私たちはこれまでに散々、LINEやデートのHow toを学んできた。

しかし、やっとの思いでLINEやデートに漕ぎ着けても、失敗の可能性は常につきまとうのだ。

あんなに盛り上がったはずなのに、突然の既読スルーに予期せぬ別れ。 恋人同士になれたかと思ったのに、いつまでたっても一進一退を繰り返す関係性。そんな経験、無いだろうか?

男女の関係を次に繋げる方法を学ぶため、あなたに宿題を出していこう。

さて、今週の宿題は?




香里奈と出会ったのは、 経営者の先輩が軽井沢の別荘で開いてくれたBBQだった。

「直人、香里奈に会ったことあった?」

主催者であるリョウジさんに紹介された香里奈を、僕は思わず凝視してしまう。

サラサラとなびくロングヘアーに、細い手足。顔は拳くらいの大きさしかないのではないかと思うほど小さく、黒目がちで大きな瞳は何故かウルウルしている(ように見えた)。

「直人さん...はじめまして、ですよね?」

香里奈が笑うと、そこだけ後光が差すように眩しく光る。

今まで何人も女性を見てきたが、香里奈は群を抜いていた。美人でスタイルも良くて性格も良さそう。周囲にいる男性も、香里奈の前ではデレッとなっている。

「は、はじめまして!直人です、宜しく」

そう言いながら、僕は胸の高鳴りを抑えきれない。完全に僕の一目惚れだった。


モテる女を落としたい。高嶺の花に響く男のアプローチ方法とは


宿題1:モテる女は、ガツガツした男が苦手かどうか答えよ


おしゃれな別荘に、楽しいBBQ。とても楽しい会なのだが、僕の心は香里奈のことで一杯だった。

別荘の持ち主である先輩のリョウジさんは、業界内でもかなりの有名人。彼と繋がっているということは、周囲も大物だらけということを意味する。

香里奈もそんな大物の男性ばかりに囲まれている女性かと思うと、怖気付く。自分はまだまだ小物だと自覚しているから。

だが考えれば考えるほど、“相手にされないかもしれない”とか、“ウザがられたらどうしよう”などマイナスなことを考え始め、負のスパイラルに陥ってきた。

モテる女性は、口説かれ慣れている。それに、寄ってくる男性もたくさんいるだろう。

しかし、ここで怯んでいては何も始まらない。恋は、動かない限り何も生まれないからだ。

僕は悩んだ結果、ガツガツはしないけれど、徐々に距離を縮めて香里奈と仲良くなろうと考えたのだった。




「直人さんは、何をされている方なんですか?」

ちょっと距離を置いて香里奈を見ていると、向こうの方から話しかけに来てくれた。こういった気遣いができるのも、モテる女の特徴だろう。

「僕は今、人材系の会社を経営しているよ。香里奈ちゃんは、リョウジさんの友達なの?」

「リョウジさんとはもともと知り合いだったんですが、今日呼んでくれたのは私の女友達なんです。加奈って分かりますか?」

そう言って、香里奈は友人の加奈を僕に紹介してくれた。

「初めまして、加奈です」

加奈も可愛いことは可愛いが、香里奈には敵わない。けれども香里奈に直接言うのも気が引けて、遠回しに加奈から褒める。

「加奈ちゃん、よろしくね。今日は可愛い女の子に会えて、本当にツイてるなあ」

「え〜いつも男性陣はみんな香里奈ばかり褒めるのに!直人さんっていい人ですね」

香里奈の方は、すでに出会う男性全員から“可愛い・綺麗だ”と賞賛されていることは明白だった。

やはりライバルは多そうだ。

その一方で、加奈が心底嬉しそうにしていたのを見て、僕もちょっと嬉しくなる。そして肝心の香里奈の方を見ると、笑いながらもちょっと複雑そうな顔をしていた。

「二人とも、何か飲みたい物はある?」

ドリンクを受け取りに行く間、香里奈の熱視線を背中に感じる。そして戻ってくると、香里奈の方から積極的に話しかけて来たのだ。

「直人さんは、今付き合ってる方とかいらっしゃるんですか?」

この質問は、気になる異性にしかしない質問である。かなり脈アリになってきた。

「もし彼女がいないなら、今度みんなで食事でもしませんか?」

加奈の素晴らしい提案により、僕たちは食事会をすることになった。

しかしその会で、僕は香里奈と距離を縮められたつもりだったのに、そのあと何故か彼女は離れていってしまったのだ。


直人が食事会で決行した作戦の決定的なミスとは


宿題2:他の人が連れて行かぬような店へ連れていく。これは正解?


香里奈との食事会の店を選ぶ時、僕は頭を抱えてしまった。

良い店は誰かに散々連れて行ってもらっているだろう。それに、舌も肥えていそうだし、店も詳しいに違いない。

下手な高級店で勝負するよりも、彼女が普段行かないような店へ連れて行った方が、新鮮味がある。良い意味で期待を裏切ることもできる。

結局、高嶺の花である香里奈を、他の人が連れて行かないような西麻布のカジュアルな焼肉店にお誘いした。

「こんな所にこんなお店があったんですね!初めて来ました♡」

店に着くなり、好奇心たっぷりの顔で店をキョロキョロと見回す香里奈を見て、まずは第一関門クリアだったと悟る。

「他の人だと、こういうお店連れて来ないでしょ?でも意外に香里奈ちゃんって素朴な所があるから、好きかなと思って」

他の人と違うことをする方が、向こうの印象もいいし、インパクトを残しやすい。香里奈から見て、“口説いてくる男のその他大勢”のうちの一人にはなりたくなかったのだ。

「直人さんって、人を見る目があるんですね♡」

ニコッと微笑む香里奈に、僕はもう成功しか確信していなかった。




「私、普段お肉焼いてもらうことが多くて。焼き方下手かもしれませんが大丈夫ですか…?」

焼肉のトングを持って戸惑う香里奈が可愛くて、僕は笑顔でこう答える。

「香里奈ちゃんってさ、焼肉焼いたことなさそうだよね!かわいいから、男がみんなやってくれそう!」

しかし咄嗟に、“普段チヤホヤされている人は、特別扱いしない人が好き”とどこかで聞いたセリフがふと頭をよぎる。

きっと男ならば、香里奈の前で皆ひれ伏すだろう。焼肉だって率先して焼くし、荷物だって持ってあげたくなる。ドアだって開ける。

だからこそ敢えてここは、もてはやさない方がいいのだろうか?

焼肉を焼く香里奈を見て、加奈が隣で笑顔を浮かべている。香里奈も笑いながら、恥ずかしそうに小さく頷く。

「バレました?私すごく自己中なんですよね〜」

僕は香里奈の発言を聞きながら、追わせるために、振り向いてもらうためにはどうすれば良いのか、必死で頭をフル回転させていた。

追われ慣れているSクラス美女は、自ら男性を追うことはあるのだろうか。

「香里奈ちゃんって、好きな人ができたら追いかけることとかあるの?」

「ん〜どうでしょう。人によるかなぁ。追いたくなるような男性がいたら、私だって自らいきますよ♡直人さんは、追いかけてきてくれる女子が好きなんですか?自分からは、追いかけない派なんですか?」

そう言うと、また潤んだ瞳ととびっきりの笑顔を向けて、僕の皿に焼けた肉をのせてくれる香里奈。

これは遠回しに、僕のことを追いかけてきてくれるというサインなのだろうか。

美女に焼いてもらった肉は、格段に美味しかった。



食事会は楽しく終わり、僕たちは解散した。

しかし僕が連絡しない限り、永遠に香里奈からの連絡は来ない。デートの誘いなんて、もちろん来ない。

-焼肉も盛り上がったし、他の人がしないようなアプローチもしたのにどうして!?

これも香里奈の作戦なのか。それとも僕がしびれを切らして連絡するのを待っているのか?

一体どうすれば良いのか分からず、僕はまだ香里奈に近づけずにいる。

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どうすれば良かったの?高嶺の花を落とす本当の方法