「理解できなくていい」だから私たちはヨシダナギに共鳴したくなる

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撮影中、インタビュー中…淡々とポーズを取ったり、話したりしながらも時折見せる笑顔が印象的だったヨシダナギ。アフリカ・エチオピアのスリ族や、サハラ砂漠の青の民と呼ばれるトゥアレグ族、パプアニューギニアのオモ・マサライ族など、少数民族との出会いを求めて世界の奥地を訪れるフォトグラファーだ。

2015年に放送開始したテレビ番組「クレイジージャーニー」(TBS系)の出演をきっかけにその名を知られることになったが、それ以前に、WebメディアやSNSなどを通じて写真に注目が集まらなければ「テレビからお声は掛からなかった」と彼女は言う。「人生のさまざまな場面で、ネットに拾われてきた」と語る彼女に、インターネット(以下、ネット)との付き合い方や、ネット時代の旅の変化について聞いてみた。

■ネットがなければフォトグラファー・ヨシダナギは存在しなかった
――2018年3月に出版された「ヨシダナギの拾われる力」(CCCメディアハウス)には、「インターネットに拾われた」というエピソードが何度も出てきますよね。ヨシダさんにとって、ネットはどのような存在ですか?
私はWebメディアに写真が取り上げられたおかげで、フォトグラファーという肩書きを得ることができました。英語力ゼロでアフリカに行けたのも、ネットのサービスに助けられたからです。なので、もしネットがなければ、フォトグラファー・ヨシダナギは存在していなかったと思っています。
――普段、仕事のモチベーションを上げるために見ているサイトなどはありますか?
意識して見ているサイトは特にないですね。フェイスブックやインスタグラムに「写真を見て救われました」「元気をもらいました」と応援のメッセージを頂くことがあり、そうしたメッセージを見ることでモチベーションアップにつながっています。
――悩み相談のメッセージも来ると聞きましたが。
「この世の終わりかも…」みたいに思い詰めた人からの相談が多いです。でも「生きようと思った」って書かれていて「あ〜ひとりの命を救ったんだ、いつの間にか!」って思います。

あと最近は、外国人からメッセージをいただくことも増えてきました。アフリカ人の方から「お前の写真最高だぜ!」って来るとうれしいです。
――アフリカの人たちはヨシダさんのことをどうやって知るのでしょう?
おそらく、SNSでシェアされた日本の記事や写真を見て知るんだと思います。「何て書いてあるかわからないけど、お前の活動すごいね!」というようなメッセージをよくいただきますね。
――それはうれしいですね。逆に、ネットを見ていると、時にはネガティブな情報に接してしまうこともあると思います。ネットを利用する上で気を付けていることはありますか?
基本的に、ネガティブなコメントは見ないように注意しています。私は打たれ強いタイプではないですし、悪く言われたら「じゃあ全部やめてやる!」と投げ出したくなってしまうと思うので…。「クレイジージャーニー」の放送後は、ネガティブなコメントを思いがけず目にする可能性もあるので、あまりネットを見ないようにしていますね。
――ご自身がSNSで発信されるときに気を付けていることはありますか?
言葉遣い(笑) あとは、あまり宣伝記事が好きではないので基本的に自分のことであってもさほど宣伝しないです。ただ、私がフォトグラファーというのもあって、写真展の情報は比較的欲しがっている人が多いので写真展の告知はします。人って余計な情報はいらないはずなので、それ以外のことを発信してしまうと「フォローしている意味がない」となってしまうかな、と。
あまり余計なことはつぶやかないようにしています。だから本当にミニマムです(笑)

あとは、ひとつのことに対して告知は1回までと決めています。もっと頑張ったらもっと集客できる可能性はあると思うんですけど、私はそこまでしなくてもいいかな。

――定期的にチェックしているSNSのアカウントなどはありますか?
基本的にあまり人の投稿に興味がなくて…(笑) でも、ジミー・ネルソンという写真家や、テオ・ゴセリンという写真家のインスタグラムのアカウントは、たまに見ています。
――彼らはどんな写真を撮っているんですか?
テオ・ゴセリンは、世界を点々としながらポートレートを撮っている写真家です。私とは写真のテイストが異なりますが、ロードムービー調で色合いや被写体との距離感が好きなんです。ジミー・ネルソンは、少数民族を撮っている写真家。私と同じように、美しい景色を背景にして、ポージングを決めて撮るんですが、私よりアカデミックなんですよ。白人が持つ色彩なのでシックというか…。
――今まで「アフリカ人の写真」と聞くと、彼らの生活風景をそのまま切り取るというイメージがありました。その固定概念を覆したのがヨシダさんだと思っていたんですが、先達がいるんですね。
ジミー・ネルソンの写真を見て「私がやりたいのはこれだったんだ。先にやられた!」と思ったんです。「少数民族にポージングをつけて撮ってもいい」と、背中を押してくれたんですよね。彼の写真を見たからこそ、今の私のスタイルがあると思っています。
――撮影する民族が被ってしまうことはないんですか?
しょっちゅう被っていますよ。撮ろうと思っていた民族を先に撮られてしまったときは「やっぱり目のつけどころが早いな」と思いますし、同じ民族を撮った場合は「私のほうが距離感が近いな」って思うこともあります(笑) 自分がなかなか行けないエリアだと、どうやって許可を取ったんだろうと、撮影の裏側が気になりますね。
■クリエイターをリスペクト…だからゲームは課金から始める
――好きな写真家の作品を見る以外に、ネットでどんな情報を見ることが多いですか?
婚活ブログを熱心に見ています(笑) 婚活に苦戦している人って、男女とも、お互いを悪く言っていることが多いんです。男性の婚活ブログを見ていると「肩書きばかり見て、コミュニケーション能力も礼儀もない女ばかり」という意見が多いし、女性の婚活ブログには「こんな男性本当にいるのかな」と思うようなキャラクターが目白押しで面白いんです。
――高みの見物をするみたいな。
私なんて結婚もしていないし、頑張ろうともしていないから、全然高みにいないんですけどね。怖いもの見たさでしょうか。本当は人に興味がないはずなんですけど、婚活の世界を知らなかったので「こんなふうになっているんだ」って思いました。面白いキャラクターが次々登場して、それでも切磋琢磨している感じがいいなと思うんです。友達になったブロガーさんも1人いますよ。
――えっ!? どうやってつながったんですか?
あるとき、自分のことを「地味な女」と書いている女性のブログを見つけたんです。たくさんの婚活ブログを見てきた中で、その子のことは応援したいと思って、ツイッターでフォローしたんですよ。そうしたら、その子がイベントに来て「ヨシダさんのこと、すごく好きなんです。まさかフォローしてもらえると思わなくて…」って言いながら連絡先を教えてくれたんですね。婚活してる子って、ガツガツくるんですよ(笑)
――ヨシダさんに対しても?
婚活で鍛えてきただけあって、初対面の人の懐への飛び込み方を熟知しているんでしょうね。そのあと、一緒にご飯に行きました。本当に地味な人を想像していたんですよ。でも実際はかわいかったので、だまされたと思いましたね。ギャグセンスの高さはブログのままでしたけど。
――ネットを見る以外で、どのようにスマホを使っていますか?
LINEブラウンファームをやっています。1日中やっていられますね。お金を払わないとアップデートされていかないので課金もしています。こんなに楽しいのにお金を払わないなんてクリエイターがかわいそうですよね。全てのゲームは課金してからやるかどうか決めています。
――もともとゲームが好きだったんですか?
元から好きですね。家にこもって自分のペースでできるものがすごく好き。そして、何の役にも立たないところも好きなんです。本当に極めれば仕事になることもあると思うんですけど、普通にやっているくらいじゃ自分が楽しいだけで時間を無駄にしていますよね。そんな何にもならないところが好きなんです。スマホはゲームのために持っているようなものです(笑)
■人に興味がないはずなのに気になるファンの存在

――写真展で実際に会ったファンの方と接した時と、ネットで言われているときとの差を感じることはありますか?
ネットの記事で「写真を撮っていないんじゃないか」「本当は(アフリカに)行ってないんじゃないか」と書かれたことがありました。私は、他のカメラマンさんよりもカメラに詳しくないし、興味がないのも事実。独学なのでレタッチも粗いと自分で分かっているので、「うまいと思ってないですよ」という意味でそう公言していたんです。でも「あの子は自分でカメラに興味がないと言いながらも、あの写真を撮っている。裏で写真を撮る人、レタッチをする人がいるんじゃないか」と言うんです。
――チームヨシダナギがいるんじゃないか、と?
私は、確かにこの3年で世の中に出てきたんですけど、本名を公開していないし、それまでの自分の歴史をそんな話していないので、過去のことが出てこなくて当然なんですよ。「ポッと出てきた」「カメラも知らないと言っているのに作品を出している」というふうに捉えられてしまって。そういうふうに捉えられるなら、もっとクオリティーの高い人をアサインするのにな、と(笑)

でも逆を言えば、プロを立てていると思われるくらい、「写真が下手」「写真を知らない」という人では撮れないレベルの写真が意外と撮れているのかな、という考え方もできました。もう少し調べてから私の記事を書いてほしいと思いましたね。まさかそんな勘繰りをされていると思わなかったので新鮮でしたが、心外だとも思います。
――熱烈なファンの方もいらっしゃいますよね。写真展で声を掛けられることもありましたか?
なんでこんなに(私の)ファンなんだろうって思うことが多々あります(笑) 私と会って泣いちゃう方もいて…。正直言うと、私は人を救うために何かをやっているつもりではないし、ポッと出で大したもんじゃないと思っているんですけど、「何か嫌なことでもあったのかな?」「疲れてるのかな?」「よっぽど世の中が大変なのかな?」って気になってしょうがないんです。それは、私のことが好きなんじゃなくて、アフリカ人の生命力が刺さっただけじゃないかな、と私は思っているんですけどね。
――そうであれば本望ですよね。
そうですね。そこで、私のことが好きだと言うのではなく、アフリカ人が好きだと言ってもらったほうが私としてはしっくりきますね。
■ネットで出会った、母のように見守ってくれる協力者

――先ほど「英語力ゼロでアフリカに行けたのも、ネットのサービスに助けられたから」と仰っていましたね。ネットの進化によって、ヨシダさんの旅はどう変わりましたか?
被写体を探すのが楽になりました。今はインスタグラムのタグをタップするだけで、少数民族の名前と国を絞ることができるので。あとは、10年前と比べて翻訳サービスがすごく安くなったと感じます。現地のコーディネート会社にもすぐにメールを送れるようになりました。
――翻訳の料金っていくらくらいなんですか?
今は短文であれば数百円とかからないですね。どんなに長文を打っても、2000円くらいで翻訳してもらえます。
――へえ、便利ですね! 昔はどのくらいかかっていたんでしょう?
初めて翻訳を依頼したときは、短文でも5000〜1万円ほどかかっていました。でも、そのときも、私はいい人に拾ってもらえたんです。依頼内容を見て「若い女の子だろう」と思われたようで、翻訳した文章の下に「女性1人ですよね。もしものために催涙スプレーを持って行ってくださいね」と書いてくださった方がいたんですよ。その後「直接メールをもらえればもっと安く翻訳できます」「母親のような気持ちで応援するから、もし何かあったら連絡してくださいね」ってメールアドレスを教えてくださって。その方にはずっと依頼を続けていますが、いまだに数ページある書類を1000円くらいで翻訳してくださっています。
――直接お会いしたことは?
翻訳をお願いしてから7年目にようやくお会いすることができました。その方は、ニュージーランドに住んでいるんです。私が写真展を開催した地域にご実家があり、ちょうど帰国が重なるタイミングだったので、写真展に来場いただきました。ちょっと照れくさかったけど、うれしかったですね。
――ヨシダさんの写真の裏には、支えてくださっているたくさんの方の存在があるんですね。他に、ネットの進化によってスムーズになったことはありますか?
支援している家族がアフリカにいるんですけど、その地域にもネットカフェができて、連絡が取りやすくなりました。これまでは現地でしか会えなかったけど、今はフェイスブックでやりとりしています。
■アファール族がヨシダナギに共鳴した理由
アファール族
――これまで、たくさんの少数民族と出会ってきたと思いますが、実際に会ってみてイメージと違った民族はいましたか?
マサイ族は思っていた以上にビジネスのプロで、自分たちで“マサイ”というブランドを確立させた人たちですね。自分たちでiPadを使って、直接クライアントを呼んでガイドをしていて、すごいな、と思いました。もう“マサイブランド”なんだな、と。他の民族もそれくらいできたら観光客を呼べると思うんですけどね。マサイ族ほどの民族に出会ったことがないです。
――すでに会った少数民族にもう一度会いに行くことはありますか?
すごくピュアですごくいい人たちだと必ず何かしらで還元しないといけないな、と思うので、その人たちには絶対にもう一度お礼を言いに会いに行こうと思っています。実際にもう一度会いに行くこともあって、そのときは必ず写真集や作品を寄贈します。
――写真を見せたときは、どんな反応が返ってくるんですか?
日本人のように、分かりやすく「わあ!」と感激されることはなくて、わりとあっさりしています。あとは「ありがとう! 親に見せてくる」と言うくらい。大きなリアクションを期待すると、肩透かしを食らいますね。撮影をしても写真を見せに来るカメラマンは少ないそうで、「よく持って来たね」とねぎらいの言葉を掛けられることが多いです。
――今、もう一度会いたいと思っている民族は?
今会いたいのは、エチオピアのアファール族と、西アフリカのニジェールにいるボロロ族です。
アフリカの少数民族は、私がなぜ会いに来たか説明しても、理解できない人が大半なんです。そこを理解してもらおうとは思わないんですけど、アファール族とボロロ族は、自分たちの格好よさを伝えるために、わざわざ探して遠い国から会いに来たというのを理解してくれて…。撮影をするときも何ひとつわがままを言わず「ナギが撮りたいものに対して俺らは協力するだけだ」と言って、一緒に作品撮りをしてくれたんです。そこまで私のことを理解してくれたのがうれしくて、彼らにはもう一度会って、ちゃんとお礼を言いたいと思っています。日本人だったら理解を得るのは簡単なことですけど、アフリカだとそこに至るまでが相当難しいので、そうやってくみ取ってくれたことが、私にとっても大きなことでした。
――どんな民族なんですか?
アファール族の伝統的なスタイルは、天然アフロのロングヘア。でも、エチオピアでは、ロングヘア=ゲイという認識があって…。アフリカでは今、マイノリティに対してすごく敏感で、場合によっては「病気になった」「悪魔に憑かれた」といって、親が子どもを殺してしまうこともあるんです。アフロのロングヘアは、アフリカの都市部では基本的にNG。だから、かなり奥地に行かないと、アフロのまま生活している人たちはいません。そうやって迫害を受けてきたからこそ、自分たちを格好いいと言ってくれる私を歓迎してくれたというか。「そんなに言ってくれるなら」と共鳴してくれたんです。
――かなり奥地に行かないと会えないということは、悪路を車でひたすら進むしかないのでは…。アファール族に会うまで、どのくらい時間がかかったのでしょう?
距離的には、エチオピアの都市部から2日半で行けるんですけれども…。アファール族の情報を得るまでに、私は14回エチオピアに通いました。それまでずっと「いない」と言われ続けてきたんですよ。「15年遅かったね」って。ガイドの人すら、彼らの居場所を初めて知ったと言っていました。
――13回目までは「いない」って言われ続けていたんですよね。それでも諦めなかったのは「絶対にいる」と信じていたからですか?
アファール族を探すためだけでなく、他にもエチオピアに行く理由がたくさんあったんです。「アファール族に会えたらラッキーだな」と思って、行くたびにしつこく聞き続けて。その結果、14回目で「聞いてみてあげるよ」という人に出会い、対面することができました。
――すごい旅ですね。もうひとつのボロロ族はどんな民族なんですか?
ボロロ族の男性は、身長が高い美男子なんですよ。彼らは年に一度、砂漠のど真ん中で美男子コンテストを開催するんです。表情を競ってナンバーワンの美男子を決めるんですけど、その表情というのが、まるで「バカ殿」のようで、ちっとも美男子らしくないんです。その話を聞いて「なんてユニークな人たちなんだろう」と思ったんですよね。彼らに会うまでは、美男子だからきっと性格が悪いだろうと思っていたんです。でも、いざ会ってみると、すごく性格が良かった。背も高いし顔も良いし、私のやりたいことも理解してくれる。「こんなパーフェクトな人たちがいるのか」と驚きました。一緒にいてすごく楽しかったので、もう一回会いに行きたいです。ただ、ビザや国の問題、その国に旅行会社がないのでハードルが高すぎて、個人で行くのは大変なんです。安全度も考えると、テレビの取材班でもなかなか行ける国ではないですね。
■アフリカ人に生まれ変わったら“黒い肌”の美しさを証明したい

――では、少しトリッキーな質問になりますが、もしこれまで撮影した少数民族に生まれ変わるとしたらどの少数民族がいいですか?
生まれ変わったら…先進国のアフリカ人になりたいんですよ。少数民族に生まれ変わりたいというのは一切ないんです。先進国の、すごくスタイルの良い、良い家柄のアフリカ人。歌って踊れるスーパーアイドルとか、それになりたい(笑)
――先進国というとどこになるんですか?
日本じゃないですね。アメリカ、フランスとかかな? アフリカでは意味がないんです。
――それはなぜですか?
美しいアフリカ人のモデルになりたいんです。アフリカは今“ダイバーシティ”と言われているけど、結局「肌が黒い」「アフリカの国に生まれた」というだけで大きなブランドのモデルを降ろされたりするんですよ。黒人でもアメリカ国籍とかじゃないと結局モデルになれない。アフリカ人ってまだ見下されているというか、国籍が問題になってきていて。

アフリカ人は自分たちの黒い肌を好きだけれど、黒っていうだけでこんなに阻まれる人生があるんだっていうのを散々私に訴えてきたんですよ。アフリカのいろいろな国でそれを聞いてきたけど、それでも私は黒人がいい。でも「『黒に簡単になりたい』って言うなよ」「お前がアフリカに生まれたら苦労するぞ」っていうのを散々聞いたから、私は先進国の黒い肌の、いいお家柄の女性に生まれたら、モデルにもなれるし、「黒い肌って美しいだろ」っていうのを堂々と証明できるのかなって(笑)

全然、ネイティブなアフリカ人でもいいと思うんですけど、それだと結局くすぶってしまう恐れがあるというか。すごくかわいい子たちがいっぱいいるのに、ハイブランドのモデルとかにはなれないというのがあるから、どうせ美しい姿に生まれるんだったら、そういう国籍を問われないところで大きく活動したいなって。

■お気に入りのヒーローを見つけてシェアしてほしい
ヒンバ族

――今まで出会ってきた魅力的な少数民族の姿を収めた新刊写真集『HEROS』が4月に発売され、その記念として、全国3都市で写真展を開催されていましたね。会場では写真撮影もOKでしたが、何か意図があったんでしょうか?
ニュースなどでアフリカの様子を見て「アフリカは危ないところ」「飢餓状態の人がいる国」と思っている人が多いですよね。そういうのを見聞きすると、なんだか自分の友達をバカにされたような気がして…。私が写真を撮り始めたのは「アフリカにはこんなに格好いい人たちがいるんだよ」というのを伝えたかったから。写真展に来た人が「アフリカ人ってすごくない?」「格好いいよね!」って写真展に来られなかった周りの人たちに伝えてくれたらいいと思い、写真撮影OKにしました。
――ネットを通じて情報を拡散できる時代だからこその、展示会のあり方ですよね。
皆さん、マサイ族やスリ族など、自分のお気に入りのヒーローを見つけてシェアしてほしいですね。そうすれば、より多くの人にアフリカ人の格好良さを知ってもらえますから。記念として写真を撮っていいという意味ではなく、「撮る=他の人にも伝えてね」というニュアンスを込めた「写真撮影OK」なんです。

ヨシダナギ
1986年生まれ、フォトグラファー。幼少期からアフリカ人へ強烈な憧れを抱き「大きくなったら彼らのような姿になれる」と信じて生きていたが、自分は日本人だという現実を10歳で両親に突きつけられ、挫折。2009年から単身アフリカへ。その後、独学で写真を学ぶ。アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影、発表。その唯一無二の色彩と生き方が評価され、テレビや雑誌などメディアに多数出演。2017年には日経ビジネス誌「次代を創る100人」、雑誌PEN「Pen CREATOR AWARDS」に選出される。同年、講談社出版文化賞「写真賞」を受賞。2018年4月、ヨシダナギBEST作品集『HEROES』を発売。近著には、写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)の他、『ヨシダナギの拾われる力』(CCCメディアハウス)、『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)がある。

ヨシダナギ公式サイト

インタビュー・文=東谷好依
写真=薮内努
企画・編集=msk