宿題を業者に頼るのはアリ? ナシ?

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 自由研究は1万5000円、作文は原稿用紙1枚5000円。これらは、夏休みの宿題を代わりにやってくれる「宿題代行サービス」のおおよその価格です。毎年、夏休みシーズンを迎えると話題になる宿題代行は、学校よりも塾の勉強を優先させたい親子に需要があるほか、たくさんの宿題を前に「途方に暮れてしまった親子」の利用も少なくないようです。

 宿題代行サービスの利用は、親と子どもにどのような影響を与えうるのでしょうか。20年間学習塾を経営し、著書に「1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ」(日本実業出版社)などがある、子育て本著者・講演家の立石美津子さんが解説します。

なぜ宿題代行を利用するのか

 子どもたちにとって、待ちに待った夏休み。一方で、宿題の進み具合にやきもきする親も多いのではないでしょうか。

 そんな親の悩みにつけ込むように登場したのが「宿題代行業」です。これは、お金で宿題を片付けてもらうサービスのこと。算数、国語のプリントだけでなく、絵日記や自由研究を代行する業者もいます。夏休みに利用する人が多いですが、中には、次回の冬休みの予約をあらかじめしておく“常連親子”もいるというから驚きです。

 そもそも宿題は、学校で学んだことを定着させるためのものです。子どもは自立のために必要な学力や知識を学校で学び、身に付けます。夏休みで40日近く学校生活から遠ざかると、夏休みが明ける頃には1学期中に習った内容の記憶が薄れてしまいます。そのことを自覚し、自主的に勉強をする子どもはあまりいないので、夏休みの宿題が出るのです。自宅で宿題に取り組むことは、子どもが自分自身の未来を切り開くための学力を養うことにつながります。

「宿題代行」は、こうした本来の意味から考えると本末転倒なサービスであるのに人気を集め、利用する人が後を絶ちません。その背景には、以下のような事情があります。

【塾からも大量の宿題が出る】

夏休み中は塾の夏期講習に通う子どもが増えます。宿題は塾からも出ることが多く、学校の宿題と合わせると子どもにとっては相当な量です。学力向上につながるとはいえ、結果的には膨大な量の宿題が子どもを追い詰めます。そこで、宿題をこなせず苦しむ我が子を見かねた親が、宿題代行で解決しようとするケースが見られるのです。また、受験勉強のために、「学校の勉強どころではない」「自由研究や作文をやっている場合ではない」と、代行業で解決を図る親子もいます。

【遊びを優先してしまう】

夏休みは友人との遊びや家族旅行など、子どもにとって楽しいイベントがたくさんあります。中には遊びの予定を優先した結果、始業式までに宿題を終わらせることができない子どももいるでしょう。このような時、「先生に叱られたらかわいそうだから」「楽をするために」と考え、宿題代行サービスに依頼する親がいます。

【親自身にとっても負担】

宿題代行サービス人気の背景には、実際に宿題をやるわけではない親側も「宿題=嫌なもの」と認識していることが大きく関わっています。これには、学校から「家の人が宿題を見てあげてください」と指示されたり、「宿題をさせないのは親の責任」と考える風潮があったりすることも影響しているでしょう。日々家事や仕事に追われる親にとって、子どもの勉強を見るのは時間的にも肉体的にもハードです。

代行利用の最も懸念すべき点とは?

 宿題代行のデメリットは、子ども本人が“人をだます”経験をしてしまうことです。

 宿題代行サービスは「大人が代わりに宿題をやった」ことを察知されないように、依頼主の子どもの筆跡にできるだけ近づけたり、あえて誤答を混ぜたりするなど「先生をだますためのあらゆる工夫」を凝らしています。

 しかし、代わりにやってもらった宿題について、子どもは「自分がやったものではない」意識を確実に持っています。新学期になり、自分でやっていない夏休みの宿題を提出する時、どんなに平然とした顔を繕っていたとしても、きっと心臓はバクバクしているでしょう。

 そして、先生が気付かずにそのまま宿題を受け取ったら、「うまくだませた」「バレなければいい」と思うようになります。こうした経験を幼い我が子にさせてよいのでしょうか。

 たとえ、先生をだますことができても、子どもの心をだますことはできません。宿題代行を利用している、または、利用しようとしている親には、始業式の日に学校へ宿題を提出する子どもがどのような気持ちでいるかを想像してほしいと思います。

子どもの計画性と責任感を養う機会

 では、夏休みの宿題にはどのように向き合い、取り組むべきなのでしょうか。

 結局のところは、計画的に進めるしかありません。子ども自身のスケジュール管理の力を養うことも、長期休暇に出される宿題の大切な目的の一つです。そのためには、日頃から親が過保護・過干渉にならず、片付けや身の回りのことなど「自分のことは自分でする」習慣を付けさせましょう。

 同時に「失敗体験」を通じて「自己責任」を意識させることも大切です。もし、子どもが夏休みの宿題を計画的に進めず、提出日までに終えることができなかった場合、その責任を親が取る必要はありません。夏休み最終日に徹夜で宿題をやって大変な思いをしたり、自由研究を提出できずクラスメイトの前で恥ずかしい思いをしたり……どんなに計画性のない子でも、こうした体験をすれば「次は失敗しないように気を付けよう」と反省します。

 まれに、計画的に取り組んでも終わらないくらい、大量の宿題を出す担任もいるようです。その場合、「宿題の量が多過ぎます。だから、できませんでした」とはっきり先生に伝え、後は子どもと先生に任せましょう。代行業者にお金を払って他人をだますよりもずっと良い解決法だと思います。

 子どもが困らないように親が先回りしたり、必要以上に手を貸したりすることは、自立の芽を摘むことにつながりかねません。「自分のことは自分で、計画性を持って行動する」ことの大切さを教え、習慣付けていくことが、子どもを成長させていくのだと思います。