●有翼機を日本の技術で開発、打ち上げを目指す

 日本の宇宙ベンチャー、スペースウォーカー(SPACE WALKER)は8月1日、2027年に日本初の有人宇宙飛行の実現を目指すと発表した。

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 機体は米国のスペースシャトルと同じスペースプレーンだ。まずは長さ9.5メートル、重さ6.3トンの試験機(サブオービタルプレーン)を2021年までに開発し、科学実験をする。サブオービタルとは弾道飛行のことで、打ち上げから弧を描いて地上に戻ってくる。宇宙軌道に乗らないため、准軌道飛行ともいわれている。

 その後2023年には少し大型のサブオービタルプレーンを使って衛星を軌道に放出する実験などを行い、2027年には有人宇宙飛行を実現するという。その際のスペースプレーンは長さ15.9メートル、重さ18.7トン、乗員2名で乗客は6名の予定だ。

●有翼機は安全性が高いが、開発には難しい問題が

 スペースプレーンの開発を目指す理由は、有翼式だと飛行体制で着陸できるため、垂直着陸するミサイル型ロケットより安全性が高いこと。加えて、航空機と同様に何回でも再使用できるため、打ち上げコストを従来より9割以上削減できることだという。

 スペースプレーンはドイツで1930年代から研究がはじまり、以降世界各国で研究開発されている。しかし、米国のスペースシャトルの135回(2回の死亡事故)や、ロシアのプランが飛行した以外、技術的な問題などでほとんどが開発中止に追い込まれている。唯一現役なのが米国のNASA(アメリカ航空宇宙局)が開発した無人のスペースプレーン、X-37。2010年の初飛行以来、2017年に5回目の打ち上げが成功している。

●強力な宇宙企業と提携し、HOPE開発に携わった技術者が集結

 日本でも有翼機の研究開発は、1980年代のHIMESや1995年からのHOPEがあるが、いずれもプロジェクトは途中で中止されている。HIMESは、1982年に旧文部省宇宙科学研究所(ISAS)が始めた有翼機計画で1988年に中止された。HOPEは旧宇宙開発事業団(NASDA)と旧航空宇宙家技術研究所(NAL)が研究開発していた宇宙無人機で1998年に中止されている。ISAS、NASDA、NALは2003年に統合されJAXAとなっている。

 スペースウォーカーにはHOPEに携わった2人、九州大学の米本浩一教授と三菱重工の淺田正一郎氏が集結した。同社はIHI、IHIエアロスペース、川崎重工、九州工業大学、JAXAと技術提携し2027年の宇宙旅行を目指している。

 現在スペースプレーンは米国、イギリスのほかインド、中国も開発中だ。日本では同じくベンチャーのPDエアロスペース社が2023年末までの運用開始を目指しているが計画は遅延している。