既存店を移転増床し、今年3月20日にリニューアルオープンしたイオンモール堺北花田店。「食」をテーマとした大型専門売場が目を引く(写真・同社提供)。

無印良品」を展開する良品計画の勢いが加速している。

 2018年2月期の連結業績は営業収益3795億5100万円(前期比13.9%増)、経常利益459億8500万円(同19.2%増)と2桁の増収増益。増収は15期連続、経常増益は7期連続で過去最高益を6期連続更新した。

 その後も店頭は順調で、直営既存店の売上げは3月が6.3%増、4月は4.9%増、5月は2.4%増、6月は5.9%増と増収を続けている。既存店が前年を割ったのは約2年前の16年7月(2.0%減)までさかのぼらなくてはならない。

 今回の快進撃の理由はどこにあるのだろうか。

[商業界オンラインの今日の記事(トップページ)へ]

価格の見直しで衣料品が急伸、客数が大幅に増える

 前期の業績で特筆されるのは国内事業が全体を引っ張ったことだ。国内事業の営業収益は8.8%増、営業利益は30.1%増で、直営既存店の伸び率は6.8%と少なくとも今世紀に入ってからは一度もなかった高い伸びを見せた。

 それを支えたのは衣服・雑貨の好調ぶりだ。衣服・雑貨は既存店で実に11.9%増とかつてない2桁の成長を果たした。ちなみに主力の生活雑貨は3.7%増、食品は4.2%増。衣服・雑貨の絶好調が際立っている。

 衣服・雑貨がこれだけ伸びたのにはわけがある。靴下や肌着など購買頻度が高い「生活の基本」商品を中心に数度にわたる価格の見直しをした結果、新しいお客が飛躍的に増えたのである。

 振り返ってみると、良品計画は14年秋と15年秋に折からの円安基調に対応し原価高を吸収するために一部商品の値上げを実施した。

 しかし16年秋にその方針を転換。暮らしの定番商品を手頃な価格で提供する「ずっと良い値。」のシリーズを増やしつつ価格の見直しに入った。17年春には「豊かな低価格」と銘打って200品目を値下げ。17年秋にはさらに衣服・雑貨110品目を値下げした。

靴下のフェース数の7〜8割を占める「えらべる3足シリーズ」。現在の売価は890円となっている(17年7月撮影)。

 そして今年春には「新価格宣言。」として標準店で展開している約5600品目のうち約2400品目にわたる過去最大規模の値下げを断行した。この中には切りが良く分かりやすい価格への変更もあり、衣服・雑貨の値下げが最も強いインパクトを与えた。

 同社で展開している靴下の7〜8割を占める「えらべる3足シリーズ」がその効果を如実に表している。

 かつて1000円だったより取り3足の売価を15年12月に円高対応で 1200円に値上げしたが、お客に受け入れられず苦戦した。そこで16年8月下旬に990円に値下げ。18年2月からはさらに890円へと引き下げた。

 1200円への値上げに伴って靴下の商品ラインは15年下期に売上数量が前期比0.3%減、売上金額が3.1%減と苦戦したが、990円へと値下げした後の16年下期には売上数量は49.0%増、売上金額は28.2%増と一気に跳ね上がった。

 その後も17年上期は売上数量25.4%増、売上金額15.5%増、17年下期は売上数量18.4%増、売上金額17.3%増と数量・金額共に2桁増を継続。何よりも客数が増え始めたのだ。

 衣服・雑貨部門の直営既存店の客数は15年下期に10.1%減、16年上期に9.1%減だったが、16年下期に1.3%増と前年を上回り、さらに17年上期には11.0%増、17年下期には18.4%増と尻上がりに伸びていった。

全体の客数も引き上げ、大型店化で衣料品売場を拡大

 この靴下だけではなく、例えば17年秋には紳士の裏毛ロングパンツを2980円から1290円に、えらべるトランクス&ボクサーをより取り2枚で1490円から990円に、軽量フレンチダウンポケッタブルスタンドカラーベスト(紳士・婦人)を6980円から3990円に値下げした。

 旅行で使うハードキャリーも17年3月に小型の35lタイプを1万9000円から1万4900円に値下げ。計画を大きく上回る売れ行きだという。

 好調な衣服・雑貨に引っ張られる形で、「無印良品」全体の客数が伸びていった。16年2月期に2.6%減だった直営既存店の全体の客数は価格の見直しを始めた17年2月期に0.3%増とプラスに転じ、前期の18年2月期には6.1%増と大幅に増えた。しかも前期は全四半期で前年を上回った。一品単価の引き下げで買上点数が増え、客単価も伸びは鈍化したとはいえ、総じてプラス基調で推移した。

 なお、今第1四半期(3〜5月)における直営既存店の全体の客数は8.3%増、ただし客単価は3.4%減となった。

松粼曉社長。

 松粼曉社長はこう話す。

 「価格を見直したことで支持を受けた。実は08年のリーマンショック後16年の時点で既存店の客数が前年を上回ったのは13年度の1年だけだった。元来、無印良品は普段の生活に使ってもらう『生活の基本』の商品なので、使用頻度が高い商品は価格感度が重要なのだと改めて認識。マーケットの潮目が変わったのだと感じた。バイイングパワーを背景にした価格交渉や取引先の集約、産地の移管、流通経路の短縮によって価格を見直す努力は継続的に進めたい。今後は全世界でも価格を見直していきたい」

 衣服・雑貨が無印良品全体に影響力を増している背景には、同社が新たな店舗戦略に踏み出しているという事情もある。

 同社は前期からスタートした中期4カ年経営計画で国内店舗の大型化を掲げている。同社の国内直営店の平均売場面積は前期末で229坪。今後はこの約2倍の500坪級の大型店を20年までに100店に増やす計画だ。500坪ないと無印良品が展開する約7000アイテムを効果的に並べられないという判断によるものだ。

 この中核にあるのが衣服・雑貨売場の拡大だ。500坪の大型店では衣服・雑貨の構成比を40%に引き上げる。生活雑貨は50%、食品は10%をイメージしている。このため有楽町と丸井吉祥寺、渋谷西武、広島パルコの各大型店ですでに改善投資を実施し、衣服売場を広げてその効果を検証。実際に販売効率が高まっているという。

 今後、既存店でも衣服売場を広げて店舗を大型化していく考えだ。

東アジアが全社利益の4割に 新たな店づくりに注目

上海市の主要ショッピングストリートである淮海路に15年12月に開店した上海准海755店。中国国内では最大規模の面積を有する世界旗艦店だ(写真・同社提供)。

 直近だけの好調要因ではないが、ここ数年の同社の成長を継続的に支えているのは中国を中心とした海外事業だ。前期の海外事業の営業収益は23.1%増、営業利益は2.2%増となった。

 特に東アジアの営業利益は168億円とグループ利益の37%を生み出している。中国はテレビ番組の誤報の影響で上期は苦戦したが、通期では既存店が4.6%伸びるなど堅調に推移。33店を新規出店し、4店を閉鎖、前期末の店舗数は中国だけで229店に広がった。この結果、海外店は457店となり国内の419店を初めて上回った。

 中国では現在、1、2級都市に出店している店が全体の8割を超え、3級以下の都市は2割未満にとどまる。今後は1、2級都市をベースにドミナント(地域集中)出店をしながら、3級都市にも点で出店し店舗数を増やしていく。

 中国では今後年間30店ペースで出店する一方で、20店で改装を実施。海外店全体では50〜60店を出店していく計画だ。

 良品計画は今、新たな店づくりに乗り出している。今年3月にイオンモール堺北花田店を移転、増床。昨年7月に有楽町店で始めた青果売場はもちろん、産地直送を基本に鮮魚や精肉まで品揃えを広げた大生鮮売場を開設。グロサリーや焼きたてパン、「カフェ&ミールMUJI」、そしてフードコートも導入し、「食」をテーマとした大型専門売場を編成した。

 出足は好調で、生鮮食品が来店頻度を高め、世界旗艦店である有楽町店の客数を超えて、計画を大きく上回る成果を挙げているという。

 しかし本当に注目すべきはその食品売場ではなく、同社の売場全体の編集力の進化だ。衣服・雑貨や生活雑貨、さらに書籍などが混然一体と融合し、「生活の基本」をコンセプトとした未来型の大型ライフスタイル提案型専門店が完成に近づきつつある。そんな印象を受けた。19年春に東京・銀座に開業するホテル併設型の世界旗艦店を含め、しばらくはその店づくりから目が離せない。

 

 

※本記事は『販売革新』2018年7月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。6月の既存店売上高の伸び率と今第1四半期の客数と客単価の伸び率のみ数字を追加しました。

※図表は掲載していません。『販売革新』2018年7月号をご覧ください。

→オンラインストアはこちら