今から73年前、1945年の8月6日に広島、3日後の8月9日には長崎に原子爆弾が落とされました。その6日後、8月15日に日本天皇からポツダム宣言(日本軍の無条件降伏の要求)の受諾と日本の降伏が国民に公表され、事実上日本の第二次世界大戦は終わりました。

私が幼い頃には、8月になると必ず戦時中の暮らしや、日本が敗戦したという内容のラジオ放送について、祖母から話を聞いた記憶があります。

終戦から70年以上経ち、第二次世界大戦を実際に体験した人々が少なくなる中で、日本のみならず、世界には戦争の恐ろしさや悲惨さを全く知らない人が増えているのではないでしょうか。

いくら年月が経とうとも、私たちは戦争の恐ろしさを絶対に忘れてはいけない。

そこで今回は、太平洋戦争を描いた映画作品をご紹介します。

天皇や内閣、指揮官たちの判断や葛藤を描いた作品

トラ・トラ・トラ!』(1970)

1941年12月の大日本帝国海軍による真珠湾攻撃を描いており、日米双方の動きをより忠実に描くべく、日米合同で製作された作品です。

どのような経緯で太平洋戦争開戦に至ったのか。日本とアメリカ、それぞれの国の指導者たちが、どのような状態で開戦を決断せざるをえなかったかが分かりやすく描かれています。

『日本のいちばん長い日』(1967/2015)

昭和天皇や内閣の官僚たちが、御前会議で日本の降伏を決定するまでの経緯が描かれた作品で、1967年製作版では8月14日正午に起こった宮城事件から、ラジオの玉音放送を通じて国民にポツダム宣言の受諾を知らせた15日正午までの24時間、2015年版ではその数日前からを描いています。

1967年版と2015年版では時代柄、昭和天皇の描き方にも大きな違いがあるので、併せて観ても興味深い作品です。

『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』(2011)

第二次世界大戦の開戦時に聯合国艦隊の司令長官であり、真珠湾攻撃やミッドウェイ海戦を指揮した山本五十六を描いた作品です。

彼を描いた戦争映画作品は多々ありますが、その中ではいちばん近年に製作された作品で、敗戦を予感しながらも開戦を指示しなければならなかった葛藤や、司令官としての苦悩が伝わってきます。

戦線で戦った人々を描いた作品

『男たちの大和/YAMATO』(2005)

辺見じゅん著「決定版 男たちの大和」を原作に作られた作品。

太平洋戦争末期、連合国軍の沖縄諸島への進行を阻止する目的で実施された菊水作戦。戦艦大和の若き乗組員たちがレイテ沖海戦後、沖縄での特攻戦に向かう途中でアメリカ軍に撃沈される様子と、生き残った兵士や命を落とした兵士の遺族たちの姿、それぞれの心の葛藤が描かれています。

『俺は、君のためにこそ死ににいく』(2007)

太平洋戦争末期、鹿児島の知覧飛行場から特攻隊として飛び立っていった10代の青年達。そして彼らを第二の母として支え、見送り続けた鳥濱トメや娘たちの姿が描かれた作品です。

お国のために愛する人を残して飛び立つ若き特攻隊員と、それを名誉だと思って見送る人々。敗戦間際に特攻という策を選んだ国の決定に、どうすることも出来なかった人々の悲しみ、怒り、やるせなさが描かれています。

『永遠の0』(2013)

百田尚樹による小説を原作にした映画作品。零戦のパイロットとして特攻死した祖父・宮部久蔵の存在を知った姉弟が、天才的な操縦技術を持ちながらも、“海軍一の臆病者”と言われた祖父の真の姿を知っていく物語です。

死ぬのが怖いと口にすれば、腰抜けや臆病者と揶揄され、国のために死ぬことが喜びだとされていた時代。そんな中生きることにこだわった1人の男性、そしてその仲間の姿を描き出しています。

他国(当時の日本の領土)の戦線で戦った人々を描いた作品

『戦場のメリークリスマス』(1983)

日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドによる合作で、ローレンス・ヴァン・デル・ポストの「影の獄にて」に収録された「影さす牢格子」と「種子と蒔くもの」の2作品に基づいて製作されました。

1942年のインドネシア、ジャワ島での日本軍俘虜収容所での作者の体験が描かれています。戦闘シーンは一切ありませんが、当時の日本軍兵士の敵国鯆虜への扱いや、各国の歴史的な闇をしっかりと描き出しています。

北野武、坂本龍一、デヴィット・ボウイが出演しており、登場人物が全員男性という点も珍しい作品です。

『ビルマの竪琴』(1985)

本作は竹山道雄が執筆した児童向け文学を基に、1956年に製作された『ビルマの竪琴 第一部』『ビルマの竪琴 第二部』(現在は2部作を併せた『ビルマの竪琴 総集編』となっている)を基に描かれた作品で、1945年、終戦直前のビルマ(現在のミャンマー)戦線が舞台となっています。

中立国のタイを目指して撤退することが決まった日本軍、しかし戦線で命を落とした大勢の日本兵を残して帰国することに絶えられず、彼らを供養するため僧となった日本兵・水島の姿が描かれます。

『野火』(1959/2014)

大岡昇平のフィリピンでの戦争体験を基に書かれた小説を原作にした映画作品で、1959年製作版と2014年製作版があります。

太平洋戦争末期、レイテ島を舞台にフィリピン戦線の部隊から排除された主人公・田村一等兵が熱帯の森の中で狂人と化していく様を描いた作品です。劣悪な環境下で殺し合う人間の心理変化の描写が生々しく、目を覆いたくなるシーンが続きますが、観賞後はずっと心に刻み込まなければいけないという気持ちになることでしょう。

太平洋戦争を描いたアメリカ作品

『シン・レッド・ライン』(1998)

ジェームズ・ジョーンズの同名小説を、テレンス・マリックが脚色、監督した作品。

太平洋戦争におけるガダルカナル島での戦いをアメリカ人兵士の視点から描いています。

他の戦争映画とはひと味違い、人々が殺し合う戦場の島の大自然が映し出され、生と死について観る者に問いかけるような哲学的な作品となっています。

『父親たちの星条旗』(2006)

第二次世界大戦における硫黄島の戦いを日米双方の視点から描いた「硫黄島プロジェクト」の第一弾、アメリカ側視点の作品です。監督はクリント・イーストウッド。

1945年、海軍の衛生兵として硫黄島に上陸し、日本軍に勝利したジョン・“ドク”・ブラッドリーは硫黄島の丘にアメリカ国旗をたてた写真から英雄として称えられます。しかし戦線での出来事、国民たちとの認識のギャップに死ぬまで苦しみ続けた彼が、戦地で体験した悲惨な戦闘の様子が明かされていく作品です。

『硫黄島からの手紙』(2006)

第二次世界大戦における硫黄島の戦いを日米双方の視点から描いた「硫黄島プロジェクト」の第二弾、日本側視点の作品です。『父親たちの星条旗』同様、クリント・イーストウッドが監督を務めています。

1944年に本土防衛最後の砦として硫黄島に降り立った渡辺謙演じる栗林忠道陸軍中尉と日本兵たち。圧倒的に不利な戦況、絶望の中で、家族の元に生きて帰りたいと願いながら死闘を繰り広げた兵士たち。届けられることのなかった家族への膨大な手紙。そこに込められた兵士一人ひとりの姿と、戦線の壮絶な戦いを描いた作品です。

『ハクソーリッジ』(2016)

太平洋戦争での沖縄戦をアメリカの視点から描いた作品。

沖縄戦において日米両軍の激戦地となった、北側が急峻な崖地となっている「前田高地」(米軍はHacksaw=弓鋸からハクソー・リッジと呼んでいた)での戦いが描かれています。

アメリカで「良心的兵役拒否者」として初めて名誉勲章が与えられた実在の人物であり、銃を持たずに戦場に赴いた1人の衛生兵の視点で描かれる沖縄戦は、これまで描かれてきた沖縄本土戦とは違う角度から戦争の恐ろしさ、悲惨さを体感できる作品です。

今回ご紹介した作品の舞台をざっくりとですがまとめてみました!

現在も世界では内戦やテロなどが頻発しています。

戦争を描いた映画作品を鑑賞することで、戦時中を生きた人々の苦しみや悲しみを知ることができます。そして、その経験は、私たちに出来る「これ以上悲惨な出来事を繰り返さない努力やその方法」を考えるきっかけをくれることでしょう。

【あわせて読みたい】
※ あなたが『この世界の片隅に』を観なくてはいけない5つの理由
※ 戦争下に生きる人々の生活をのぞく映画3本
※ え、これ実話なの?フィクションよりも興味深い「事実を元にした映画」10選