3月に行われた「夜マック」の発表会。こうした時間帯別の施策が功を奏した。左から2番目が下平篤雄副社長(編集部撮影)

「上半期はよい結果を残すことができた。ビジネスは着実に成長を遂げている」。日本マクドナルドホールディングスの下平篤雄副社長はこう言い切った。

日本マクドナルドHDが8月9日に発表した2018年12月期中間(1〜6月)決算は、売上高が1330億円(前年同期比9.7%増)、営業利益が133億円(同41.6%)と大幅な増収増益だった。

2015年の異物混入問題を乗り越え、2016年以降、マクドナルドの業績は着実な回復を遂げてきた。外食で重視される指標である既存店売上高は、2015年12月から32カ月連続で前年同月を超えている。

ツイッターを使った消費者参加型キャンペーン、商品やキャンペーンのネーミングの工夫、他社とのコラボレーションといったマーケティングが効き、客数、客単価ともに伸ばしてきた。2017年には、1店当たりの月商は上場以来最高の水準まで高まった。客数の減少に悩む多くの外食企業を尻目に、文字どおりマクドナルドの”独り勝ち”が続いている。

時間帯別にきめ細かく集客

そのマクドナルドが既存店をさらに伸ばしていくためにテーマとして据えたのが、時間帯別の施策だ。そもそも、マクドナルドはランチの売り上げ構成比が圧倒的に高い。伸びしろが大きいのは朝食や、スナックタイム、夕食といった時間帯だ。

朝食やスナックタイムについては、朝マックの新定番商品「ベーコンエッグマックサンド」の投入やカフェラテやアイスコーヒーの刷新、ワッフルコーンのソフトクリームの発売といった対策を講じてきた。

そして、夕食時間帯の強化策として打ち出したのが2018年3月後半に開始した「夜マック」だ。


夜マックでは100円をプラスすればパティが倍になる(編集部撮影)

夜マックは毎日17時以降、定番バーガーに100円をプラスすることでパティが倍になるサービス。下平副社長は3月の発表会で「ディナーのニーズがあることはわかっていたが、この時間帯には残念ながら今まで特化して取り組むことができなかった。ディナーにはボリューム感のあるハンバーガーが比較的人気が高く、しっかりとした食べ応えのあるものがほしいというお客様が多くいる」と導入のねらいを説明していた。

このサービスは2017年6月から東海3県(愛知県、三重県、岐阜県)限定で先行して展開したところ、会社の想定を大きく上回る売上高、客数の伸びをみせた。ネット上でも話題となり、全国展開を望む声が多かったため、今年3月に本格導入に踏み切った。

マクドナルドは詳細な数字を明らかにしていないが、「朝、ランチ、スナック、夜のすべての時間帯で売上高、客数が伸びているが、夜の時間帯の成績が他の時間帯よりもよいことが確認できている」(日本マクドナルド)。若年層や家族客だけでなく、女性の購入者も少なくないという。

8月からは夜マック第2弾として「ポテナゲ」の全国展開が始まった。毎日17時以降はポテトとナゲットのセットが最大33%引きになるというものだ。バーガーとは異なり、ポテナゲは家族やグループでシェアすることも想定される。

効果的なキャンペーンを打ち続けられるか

夜マックなどの施策が奏功し、業績好調のマクドナルド。ただこの流れを維持することは簡単ではない。7月には客数が2015年12月以来のマイナスとなった。これは前年にauの三太郎の日キャンペーンでダブルチーズバーガーを無料で提供した反動が大きいが、「お客様の期待はますます高くなっている」(下平副社長)中で、超えるべきハードルは上がっている。


ここ数年の好調は店舗改装の効果も大きい。ただ、今後も集客力を維持するには、効果的なキャンペーンを打ち続ける必要がある。今年6月には、2015年10月の入社以来、同社のマーケティング改革を主導してきた足立光・マーケティング本部長が退社。今後は残された同本部のメンバーが施策を立案していくことになる。

7月には昨夏の期間限定商品「東京ローストビーフバーガー」の広告表示に問題があったとして消費者庁から措置命令を受けた。8月に入ってからは、石川県金沢市の店でソーセージエッグマフィンを食べた客が、商品に白いものが混入していると訴えたことも明らかになった。混入物や混入経路などは調査中だ。こうした問題が続けば、客に与えるイメージ低下につながりかねない。


今夏は「ご当地グルメバーガー」のキャンペーンを実施する(記者撮影)

通期(1〜12月)の業績は、期初の想定より改装店舗数を増やすこともあり、売上高2690億円(前期比6.1%増)、営業利益218億円(同15.3%増)の従来予想を据え置いた。下期も全店売上高(直営とFCを合わせた売上高)は、前年同期比3〜4%の成長を見込んでいる。

新規出店については、期初の想定の35〜40店から22店に見直されたが、「2018〜2020年の3年間で100店を出店するという計画に変わりはない」(下平副社長)。ビジネスが再び拡大基調にある中、キャンペーンやサービスの質を保ち続けられるか。真の実力が問われることになる。