妊活と聞くと、なんとなく「女性が頑張るもの」というイメージがありますが、パートナーも一緒に頑張ってほしいのが本音です。そもそも男性の妊活はどのようなことをするのか、お互い「ラク」な気持ちで妊活するにはどうすればいいか。

男性用セルフプレジャーグッズを開発するTENGAから、社内ベンチャーとして立ち上がったTENGAヘルスケアの代表・鈴木雅則さんと、男性の性や妊活について考えていくこの企画。

第2回目の今回は、TENGAヘルスケアが開発する精子の簡易検査キット「TENGAメンズルーペ」についてお話を伺います。

TENGAメンズルーペ

男性の妊活が「ハードルが高い」といわれる理由

--鈴木さんは、過去に妊活をしていた時期があるんですよね? 病院での検査ってどんな感じなんですか?

鈴木雅則さん(以下、鈴木):大きい病院には「採精室」というのがあるんです。アダルトビデオとモニターが置いてあって、「ここで採精してください」と言われるんですね。扉を1枚隔てた向こうには待合室があり、女性がたくさん座っていて……。そんな状況でマスターベーションするのは、かなりプレッシャーでした。

自宅で採精することもできますが、その場合は「病院に来る1時間前に採精して持ってきてください」と言われます。適当な容器に入れた精液を、女性がお腹にかかえて温めながら持って行ったりするんですよ。

--温める? 温度が下がっちゃダメということですか?

鈴木:そうなんです。精子を保温する容器すら開発されていないと知ったときは「精子をないがしろにするんじゃねぇ!」と思いました(笑)。けれど、そういう不便さを解決しないと妊活に積極的になる男女は増えませんよね。当時はおかしいなと思いましたが、今では課題として捉えています。

精子を「こっそりチェック」できる簡易検査キット

--「男性の性」をフックにして、商品開発のアイデアにつなげているんですね。ほかには、リアルな悩みからどのような商品が開発されているんですか?

鈴木:「TENGAメンズルーペ」という、精子の簡易検査キットを開発しました。キットの中に入っているのは、精子を採取するための容器と、拡大レンズの付いた本体。本体をスマホのカメラに貼り付け、そこに精液を載せて1秒間の動画を撮ることで、精子の存在や、どのくらい数がいるかなどを観察することができます。精子の数をカウントして、TENGAヘルスケアのホームページ上で入力すれば、精子濃度や運動率を求めることもできるんですよ。同様のことができるiPhone用のアプリも公開しています。

--どのくらいの数がいれば正常と判断できるのでしょうか?

鈴木:例えば、ホームページで精子数を「10」と入力すると「3000万/ml」と表示されます。精子濃度が1500万/mlより少なければ、WHOの基準より低いということになり、医療機関で精液検査を受けたほうがいいと判断できます。ホームページでは精子の運動率も求めることができ、40%未満だとWHOの基準に達していないことがわかるんですね。ご自身の精液を気軽にチェックしたい男性にとって、うってつけのツールといえると思います。

--気軽にチェックする?

鈴木:妊活をスタートするとき、男性は病院に行って精液検査を行う必要があります。でも「もし精子がいなかったらどうしよう……」と不安に思って、なかなか病院に行けない男性も多いんですよ。TENGAメンズルーペを使えば、精子の数や、動いている精子がどのくらいいるかなどを、簡易的にチェックできます。気軽にチェックできれば、男性にとって妊活のハードルが少し下がると思うんです。

実際に、社内でTENGAメンズルーペを試用してもらったところ、精子の少ない人が2人見つかりました。2人とも病院で治療してもらい、そのうち1人はいま、1児のパパになっています。

--精子が少ないというのは先天的なものですか? それとも何か原因があるのでしょうか?

鈴木:精子は、まだあまり研究されていない分野なんです。だから「あなたの精子が少ない原因はこれですよ」ということをずばり指し示すことができないんです。いつ測れば最適という明確な基準もなく、1週間毎日測ったら、毎日変動があるものなんですよ。

--逆にいえば、1回測ってみて、少ないからといって諦める必要はない?

鈴木:そうです。食生活に気をつける、適切な運動を行う、タバコ、お酒を控えるなど生活習慣を整えれば、翌週には結果が変わっていることもあります。病院で精液検査をするときも、1回では終わりません。2〜3回検査し、平均を見て判断します。

「あなたの精子は大丈夫なの?」と言える関係性に

--TENGAメンズルーペはどこで買えるんですか?

鈴木:大手量販店だけではなく、ドラッグストアでも購入することができます。誰でも買えるような流通戦略を展開しています。

--みずから購入する男性が多いのでしょうか?

鈴木:実は、女性の勧めで購入する男性が多いんですよね。セミナー会場などで販売していると「こっちは妊活で大変な思いをしているけど、あなたは大丈夫なの?」という会話が私の前で繰り広げられることもあります。

--そういうことが言える関係っていいですね。

鈴木:そうですね。そういうカップルを見ると、「この2人は大丈夫だな」と思います。妊活後の人生のほうが長いのに、妊活することがゴールになってギクシャクしてしまう場合も少なくないですから。

“男性の妊活”って堅苦しく考えずに、「ちょっと見てみようか」という感覚でTENGAメンズルーペを使ってもらえるといいですね。パートナーと一緒に、わいわい楽しみながら妊活に取り組むきっかけにしてほしいです。

(取材・文:東谷好依、写真:大澤妹)