今回のビジネス女子マナーは、引き続き、坂野あすかさん(仮名・28歳)からの質問をもとに、ビジネス用語について紹介していきます。今回は日本語のビジネス用語、略語について。「ビジネスでよく使われるわりに、意外にピンときていない人も多い」という言葉6つを、鈴木真理子さんにピックアップしていただきました。先週の質問はコチラ

坂野さんの質問……

「IT関連会社に勤めています。社内でもそうですが、社外の方とやりとりする際のメールなどで、たとえば、リテンション(顧客維持)、トラフィック(総アクセス量)などカタカナ用語を使う時、“日本語のほうが伝わるのでは……”という気持ちになることが多々あります。でも、他の人が普通に使っている言葉をわざわざ日本語に変えるのも嫌味な感じ?と思うこともあり戸惑います。マナーとしてどう考えたらいいのでしょうか。教えてください」

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ビジネスでの略語は部内で留めるのが基本

仕事をしていると、多くの略語に遭遇します。しかし、略語はあくまでも略語。ていねいな言い方とはいえません。ですから、略語は仕事上それが通用している場所のみで使用するのが大原則です。また社外の方、目上の方には使わないことを基本として、もともとの言葉とその意味を理解して、適宜ていねいな言い方に変える必要があります。

今回は、各企業でビジネスセミナーを行なった際、わからなかった人が多かった略語を6つ紹介しましょう。

あいみつ…相見積もり(あいみつもり)のこと。同じ条件を提示し、2か所以上のところから見積もりを出してもらったもののこと。
オリエン…オリエンテーションの略。
オンスケ…on schedule(オン・スケジュール)の略。予定通り、時間通り、という意味。ちなみに、リスケはreschedule(リスケジュール)の略で、計画を変更するという意味。オンスケ・リスケどちらの略語も和製。
ブレスト…ブレインストーミング(Brainstorming)の略。これも和製英語。「アイデア出し」という場合に使用する。
報・連・相…報告・連絡・相談の頭の3文字をとったもの。ほうれんそうと読む。
前株後株…まえかぶあとかぶ。株式会社の場合に、会社名の前に株式会社とつくのが「前株」、後ろにつく場合を「後株」という。 

ひとつひとつ、補足を入れていきましょう。

あいみつは、上司から「A社とB社であいみつをとって」などと指示される場合に使われる言葉です。しかし、先方に「あいみつを取らせてください」というのはおかしいです。あいみつを取っている場合にも、「いくつか候補とさせていただいている企業様から見積もりをちょうだいしております」という言い方をします。

オリエンは新人研修のことを言う場合が多いですが、プロジェクトがスタートする際などの、第1回のミーティングにも使います。「概要の説明がされる場」と心得ておくとよいでしょう。目上の方にお伝えする場合には「オリエンテーション」と略さず使いましょう。

オンスケについては、目上の方から「イベントの集合時間はオンスケでいいの?」というような聞かれ方をされる場合にも、上で紹介したように「はい、予定通りです」「定刻通り、変わりはありません」などと言い換えるようにしましょう。

ブレストは会議方式のひとつで、「とにかくたくさんの意見を出し合う」ことを目的にしています。なので、「ブレストをしよう」と言われたときには、実現の可能性などを取り払い、できるだけ多くの発言をすることが求められます。ブレストはブレインストーミングよりも略語のほうが浸透しているので、「ブレストの時間をください」などと使用しても失礼にはあたらないでしょう。

報・蓮・相は、「ほうれんそうをしっかり行なおう」「大切なのはほうれんそうです」という言葉だけが有名になってひとり歩きしてしまっているせいか、報・連・相が「報告・連絡・相談であるということを知らなかった」という人がけっこういるのです。結果報告を怠らない、連絡事項をきちんと発信、受信する、判断に迷うときはすぐに相談する、という3つのポイントによって、社内の風通しがよくなり、業務がスムーズに行なえるというわけです。

前株後株は、4字熟語ではなく、基本的には、「前株でいいの?」など、前株、後株、と別々に使うことが多いです。しかし「この会社は前株後株、どっち?」などと、経理担当の人などから聞かれる場合も少なくありません。いきなり「まえかぶあとかぶ」と耳で聞くと、「え、今なんて言ったの?」と戸惑う場合もあります。知っているのと知らないのとでは、気持ちの準備も変わりますので、この機会にぜひ覚えておいてくださいね。「前株です」「後株です」と答えてもさほど失礼ではありませんが、「前株」「後株」自体が、聞き取りにくい言葉ですので、「株式会社×××でお願いします」or「×××株式会社です」と言ったほうが美しいですね。

セミナーで「報・連・相が大切です」と言ったら手元のメモにほうれんそうのイラストを描き始めた女性社員がいた、というのは笑えない事実なのです……。

 



■賢人のまとめ
略語はあくまでも略語。ていねいな言い方とはいえません。ですから略語は、それが通用している場所のみで使用するのが大原則です。また社外の方、目上の方には使わないことを基本として、もともとの言葉とその意味を理解して、適宜ていねいな言い方に変えられるようにしましょう。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部を超えるヒットとなる。 

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