まずは劇場へ。そこから少しずつ知っていけばいい。初心者に送る歌舞伎鑑賞のいろは

人気漫画『ONE PIECE』と歌舞伎のコラボレーション、スーパー歌舞伎II『ワンピース』。歌舞伎の伝統芸に加えて、CGやプロジェクションマッピングを効果的に使った斬新な演出を、次から次へと繰り出すスピーディーな展開と、見る者を圧倒する“エンターテインメント”な空間―― その評判は瞬く間に口コミで広がり、原作ファンや歌舞伎ファンのみならず幅広い世代から支持を集めた。

そして、主人公は海賊から忍者へ。ライブドアニュースでは、この夏に上演される、新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』を特集。400年の伝統を受け継ぎながら、常に新しいものを生み出そうと奮闘する歌舞伎俳優たちにインタビューをおこなった。

第4回は、伝説の三忍・大蛇丸役の市川笑三郎。澤瀉屋の女方として活躍を続ける彼が、『ワンピース』につづき人気キャラクターを演じる意気込みを語る。さらに、「歌舞伎は敷居が高い」と感じる初心者に向けて、歌舞伎のいろはを優しく、懐深く解説してくれた。

撮影/笹井タカマサ 取材・文/栗原晶子 制作/アンファン

「新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』」特集一覧

『ワンピース』では、“役を背ける”ことを追求した

この日、取材先に現れた市川笑三郎さんは、涼やかな着物に身を包んでいた。記事が掲載される8月にふさわしい色や生地を選んでくださったのだという。そんな細やかな気遣いにあふれる笑三郎さんが新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』で挑むのは、妖しい魅力と独特の言葉遣いが印象的な大蛇丸。役へのアプローチから稽古場の雰囲気まで、その名の通り、柔和な笑顔でお話してくれた。
スーパー歌舞伎II『ワンピース』に続き、新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』にご出演されますが、どのような心構えで取り組まれていますか?
前回の『ワンピース』のときもまったく手探りの状態でした。正直なところ、今回もやはり手探りの状態からスタートです。演出のG2先生からは、『NARUTO -ナルト-』の出演者は『ワンピース』に出演している人とほぼ一緒なので、それと同じものが観られる、続編を観るようなつもりのお客様が多いかもしれないけれど、それは避けたい。歌舞伎のご贔屓(ひいき)さんからも、『NARUTO -ナルト-』ファンからも支持を得られるようにしたいと、なかなか高度なお題をいただきました。
漫画原作の作品を歌舞伎にするにあたり、笑三郎さんがとくに意識していることはありますか?
歌舞伎ですから、女役は女方の役者が演じます。でも古典歌舞伎のように演じるのとは違いますよね。『ワンピース』のときは、お役をどの程度、背けられるのかということを意識してニョン婆の役作りをしました。
▲ニョン婆に扮する笑三郎さん(2017年10.11月新橋演舞場 スーパー歌舞伎II『ワンピース』)
©松竹 スーパー歌舞伎II「ワンピース」パートナーズ
役を背けるとは?
そもそも原作ではミニサイズのニョン婆を、背の高い私が演じるという時点でミスキャストじゃないですか(笑)。最初の宣伝チラシ用撮影のとき、原作のキャラクターにこだわらなくていいという意味で「シワなんて描かないでしょ」と四代目(市川猿之助さん)が言ってくださったんです。その結果、ビジュアルも含めて化学反応のようなことが起きて、漫画とも違うし、普段の歌舞伎とも違う、スーパー歌舞伎?『ワンピース』におけるニョン婆というものができました。
とても可愛いニョン婆でした。
『ワンピース』ファンの人からも「このニョン婆、アリじゃない?」みたいなことを言っていただけて。そういう意味でどこまで背けられるかを追求できたんです。そうそう、(坂東)巳之助さんにも公演中の楽屋裏で、「ニョン婆キレイっ!!」ってよく声をかけられました(笑)。
『NARUTO -ナルト-』では、伝説の三忍、大蛇丸を演じられますね。
有名な役ですよね。いつも歌舞伎など観に来ない姪っ子が、大蛇丸を演じると知ったら「すごーい、叔父さん!!」と言ったほどです(笑)。よく知られた役なので、今度はちょっとキャラクターに寄せていこうかなと思い、アニメーションも見て参考にしています。
不気味だけど美しい、その妖艶さみたいなものを出していくのでしょうか?
方向としてはそうしていければと思っていますが、演出をつけていただきながら探っていきます。G2先生は役者の個性を引き出しながら演出されると伺っていますので、それもとても勉強になるなと楽しみです。
全巻を網羅するということで、壮大な作品になりそうですよね。
そうですね。内容がギュッと凝縮されているので、皆さんがご存じの有名なセリフが意外な場面で登場するかもしれません。『NARUTO -ナルト-』の大ファンという方にも驚きがあると思いますよ。
稽古場の雰囲気はどのような様子ですか?
今回の座組は『ワンピース』で共演した方が多いですが、巳之助さん、(中村)隼人さんとは最近、古典でもご一緒する機会が多いので、とても打ち解けた雰囲気です。『ワンピース』に比べたらキャストの延べ人数が大幅に少ないので、より親密度が濃くなるのではないかな。
改めて、『NARUTO -ナルト-』への意気込みをお願いいたします。
「大蛇丸の役は笑三郎さんにピッタリです」と巳之助さんがおっしゃってくれたんですね。その言葉を信じて、本番に向けて役を探っていきたいと思います。巳之助さん、隼人さん、おふたりの『NARUTO -ナルト-』への愛情はとても強く感じているので、その思いに一緒に乗っかって、思い描いているものに近づけたらいいなと思っています。
『NARUTO -ナルト-』をきっかけに、他の演目も観てみたくなったけれど、いろんなマナーがありそうで、なかなか鑑賞への一歩が踏み出せない。でも、今年こそは歌舞伎を観に行きたい! そんな“超初心者”のライブドアニュース編集部員が、笑三郎さんに素朴な疑問をぶつけてみた。

古典の授業が苦手でも、歌舞伎って楽しめるの?

今日は超初心者の質問にも答えてくださるとのことなんですが、本当にいいんでしょうか…!?
はい! 何でも聞いてくださいね。
最初の質問からお恥ずかしいんですが、じつは学生時代、古典の授業が苦手で…。そもそもセリフを聞き取れるのだろうか、という点が不安なんです。
私も、昔から意味がわかって観ていたわけではないんですよ。何か感じるものがあって、そこを追っかけてきたから今に至るんです。たとえば音楽がいいとか、衣裳が綺麗とか、役者がカッコいい、とかからでいいんです。
でもセリフがわからないと、お話を理解できないんじゃ…。
もっと単純な動機で観に来てくださればいいですよ。そもそも古典なんて今と違う時代の作品をやっているわけで、お客様が全員「江戸時代はどんな道徳観だったか」を予習しなきゃいけないなんてことはなくて。理解しようとすること、細かいことや内容を掘り下げていくことは、自分がもっと知りたいと思えてからでいいんです。
「劇場を見てみたい!」「売店って何があるの?」。そういうお芝居以外の目的で来てくださるのでもいいじゃないですか。
えっ、そんなミーハーな感じでいいんですか!
もちろん。「あの人カッコいい!」と誰かのファンになってみるのもいいですよね。その人を追っかけていれば、古典をやることも、新作をやることもあるかもしれないし、もしかしたらスーパー歌舞伎に出るかもしれない。そうすれば、少しずついろいろな作品に触れられます。まず劇場に来るということを大切にしてくださればいいと思います。
推しの役者さんを見つける…(ゴクリ)。
そういえば、毎年1月に上演される「新春浅草歌舞伎」を観に行ったとき、たまたま若いお客様の近くの席に座ったんですね。幕が開く前は、イケメン役者がスーツを着た画像を見ながら、皆さんキャッキャといろんな話をしていましたよ。
私は「このお客様たち、『御所の五郎蔵』を観て、どう思うのかなぁ」と思いながら幕開きを待っていたら、衣裳に身を包んで出てきた役者を観て、ただただ「スゴい!」って声を漏らしていたんです。それは物語がどうの、設定がどうのじゃなく、圧倒されたんですよね、その世界観に
たしかに、衣裳を着て、役が乗り移ったかのように演技される俳優さんを見ていると、興奮で鳥肌が立つときがあります。歌舞伎も同じなんですね!
それが「劇場に来て感じるものがある」という感覚なんです。今の若い子たちが女方を観たら、歴代の歌舞伎の女方の美ではなく、現代的な八頭身で小顔のイケメンが演じる女方のほうを綺麗だと感じるんですよね。それはそれでいいと思います。
何か感じるところから追いかけていくと、その人が次にやることに興味を持って受け入れていけますから。2〜3時間の演目の中で、ひとつでもいいから何か感じるもの、持ち帰るものがあればいい、というつもりでいらしてください。
まとめ:予習は必要ないし、どんな動機だって大丈夫。とにかく劇場に行ってみよう!

ちょっと一息 〜笑三郎さんと歩く新橋演舞場〜

スーパー歌舞伎II『ワンピース』や新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』を上演する、新橋演舞場。笑三郎さんが、劇場の中を案内してくれました。
▲新橋演舞場正面エントランス
▲新橋演舞場ロビー
▲新橋演舞場客席
2階にある食堂「かべす」。おそばや定食などを手軽に食べられます。
お食事処“雪月花”や桟敷席では、予約をして、新橋演舞場特製 特別御膳(NARUTO御膳)をいただくことができます。
食堂は緊張する…という人は、1Fの売店でお弁当を買うのがオススメ! 歌舞伎では休憩中に座席で食事をとることもできます。
8月限定のお弁当、ナルト弁当にサスケ弁当。どれもおいしそう…! 主演の役者さんの好きなおかずが入ったお弁当など、公演ならではの限定メニューだから、売り切れる前にゲットしたいですね。
笑三郎さんが召し上がっているのは、新橋演舞場の名物「小倉もなかアイス」(300円)。パリッとした食感と、甘すぎない小倉アイスが絶妙です! ドリンクコーナーなどでも購入できるのだとか。
お菓子から和をモチーフにした小物までそろった、おみやげ屋さんも見逃せません! 終演後には閉まっている場合があるので、開演前か休憩中に行くのが吉。

掛け声に拍手…上演中はどのように観ればいいの?

歌舞伎の常連さんって、マナーや専門知識にも厳しいイメージがあります。何か間違えたら怒られるんじゃないかと思っちゃうのですが…。
昔はよくあったんです。でもね、お客様それぞれの歌舞伎の観方がありますし、素直な気持ちで観ていただければいいんですよ。
「○○屋!」「待ってました!」など、歌舞伎独特の掛け声もありますよね。あれも調べてみるといろいろなルールがあるようで、初心者にはハードルが高く思えてしまうんですが…。
まあ1階席から掛けるのはどうだとか、女性が掛けるのはどうだとか、そういうのは昔から言われていることではあるんですが、そもそもは1階席からの掛け声というのもあったはずですし。その範囲がだんだん広がって、遠くから掛けるようになったんです。
なるほど。
掛け声は「大向う」と呼ばれる3階席後方から、というのが決まりのように言われていますけど、ではなぜ遠くから声を掛けるかといえば、客席に聞かせるためともいえるでしょう。頭の上を超えて声援が飛ぶことで、観ているお客さんも一体となれますでしょ?
じゃあ、周りの人たちに合わせて声援を送るのが間違いないんでしょうか?
うーん。でもねぇ…、「掛け声や拍手をしよう」という行為ありきではなくて、応援する気持ちが自然と拍手や掛け声になると思うんです。「スゴい!」と気持ちが高ぶったときにすれば、何の問題もないはず。むしろそういうときは、お客様どうし、自然にタイミングが合うんじゃないかと思います。いろいろなことを考えなくてもいいんです。素直に観てくだされば
役者さんの側からそういうふうに言っていただけると、とってもホッとします。
私たちは舞台人なので、声援が多いのは嬉しいこと。人気のバロメーターとも言えますしね。
そういう声援を聞くと、役者さんもどんどん気持ちが高揚してくるんですね。
そうです、そうです。客席の反応というのは、歌舞伎の演出の中には必要なものなので。掛け声や拍手は「なくてもいいんだけど、あったほうがいい」。歌舞伎の観方をお教えするときには、そうお伝えしています。
掛け声は「しなくてはいけないもの」なんだと思っていました! 反対に、それ以外のところではシーンと静かに観なきゃいけない、というイメージもあって。
自然に出ちゃう声はいいんです。笑い声だっていいと思いますよ。それが作品の流れになるんです。舞台が始まる前や、看板役者が出てくるときなど、見せ場の前に、客席が何だか自然にじわじわじわ……となることが昔からあるんです。私たちはそれを「じわ」と呼ぶんです。
「じわじわ」って、歌舞伎が語源だったんですか!?
そう、「○○さんが舞台に上がったときに、じわが起きた」なんて言いますね。そういう「じわ」を感じていただくのも、歌舞伎独特の面白さだと思います。
まとめ:掛け声や拍手のタイミングに悩む必要はない。応援する気持ちが大切!

歌舞伎といえば…知っておきたい独特の演出

歌舞伎ならではの演出もたくさんありますが、これはぜひ知っておいてほしいというものを教えてください!
歌舞伎の演出で一番盛り上がるのは「見得」ですね。
▲見得をする笑三郎さん 平成28年11月博多座『石川五右衛門』女将軍櫻嵐女 ©松竹
決めポーズのようなものですよね。見得を……切る?
歌舞伎界では「見得をする」といいます。これが一番の特徴でしょうね。
ツケという2本の木を打って出される音に合わせて、ストップモーションになってパッと決まる。ストップモーションといっても一時停止じゃなくて、クローズアップの効果なんです。
クローズアップ?
映像で言えば顔がアップになる……みたいなことですね。歌舞伎の見得にはそういう効果があります。「こっちを見てください!」と注目させるんです。そのために、全員が生きたまま止まるんです。
あとは、私もさせていただく「女方」の存在ですよね。
▲笑三郎さんの女方(平成28年6月歌舞伎座『義経千本桜 所作事 時鳥花有里』白拍子園原)©松竹
衣裳などに注目するのがいいんでしょうか?
これは、本当の女性がそこにいると考えるのではなく、「男が女を演じているという特殊な存在」として観てもらったほうがいいですね。女方術という演技法なんです。
衣裳やカツラが豪華だったりするのはもちろんですが、見た目が可愛らしいというだけでなく、所作や動きで見せる美しさに注目していただけるといいかもしれません。
特殊な存在…。
江戸時代と現代は道徳観や倫理観、生活感というものはもちろん違いますが、本物の女性には変わりがなく、私たちがああいうふうに演じることによって、「江戸時代の女性たちはこうだったのかな」と想像していただける。つまり私たちは、本物の女性に近づこうとしているわけではなく、“女性らしさ”を追求して表現している。だから「女方」というひとつの特殊な存在なんです。
なるほど。他に『NARUTO -ナルト-』でも見られる演出があれば教えてください。
「本水」という本物の水を降らせる演出も人気です。昔に比べて、今は使われる水の量が何十トンというような派手なものもあります。『ワンピース』でも使いましたが、今度の『NARUTO -ナルト-』でも水を使った演出はありますよ。楽しみにしていてください。
▲『ワンピース』で、大量の本水が使われたシーン。(2017年10.11月新橋演舞場 スーパー歌舞伎II『ワンピース』)
©松竹 スーパー歌舞伎II「ワンピース」パートナーズ
まとめ:「見得」と「女方」は、初心者にもわかりやすい演出なので注目!

ちょっと一息 〜松竹宣伝部にも聞いてみた〜

歌舞伎の興行を手がける松竹宣伝部にも、初心者の素朴な疑問をぶつけてみました。
Q. 席の種類がたくさんありますが、どこで見るのがいいんでしょうか?
A. 歌舞伎では昔から「とちり席」というものがあります。昔、座席の列は前から順に「いろはにほへと」で並んでいたことから、と・ち・り…つまり、7〜9列目あたりを指します。前すぎず、後ろすぎず、ちょうど見やすいんですね。あとは、2階の前方も人気ですね。
リピーターの方に人気なのは3階席です。やはり何度も観たい方は少しでもお安く、というところもありますから。なので、じつは3階席には上級者の方が多いんですよ。
▲演舞場の客席一覧図。前から7・8・9列目の赤枠部分が見やすいといわれる「とちり席」。
▲新橋演舞場の客席。場所によって見え方はそれぞれ。たとえば同じ1階後方からでも、角度によって見え方は異なる。正面から見ると…。
▲花道の外側から見ると…
Q. 服装に決まりはありますか? ジーパンやサンダル、スニーカーでもOKですか?
A. 大丈夫です。せっかくの機会なので、着物で観劇にチャレンジするのもいいかもしれません。いずれにしても、他の観劇マナーと同様に、周りのお客様のご迷惑にならないようにご配慮いただければ、若い方でも何も気負うことはありません。
Q. イヤホンガイドは、どれくらい詳しく解説してくれるのですか? 役者のセリフが聴こえづらくなりませんか?
A. あくまで演目をわかりやすく解説してくれるものなので、心配ないですよ。物語の背景や内容はもちろん、登場した役者さんの名前や屋号、着ている衣裳について解説してくれます。作品に合わせて流れるので絶妙なタイミングですし、もちろん聞かせどころではサイレントになります。
▲初心者の心強い味方。使用料650円と保証金1,000円を払えば、劇場で借りられます(公演によって使用料が異なる場合もあります。保証金は返却の際に返金されます)

初心者はどんな演目を観るのがいいの?

ストーリーがわかりやすい、有名な場面がある…など初心者向けの演目というと、何がありますか?
いろいろありますが……。この頃の新作はほとんど初心者向けといえるでしょう。最近でいえば、たとえば(中村)獅童さんがアニメ映画で声を担当された『あらしのよるに』も新作歌舞伎になっていますね。言葉は現代語でしたけど、歌舞伎としては古典の手法を多く取り入れて上演されました。なじみのある作品を歌舞伎にしたものから入るのはいいですよね。
たしかに、それならわかりやすそうです!
定番の演目でいえば、『白浪五人男』ですね。
しらなみごにんおとこ?
そこから『ゴレンジャー』のような戦隊モノが生まれたんですよ。えーと…、今は何レンジャーって言うのかな…。
今、放送されているのは「ルパンレンジャー」と「パトレンジャー」です(笑)。
じゃあきっと途中で「ルパンレンジャー!」って決めポーズが出てくるでしょ。あれは歌舞伎の見得です。
えーっ! まったく知りませんでした。
『白浪五人男』というのは、正体がバレて捕まる前に、5人の泥棒が自分の素性を名乗って見得をするという芝居なんです。5人の見た目の美しさと七五調の美しいセリフで聞かせる場面。この名乗りと決めポーズが、現代の作品、別のジャンルにも受け継がれている。そう思ってみたら面白いですよね。
▲『白浪五人男」は元祖戦隊モノ!?(「青砥稿花紅彩画」(通称・白浪五人男)稲瀬川勢揃いの場)
▲笑三郎さんが演じる赤星十三郎(平成28年1月新橋演舞場『弁天娘女男白浪』)©松竹
本当ですね! ぜひ生で観てみたいです。あっ、でも見たいなあと思っても、それがタイミングよく上演されていない場合もありますよね…。
そうなんです。作品との出会いは一期一会ですから、「観てみたい」と気になる作品があれば、ぜひ機会を逃さないでほしいなと思います。
わかりました! では最後に、映像や他の演劇に負けない歌舞伎の魅力を教えてください。
そうですね、常に“息吹いている”ことでしょうか。
い、いぶいている…?
はい。歌舞伎には、同じ演目をいろいろな人が演じるという特徴があります。長いあいだ繰り返し上演されるなかで、再演のときにその時代に合わせて直すこともできるし、その人が若いときに演じた役を、年月が経って歳を重ねたときにまた違う見せ方もできる。同じ作品なのに違う魅力が出てくるのが歌舞伎の面白さなんです。
同じ役を親から息子が受け継ぐというのも、歌舞伎ならではの楽しみと言えるのではないでしょうか。映画でもリメイク作品などがありますが、歌舞伎はその周期が早い。ずっと止まらず、ずっと息吹いているということが最大の特徴で魅力だと思います。
まとめ:同じ演目でも「変化していく」のが歌舞伎の魅力。気になる作品があったら、すぐに見に行こう!
市川笑三郎(いちかわ・えみさぶろう)
1970年5月6日生まれ。岐阜県出身。A型。屋号:澤瀉屋。1986年4月、三代目市川猿之助(現・猿翁)に入門。同年5月に名古屋中日劇場でスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』吉備の国の従者、他にて三代目市川笑三郎を名乗り初舞台を踏む。以降、スーパー歌舞伎をはじめ、女方として数々の演目に出演。1996年4月紫派藤間流師範、舞踊名「藤間可笑(ふじまかしょう)」に。2010年には紫派藤間流家元代行となる。

「新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』」特集一覧

出演作品

新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』
8月4日(土)〜27日(月)@新橋演舞場
原作:岸本斉史『NARUTO -ナルト-』 (集英社ジャンプコミックス刊)
脚本・演出:G2
出演:坂東巳之助(うずまきナルト)、中村隼人(うちはサスケ)、市川笑也(綱手)、市川笑三郎(大蛇丸)、中村梅丸(春野サクラ)、市瀬秀和(うちはイタチ)、嘉島典俊(はたけカカシ)、市川猿弥(自来也)/市川猿之助・片岡愛之助(うちはマダラ・交互出演)
【公式Twitter】@narutokabuki
©岸本斉史 スコット/集英社・『NARUTO-ナルト-』歌舞伎パートナーズ
ライブドアニュースのインタビューでは、インターネットでファンから強く愛されている方々を取り上げています。
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