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伝説の「文学フリマ」を名古屋市でも開催

伝説の「文学フリマ」を名古屋市でも開催
世代を超えて交流する「文学フリマ」。11月20日、秋葉原・中小企業振興会館にて。(撮影:伊藤昭一)
【PJ 2005年11月27日】− 大手出版社の本格装丁本から、ワープロコピーをホッチキス留めした小冊子まで、作家のプロもアマチュアも同じフリーマーケットで自作品を売る第4回「文学フリマ」(主催・文学フリマ事務局=望月倫彦代表)が20日、東京・秋葉原の中小企業振興会館で開催された。今年は若者向けライトノベルの人気作家、桜庭一樹氏と桜坂洋氏が出店、コラボレーション作品「桜色ハミングディスタンス」を販売するというので、開場時間前から入り口には行列が出来た。開場と同時にファンがどやどやと2Fブースめがけてなだれ込む。

 ほかのフリーマーケット参加者には、「やっぱり人気あるね」と感心するグループと「なんだい? あの連中は」と首を傾げる人、「なんだか分からんけど、人気者なのだろうから、負けずに並んでみようか」という向きまでさまざまである。しかし、そんな思惑をよそに、お目当ての本は僅か1時間で売り切れてしまったという。

 会場には出店関係者300名、つめかけた一般入場者1000人(事務局推定)の熱気がたちこめた。窓外の神田川を背に、アニメ絵の表紙のティーン系ノベル“萌え派”から、出版社系でフリマ限定の戦争文学評論、プロの作家や定年を過ぎた文学老年まで、世代の断絶を超えて軒を並べる異色のフリーマーケットになっている。

 もともと、この「文学フリマ」は02年に、評論家でマンガ原作者の大塚英志氏が文芸雑誌「群像」に「不良債権としての文学」という評論を発表したことから始まった。そこで、売れない日本の純文学は、文芸雑誌を不採算にし、赤字を垂れ流しているという現状を指摘。自らの手でマーケットを開催し、自助努力をしようではないかと提言したのである。

 雑誌「早稲田文学」の編集者、市川真人氏や文芸評論家の福田和也氏たちの支持も受けて参加者を募った。その間、純文学作家である笙野頼子氏が、大塚氏の言動に猛反発し、芸術を理解できないマンガストーリーテラーが何を言うか、といわんばかりの激論バトルを繰り広げるなどの副作用も起きた。両者の論点は、交差することなく平行線のまま現在に至っている。

 そのなかで、大塚氏の提唱に共鳴する出版社や文芸サークルが続々参加を表明、なぜか笙野頼子ファンも大塚英志ファンも入り混じって、その年の11月3日、東京・渋谷の表参道の青山ブックセンターで「第1回文学フリマ」が開催されたのである。800名以上の入場者が集い盛況であった。なかでも話題になったのが佐藤友哉+西尾維新+大田克文(イラスト・舞城王太郎+表紙絵・笹井一個)の「タンデムローターの方法論」というクリップ止めコピー同人誌で、ブースには行列が出来た。

 舞城王太郎氏は「文学フリマ」の現場に参加しなかったが、その後の純文学で文壇に躍り出て03年に「阿修羅ガール」で第16回三島由紀夫賞を受賞。覆面作家として授賞式に出なかったことが話題になった。04年には「好き好き大好き超愛してる」で芥川賞候補になるなどステイタスをアップしている。佐藤友哉・西尾維新の両氏も作家として活躍し、大田克文氏は新書版文芸雑誌「ファウスト」を創刊し、文学界に新風を吹き起こした。

 こうした現象は早くも巷間で「文学フリマ伝説」となっているのである。わずか3年で伝説になるというのは、最短の伝説発生成記録ではないだろうか。その時、100部しか販売されなかった同人誌「タンデムローター方法論」は、ほとんど入手不可能で、復刊を希望する声も増えているという。

 そこで、ボランティアで主催者となった大塚英志氏は、当初から「開催は1回だけのトライアル」と言明していたように、活動の第一線から退いた。その後は参加者のなかの有志がボランティア組織「文学フリマ事務局」を設立、第2回以降の運営を引き継いだのである。

 昨年の第3回には、会場の青山ブックセンターの閉鎖というアクシデントに遭遇し、継続が危ぶまれた。しかし、ボランティア事務局の努力と熱意で、秋葉原の中小企業振興会館に舞台を移し難局を乗り切った。さらに第4回「文学フリマ」も、これまで以上の成功を収めた。冒頭に述べた人気ライトノベル作家の「blackcherry bob」のブースは、余りにも行列が長くなったため、その位置を変更。さらにメフィスト賞作家・浅暮三文氏、作家で法大教授の中沢けい氏のブースなど、それぞれのファンが押しかけ賑わった。

 そして来年2月26日に、東京の「文学フリマ」の開催ノウハウをそっくり受け継ぎ「文学フリマin 名古屋」(遠山裕樹・実行委員会代表)が名古屋市の後援を受けて開催されることが決まった。東京から発信した「文学フリマ」が今後、どれだけ広域化し、どんな伝説を生むのか? 文芸愛好家のみならず、意外性のあるベストセラーを狙う大手出版社も関心を高めていくことであろう。【了】

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 伊藤 昭一【 東京都 】
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