台湾で急増するクレーンゲーム店

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(台北 1日 中央社)台湾で近年、クレーンゲーム店が急増している。財政部(財務省)によると、店舗数は2年で2.7倍に膨れ上がった。だが、店舗の乱立に伴い、規定違反の景品の導入や治安への影響などの問題が浮上し、地域発展への悪影響を懸念する声も上がっている。

▽クレーンゲーム店、2年で急増 背景に参入しやすさ

財政部の統計によると、台湾全土におけるクレーンゲーム店舗数は2000年末の1261軒から2016年には2356軒に増加。2017年には4181軒に激増し、今年5月末までには6409軒に達した。今年1〜5月までにクレーンゲーム店から徴収した娯楽税は約8688万台湾元(約3億1800万円)に上り、昨年1年間の税収(8590万元、約3億1400万円)を上回った。

クレーンゲーム店の増加の背景には「参入のハードルの低さがある」と中部・台中でクレーンゲーム店2店舗を経営する人気ユーチューバーの含羞草さんは指摘する。現在は、店主がゲーム機を別の人に貸し出し、店主はリース料、ゲーム機借り主は投入された代金により収入を得るというビジネスモデルが普及。そのため、わずかな資金でも参入可能なのだという。

もう一つの理由には経営のしやすさがある。流行の最先端として知られる台北市の「東区」と呼ばれるエリアでも最近、衣料品店の撤退が相次ぎ、クレーンゲーム店が勢力を拡大させている。東区周辺の商店経営者は、クレーンゲーム店の店主はゲーム機を貸し出しさえすれば、経営の問題はゲーム機借り主に任せればいいため、経営は楽だと話す。周辺の店舗では比較的高額の商品が販売される一方、小銭で楽しめるクレーンゲームは競争力が高く、客が寄り付きやすいという。

▽景品の奇抜化、治安への影響が問題に

店舗急増によって、問題も出ている。差別化を図るため、景品の多様化が進み、従来のぬいぐるみや高価なデジタル製品だけでなく、ロブスターや高級ガニなどの生きた動物、アダルト用品などの景品も登場するようになった。クレーンゲーム機の景品には金額や内容に関する決まりがあるが、景品の内容によって違反を処分する機関が異なるという複雑さもある。

治安の問題も懸念されている。不動産大手、台湾房屋の担当者は、無人のクレーンゲーム店の多くは二等地に設置されており、二等地の無人店は治安面での死角になると心配されることが多いと語る。

街の発展における悪影響を指摘するのはシンクタンク、商業発展研究院商業発展・政策研究所の黄兆仁所長。これまでファッションの街として栄えていた東区から衣料品店が減り、クレーンゲーム店が増えていることについて、「消費者の買い物の選択肢が減れば客離れが進み、閉店の波が加速するという悪循環が生まれるだろう」と危機感を示した。

▽行政が管理強化へ

クレーンゲーム店をめぐる問題が浮上しているのを受け、行政が管理を強化する動きも出ている。

台北市の衛生局と商業処は今年5月から7月にかけて、景品として食品や化粧品を陳列するクレーンゲーム機を対象に検査を実施。242台中21台に違反が見つかった。違反したゲーム機の責任者には書面で改善を求め、改善されなかった場合には3万元(約11万円)以上、300万元(約1100万円)以下の過料を科すとしている。

生きたロブスターなどを景品にしているクレーンゲーム機が見つかった基隆市は、業者に対して生きた動物をゲーム機に入れないようマナー啓発をしていくとし、将来的に設置申請時の審査を厳格化する方針を明らかにした。

(邱勝柏、蘇龍麒、朱則イ、廖禹揚、梁珮綺、王朝ギョク/編集:名切千絵)