと、ブレーキペダルを置く右足に力が入る。さらに前走車に近づくと、車速が自動的に落ち、また感覚が開くと車は加速する。

この車間距離は3段階で調整可能。「RES+」「RES-」ボタンの右隣にあるボタンで設定を行う。同一設定でも車速により間隔は異なるようで、一番広いモードにすると、高速道路で巡航中に横から車が入ってきてしまい、その度に車速が落ちる。いっぽう一番近いモードにすると、かなり近づくので何かあった時が怖い。ここは素直に真ん中を選んでおくとよいだろう。

峠の下り区間が終わりかけた秦野中井IC手前で、前走車のブレーキランプが点灯。そしてハザードが点滅し、渋滞が始まったことを知らせる。車速はぐんぐん落ちて時速20km/h程度。プロパイロットは確実に車線の中央を捉え、かつ前走車との距離を一定に保つ。

通常、渋滞時はアクセルを踏んでは離して、ブレーキを踏んでは離して、を繰り替えして、神経と脚をとても使う。しかし、プロパイロット利用中は全く使わない。ドライバーはただ渋滞が終わるのを座って待つだけだ。オススメは車間距離をもっとも短くした設定。これより広い間隔になると、横から車が入ってくるようになる。また無闇に車線変更はしない方が望ましい。というのも車線変更をする度にハンドル支援が解除されて、復旧するのにしばらく時間がかかるからだ。

また、プロパイロット中に強引な車線変更を受けた場合は、ブレーキを踏む必要がある。しかし、これはよほどのことで、滅多に起きることではない。ブレーキを踏むとハンドル支援は解除されてしまうが、時速30km/h以上でしばらく走行すると、ふたたび支援がスタートする。

また、車両が完全に停止した場合は、アクセルまたは「RES+」ボタンを押さない限り、車は前に進まない。

こうして渋滞に巻き込まえること3時間。プロパイロットにより無事に大和トンネルまでたどり着くことができた。その間、ブレーキペダルを踏んだ回数は、わずか2回! いずれも強引な割り込みによるものだ。運転支援に慣れないがゆえの気疲れはあったものの、体力的には比較にならないほど。まだ高速道路のみの利用であるが、これが一般道でも使えたら、どれだけ楽になるだろう。自動運転の未来はすぐそこまでやってきていることを実感した。

併せて電気自動車の静粛性にも驚いた。渋滞中は、アイドリングストップが主流とはいえ、エンジンの微振動が何時間も続き、それが疲れにつながる。しかし電気自動車にはそれがない。プロパイロットと併せて渋滞中の快適な移動は日産リーフを超えるものはないのでは?と心底思った。

お盆や年末年始、そしてGWなどの長期休暇で高速道路を利用する方は多いかと思う。その時に渋滞で疲れてしまっては楽しい休暇も楽しくない。これからの車選びの一つに「運転支援システムの有無」は重要な選択肢になりそうだ。【取材・撮影・文/栗原祥光】(横浜ウォーカー・横浜ウォーカー編集部)