マッチングアプリにおけるトラブルは少なくない(写真:RyanKing999/iStock)

20代女性の坂上果歩(仮名)さんは彼氏と別れて以来、出会いを求めてマッチングアプリを使っている。数名とやり取りして、いちばん感じが良かった男性と直接会うことになった。その後、デートもうまくいき、盛り上がって本格的に付き合うことを互いに約束し合った。

ところが、興味本位からFacebookで相手の名前を検索したところ、彼の裏アカウントを発見。赤ん坊の写真に、「子どもが生まれた。すでに親ばかです」というコメントをつけて投稿していた。

出会ったときは独身だと言っていたのに、既婚者のうえに子どもまでいることがわかって、坂上さんはショックを受けたという。マッチングアプリにおけるこのようなトラブルは少なくない。

マッチングアプリで恋愛する男女が増えている

「マッチングアプリ」とは、端的に言うとインターネット上で気になる男女と出会える、いわば恋愛アプリだ。出会い系サイトとの違いは、実名制SNSであるFacebookと連携するものが多く、アプリの信頼度や、利用者の真剣度が比較的高い点。最近は気軽な出会いを目的としたものから、結婚をうたうもの、LGBT専用のものなどさまざまなサービスが登場している。

年々、こうしたマッチングアプリで出会うカップルが増えている。リクルートブライダル総研調べの「婚活実態調査2017」(2017年7月)によると、婚活を行った人が結婚に至ったきっかけを2015年と2016年で比較すると、「恋活サイト・アプリ」は8.4%から20.5%、「婚活サイト・アプリ」が15.1%から17.2%へとそれぞれ増加している。

また、アプリ市場データを提供するApp Annieの2018年2月の発表によると、Tinderは2017年に最も多くの消費支出を記録したマッチングアプリで、非ゲーム系アプリ全体の消費支出ランキングでもNetflixに次ぐ第2位に位置する。世界的にマッチングアプリの人気が高まっていることがよくわかる。

なお、2017年国内マッチングアプリダウンロードランキングを見ると、1位は「タップル誕生」。次いで、「Pairs」、「Tinder」、「HAPPYMAIL」「With」と続く。

マッチングアプリの需要の大きさを見込んで、2018年5月にはFacebookの開発者向けカンファレンスにて、マーク・ザッカーバーグ会長兼CEOが出会い系サービスへの本格参入をも表明している。

今の大学生は学校内で恋人を探さない

マッチングアプリは、日本の大学生の間でも流行している。「大学の敷地内でマッチングアプリを起動したら、知り合いが表示されて慌ててアプリを閉じた」という女子大生がいるほどだ。

「大学生なら出会いに困らないはず」と思う人もいるだろう。しかし、彼ら彼女らは、まわりの友人たちと人間関係を壊してまで付き合いたいとは思わず、恋愛はコミュニティの外に求める傾向にある。

筆者が昨年、都内の大学に通う複数名の大学生にインタビューしたところ、「友達やサークルの先輩後輩同士で付き合うとすぐに周囲にバレて付き合いづらい」「誰が誰を好きとか、前の彼もその前の彼もお互いに知っていたりする。気を使ってしまうので、結局(大学内)恋愛はうまくいかない」という。

一方で、マッチングアプリの人気が高まるにつれてトラブルも増えている。ぐるなびウエディングの「最新婚活事情調査」(2018年6月)によると、サンプル数106件(すべて未婚者)の内、トラブルに「あったことがある人」は37.6%、「身の回りで聞いたことがある人」を含めると、半数近くの人がトラブルを身近に感じていることが判明した。

これまでに事件も起きている。2018年2月、兵庫県の27歳女性の切断遺体が見つかった。民泊用マンションが殺害現場となったことに加えて、死体遺棄と死体損壊の罪で起訴された米国籍の男性が被害者とマッチングアプリ「Tinder」を通じて知り合ったことも話題を集めた。

事件までいかなくても、小さいものから大きなものまでさまざまなトラブルが起きている。ある30代女性はこう語る。

「マッチングアプリで男性と知り合い、会うことになってテンションが上がっていました。でも、デートでの会話が妙な方向に。気づいたらネットワークビジネスの勧誘を受けていて、慌てて逃げ出しました。その後も何度も連絡が来て困りました」

そのほかにも、アプリ内に掲載されているプロフィール文や写真が実際の人物とかけ離れていた、宗教に勧誘された、写真から住所を特定されてストーカー被害にあったなど、さまざまなトラブルが起きているようだ。

トラブルにあわない使い方とは

マッチングアプリを安全に使いたいなら、まずはサービスの選択が重要となる。サービスごとにユーザー層と目的が異なるため、自分と合ったものを選択しよう。

中でも、男性が有料でないと利用できないアプリのほうが参加者の本気度が高い傾向にある。加えて、身分証明書での本人確認が必要なアプリは信頼度が高い。サービスによっては独身証明書が必要なものもあるので、そのような視点から選んでもいいだろう。

また、マッチングアプリはさまざまな人が利用している。だから、住所や最寄り駅などの個人情報の公開は控えたほうがいい。そのような情報は、直接会って信頼できると判断した相手にのみに教えるなどの配慮も必要である。

直接会う際にも、多くの人がいる喫茶店などで日中に会い、相手と二人きりになるような場所には行かないことを推奨する。細心の注意を払うのであれば、誰といつどこに行くのかを、事前に信頼できる友人などに伝えておくのも有効である。

ただ、筆者の同級生や、友人の女性ライターもマッチングアプリをきっかけにパートナーを見つけ、やがて結婚にまで発展した。うまく使えば新たな出会いにつながるので、リスクと注意点を知ったうえで、うまく活用してほしい。