困ったときに相談すべきは「上司」ではない?あなたのビジネスに不足しているのは「縄文力」だ、たぶん。

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「縄文時代」のファンがじわじわと増えているのをご存じだろうか。彼らは言う、「今こそ縄文が面白いのだ」と。大げさな…と思っていたら、東京国立博物館では9月2日まで「縄文展」が絶賛開催中。せっかくの機会だから、この夏は縄文の魅力を探ってみる?




今年の夏、創元社から1冊のビジネス書(?)が刊行された。

 
「ドングリの貯蔵庫のことをサーバと呼び、上に載せる石のことを石(セキ)ュリティと呼んでいる。」
「予算が渋そうなクライアントの案件は、水に晒さらして渋みをとる。」
序文にて、「この本を縄文不足の現代のビジネスパーソンに捧げる」とのメッセージが添えられた、『縄文力で生き残れ』は、従来のビジネス書とは一線を画す、「縄文意識高い系」を目指すための教えが満載だ。
まずはこの本を水に晒したほうがいいのでは?と思うほどアクが強い。
なぜ、このような本を出版したのか?

著者であり、大の縄文時代好きであるという望月昭秀さんに話を伺った。
望月昭秀(もちづき・あきひで)
1972年、弥生の遺跡である登呂遺跡で有名な静岡県生まれ。株式会社ニルソンデザイン事務所代表。2015年からフリーペーパー「縄文ZINE」を編集長として発行。著書に『縄文人に相談だ』(国書刊行会)ほか。

 
―縄文とビジネス…。この組み合わせにしたのはなぜですか?
望月 縄文からすごく遠くにあるものって、ビジネスだなと。縄文時代には、貨幣がなかったですし、所有するっていう概念も現代と比べて薄かったと思います。どうせ作るんだったら、なるべく縄文から遠いものの方が面白いマリアージュになると思いました。
―どういう経緯でこの本が生まれたんでしょう。
望月 最初にネタとして「#ビジネス縄文」というハッシュタグが、ツイッター上でちょっとだけ盛り上がりました。それが面白かったので、解説を加えたりして、再編集しています。

だから基本的にはネタ本ではあります。楽しく読んで、最終的には縄文がちょっと好きになってるとか、興味を持ってもらえる、そういうところが目標です。

けれど、この本が全くビジネスに役に立たないかと言われたら、そんなこともないと思うんです。縄文という、いつもと違う角度で物事を考えることは、意外とビジネスの世界でも役に立つんじゃないかと。
―株式会社は160年、縄文は1万年。1万年以上の存続をビジネスに置き換えたら驚異的な数字だというのは、確かにそうですね。
望月 だから、上司より「森」の言うことを聞いたほうがいいかもしれない(笑)上司っていうのは目の前にいますが、「森」は、その後ろにいるお客さんだったりとか、それを取り巻く世界を考えるということ。森にはそういう意味もあるんです。この本から、そこまで深く考える人はいないかもしれないですけど…(笑)

 
「相談する相手が上司ではなく森。」
縄文時代、人々は森をリスペクトしていたと考えられている。
―「縄文は生活あるのみ」という言葉にもハッとしました。
望月 もちろん縄文にも、狩猟の痕跡とかはあります。拡大解釈すれば、現代の戦争だって人類の“仕事”の一部なわけで。でも仕事っていうことが、より生活に密着している時代だったと思いますね。

それに、「誰が誰に対して何した」みたいな固有名詞が、縄文時代には一切出てきません。ヒーローみたいな人がいたとか、大きな事件があったとか、一切分からない。
―後世に何か記録を残すという考えがなかったんでしょうか。
望月 いや、そんなことはないと思います。ただ、口承していたので、途切れちゃったものが多いというか。

でも現代の写真だって、50年後に「確かデータがあったはずだ」って探してみても、規格が全然違ったり、50年前のアプリじゃないと開けなかったり、そんなふうに消えていくものもあるはずです。そういう意味では、あまり変わらないのかもしれない。

それに、神話とか、何かの伝説とか歌に、縄文が隠れているかもしれない。今となってはもう、見分けがつかないけれど。
―気付いていないだけで、縄文は私たちの中に息づいているかもしれないと。
望月 かなり生きていると思いますよ。八百万(やおよろず)の神っていう考え方ってあるじゃないですか。あの発想も縄文からだと思います。日本人の倫理観の根っこって、けっこう縄文にあるんじゃないかと思います。

きっと縄文人は、今よりも言葉を大切にしていたと思うんです。文字がなかった縄文時代は、言葉に対しての考え方というのは今よりも確立していたんじゃないかという気がしますね。
「おばあちゃんの教えとかには、縄文が生きている気がします」と望月さん。
―口で伝えるよりも、文書にしたり、ツイッターに書いたりしたほうが確実に残るんじゃないかと思ってしまいます。
望月 ツイッターは、すごく細分化した口承みたいなことかもしれない。でもやっぱり長く残るのは本当に限られたツイートで。

しかもそれが信頼できるツイートかどうかっていう判断がつきづらいのが現状で。現象は口承に似ているけど、数が多すぎて…。縄文時代の口承は、言葉に絶対的な信頼があったと思うんです。でないと社会が回らない。それに比べて、今ほど言葉も文書も信頼できない時代はない。
―フォロワーの多い人が信用できるのか?というと必ずしもそうではないですしね。しかも、会ったことのないその人と自分の間に、どんな信頼関係があるのかというと…。
望月 ないに等しいですね。言葉って、文字にした時点ですごく情報量が削られてしまう。文字の利点がいっぱいあるという、そのこと自体は否定しませんが。

人類はどんどん新しいイノベーションを手に入れてきましたよね。文字、印刷術、インターネット、というように。手に入れるたびに、新しい概念が確立していく。

いったん手に入れた概念はなかなか忘れられないですし、生活に役立っているので「回帰しよう」とは思いませんが、イノベーションって、それが人間の生理に合った方向かどうかはあんまり関係なく、合理性のある方法っていうことで進んでいきます。

新しい概念の登場によってそがれてしまった部分が、自分にとっては大切だった…という人は、けっこういるんじゃないかと。失ったもののことをたまに考えてもいいんじゃないかというのを、“縄談”にしてまとめたのがこの本です(笑)
―縄文の冗談、“縄談”ですね(笑)望月さんが気に入ってる縄談はどれですか?
望月 個人的には、「休日は変なセーターを着ている」とか。

 
「休日は変なセーターを着ている。」
土器文様のセーター。「実際に作ってみたい」と望月さんは瞳を輝かせる。
 
望月 「環状列席」も好きですね。

 
「環状列席だ。」
縄文時代後期に作られた環状列石(ストーンサークル)からのインスパイア。
 
望月 あとは「PDCKサイクル」とか…

 
「プラン・実行・チェック・貝塚 PDCAサイクルならぬPDCKサイクルを新卒に教える。」
「アクション」ではなく「貝塚」。
―貝塚って、「ゴミ捨て場」じゃないんですよね?
望月 縄文時代に、そもそも「ゴミ」っていう概念があったかどうか分からなくて。それこそ概念問題になってくるんですけど。

ゴミっていう言葉は、汚いものとか、自分たちの生活から切り離したいものっていう意味ですよね。でも縄文時代には、亡くなった人を貝塚に埋葬したり、使い終わった土器とか土偶を貝塚に置いたりもしています。もちろん動物の死骸や貝殻もたくさん出てきます。
―亡くなった人と、食べ終わった貝殻を一緒に置いておくというのは、現代の感覚からは離れていますね。
望月 縄文時代には「送り」っていう考え方があったようなんです。自分たちと、自分たちを取り巻く世界を切り離さない。自分たちが使ったものを貝塚に送ることで、もうひとつのサイクルに入っていける。使い終わったものが森に帰っていくものとしての装置として貝塚があったのだと思います。

学校のペーパーテストだったら、貝塚は「ゴミ捨て場」だって書くのが正解かもしれないですけど、縄文時代はゴミというものの捉え方が今とはずいぶん違ったと思います。
縄文に思いをはせる。
―上野の東京国立博物館で開催されている「縄文展」にも行ったのですが、土器や土偶を眺めていると、不思議に癒やされる気がするのはなぜでしょう。
望月 「縄文ってすごいの?」とかよく聞かれます。すごいかと聞かれると、世界的に見たらそんなにすごくはないですよ。1万年の間にそれほど大きなイノベーションは起きないですし、別の場所ではエジプトでピラミットができたりとか、四大文明ができあがりつつある時代なので。文明という尺度で見ると、縄文を「停滞」と言う人ももちろんいると思うんです。えーと。何を言おうとしたんでしたっけ…
―土器を見て癒やされたことについてです。
望月 ああ、そうでした。僕が縄文についていいなと思うのは「すごいかどうか」ではなくて、その地域の風土によって作られていった、そこに暮らす人にとって「特別」な文化だということなんですね。すごくはないけど特別。同じ日本列島に暮らしている現代の僕たちにとってだって特別だと思うし、それにはどこか通底しているものがあっておかしくないと思いますし。

だからなんとなく、理由は定かではないけれど彼らの作ったもの見て「何か分かるな」と思ったり。彼らの考えることにどこかシンパシーを感じたりもしやすい。
―なるほど。土偶は、どれもあんまり人間の顔に似ていない印象です。人間の顔をどう作るかっていうのもまだ確立されていなかったってことでしょうか。
望月 そんなことはないと思います。おそらく縄文人も、今の私たちと同じように、絵を描くなら顔から描いただろうと思います。

ただ、そもそも縄文人には絵を描くという「壁画の文化」がほとんどなかったようなんですね。縄文土器も、人に似せているというよりかは、人にあらざるものを、あえて作っているという感じがする。

おそらくですが、人間の姿に似せるとか、人間の絵を描くことに禁忌があったんじゃないかと僕は想像しています。今でも人間は「クローンを作っちゃいけない」とか「AI(人工知能)が人間同様の知能を獲得するのは怖い」といった気持ちはどこかにありますよね。絵を描くことで「何かを超えちゃうんじゃないか」っていう気持ちを、縄文人は持っていたんじゃないですかね。これも、現代にも通底する話かもしれないですね。
 
縄文の個性的な造形に惹かれ、そこからハマっていった。
―最初に縄文にハマったのはいつだったんですか。
望月 8年くらい前ですね。単純に、面白いものを作る人たちがいるなと。土器や土偶の造形は世界的に見ても特殊で、実用的でない形も多々ありますし、地方によってバリエーションもいっぱいあるので面白いんですよね。デザインの仕事をしているのでそういう視点から入って、でもそのあとは、仕事と関係なく楽しみ始めちゃって。
―望月さんは、フリーペーパー「縄文ZINE」の編集長でもあります。このZINEの文章や企画もユニークですね。編集、ライティング、デザインの多くを一貫して望月さんが担当していると聞きました。
望月 そうですね。ライターさんに頼んだ企画もありますが、自分で原稿を書くことも多いです。文章は専門じゃないので、プロのライターさんよりは時間がかかってるなとは思います。
「読モ(読者モデル)」ならぬ「ドグモ(土偶のポーズをするモデル)」を紹介するページや、村上春樹テイストの縄文小説など、こちらもアクは強い。
―縄文の文化を紹介する、いたって真面目なフリーペーパーにすることもできたと思うんです。それをなぜ、こういうテイストにしたんでしょうか。
望月 真面目な縄文時代の本は、結構あるんですよ。概説書が本当にたくさんあるし、子供向けの本も割とあったりします。その中で、せっかく自分で作るんだったら、新しいものがいいなと判断しました。

ということは、でも、ターゲットがいないということなんですよ。「これは誰に向けたものだろうか?」っていうのは作っていて思いましたし、最初の号を出したあとに「誰のための雑誌なのか分からない」と言われたりもしました。
― 一応、「都会の縄文人」に向けて作ってるんですよね?
望月 はい。その時点で、既にわけが分からないですよね(笑)
―でも、8号作って「縄文ZINE」の認知度はだいぶん高くなったんじゃないですか。
望月 けっこう高くなりました。特に出版系の仕事をしている人には比較的認知度が高いですね。
―私の周りでも、「縄文が面白い」という声をちらほら聞くようになりました。縄文ブーム、来るんじゃないでしょうか。
望月 タピオカには勝ちたいですね。
―どういうライバル心ですか、それは(笑)
望月 タピオカは1回ブームになって、もう定着してるじゃないですか。それくらいになりたいですね。

そもそも縄文というものにみんなが興味を持っているかというと、そうではないと思うんですよ。当たり前だと思います。

でも面白いことはすごく面白いので、伝えていきたい。タピオカブームだって、最初に誰かが紹介したものが、大きくなって今があるので。
―野望があるんですか。
望月 やっぱり今まで、日本の歴史の中でも、みんな割と縄文を無視してたんですよ。それも悪気があるわけじゃなくて、「縄文を取り上げても、何もないんじゃないか」みたいな。ま、ちょっと舐められていたわけなんです。
―それは資料の少なさによるものですか。
望月 資料はいっぱいあるんですけど、文献がない。
―ああ、そうか、そうですね。
望月 資料はいっぱいあるんですけど、文献がない。

一方で、文献があるってことは、ある程度答え合わせできてしまうってこと。答えがあるっていうのは勉強にはとても大切だと思うんですけど、勉強じゃないんだとしたら、答えはなくても楽しめますよね。想像力を働かせて。

映画とか小説も、結末を詳細に描いてしまうと急に面白くなくなったりする。答えが分からない段階が面白いんです。(事務所のスタッフさんに向かって)ちょっとエアコンの温度下げてもらえる?
―それにしても、今日は本当に暑いですね…。勝手なイメージですが、「縄文」と「夏」ってなんとなく相性が良くないですか?さんさんと降り注ぐ太陽とか。
望月 確かにねえ。でも縄文人も、こんなに暑かったら木陰にいたと思いますよ。この暑さが続いたらまた縄文海進が起きちゃうかもしれませんね。
―今回の企画に、どんなタイトルを付けようかなあと考えていたんです。「夏はミネラル不足と縄文不足にご用心!」みたいなのはどうでしょうか。
望月 いいんじゃないですか。「夏は、縄文もこまめにとったほうがいいですよ」っていう。
 
本気と「縄談」の間をさまよう縄文特集は全5回。今後の更新をお楽しみに。
イラスト/谷端実
写真/阿部ケンヤ
編集・文/武藤寛奈
デザイン/桜庭侑紀

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記事内でもご紹介した書籍『縄文力で生き残れ』(創元社)と『縄文ZINE 第8号』をセットにして、3名様にプレゼントします。

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