常連校はどうやって作られる?(撮影/藤岡雅樹)

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 夏の甲子園出場をかけ、全国の球児たちが連日、地方予選で熱戦を繰り広げている。その最中、甲子園の「常連校」は既に、今年だけでなく、来年、再来年、そして3年後の甲子園を見据えた“もうひとつの戦い”を水面下で進めている。強豪校が将来有望な中学生選手を“一本釣り”すべく動く現場を『永遠のPL学園 六〇年目のゲームセット』著者でノンフィクションライターの柳川悠二氏が追った──。

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 6月20日に発表された今年のU-15侍ジャパン代表選手の顔ぶれは驚きだった。それぞれの会場で筆者が目を付けた中学生球児がことごとく選出されていたのだ。ことさら慧眼ぶりをアピールしたいわけではない。突出した力を持つ選手というのは、よりレベルの高い競争現場でこそ才能が輝き、素人目にも非凡な異才に映る。

 特に目を奪われたのは、滋賀・湖南ボーイズの樋上颯太投手だ。

 関西ボーイズ最強右腕とも賞される樋上投手の球速はMAX143キロ。真上から振り下ろすストレートに重厚感があり、ブルペンで受けた坂玲哉捕手のミットからは破裂音が響いていた。

 その坂捕手は鉄砲肩に加え、一発の魅力を持つ右のスラッガー。シート打撃ではデッドボールを受けたが、まるで痛がる素振りを見せなかった。筋力だけでなく、身体の芯が強いのだろう。

 所属の湖南ボーイズでは、昨冬に甲子園球場で開催されたタイガースカップに出場するも、初戦で敗退した。樋上投手は、「高校でも甲子園に行きたい。タイガースカップでの借りが残っているんで」と話し、坂捕手と同じ高校に進学したいという野望を打ち明けた。

 ブルペンでのふたりを熱心に見つめていたのが、大阪桐蔭の石田寿也コーチだった。勧誘の意志を訊ねると、「来てくれると嬉しいですね」と煙に巻かれてしまう。

 関西トライアウトが終わり、帰路に就く湖南ボーイズバッテリーの後を追うように、迎えの車に向かっていたのが、前田健太(現ドジャース)を輩出した忠岡ボーイズ(大阪)の池田陵真捕手だった。169センチと小柄ながら、ティーバッティングで鋭い打球を打ち込んでいた。

「スイングスピードと広角に強い打球を飛ばせることがウリだと思っています」

 やけに受け答えがしっかりした池田捕手は、所属チームと同様に侍ジャパンでも主将に選ばれた。吸い込まれるような大きな瞳の力が印象的だった。

「小学生の時にオリックスジュニアの選考会に行って受かって、中1の時にはカル・リプケン世界少年野球大会の選考会にも参加し、世界一になって帰って来た。そういう意味では、場慣れしていると思います」

 彼らの気になる進路はというと──返答には苦笑いするしかなかった。関西会場で出色のプレーを見せていた三者が、そろいもそろって大阪桐蔭に進学予定というのだ。

 坂捕手と池田捕手は同ポジション。大阪桐蔭では、背番号を巡る日本一の競争が待つが、入学以前から3年後に向けた正捕手争いは始まっている。

※週刊ポスト2018年8月3日号