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若手にしろ、ベテランにしろ、どの職場にも「問題児」はいるだろう。どう向き合えばいいのか。「プレジデント」(2018年3月5日号)では、9つの場面について、具体的な対処法を識者に聞いた。第8回は「会話はいつもマウンティング」について――。

■根底にあるのは、劣等感と承認欲求

マウンティングは、自分の優位性を見せつける発言や行為です。「ハーバードではこれが常識だった」「新車を買ったけど、住んでいる青山は駐車場が高くて参った」「俺だけが上司から期待されていて、休みがとれない」など、男性の場合はステータス、年収、学歴、能力や実績などを直接的に誇示する傾向があります。

行為の根底にあるのは劣等感です。マウンティングをしなければ興味を持ってもらえないとか、自分を知ってもらうためにはいいところをアピールしたいという承認欲求が強いのです。

女性の場合は「自分が男性や価値ある人に選ばれる存在であることを証明したい」がためにマウンティングを行います。男性を敵に回したくはないため、男性にはわからないように、女性間で陰湿かつ巧妙に行うケースが多いのです。ただ、自分が特別な存在である証明さえできればそこで満足します。

厄介なのは男性で、相手を排除するまで追い込んでしまうこともあります。

そもそも、男性はサル山でオス同士がボスの座を狙って戦うのと同じで、自分自身が勝ち残るために競争・闘争せざるをえない生き物です。いつ自分が排除されるかわからないという「恐れ」があるために、相手の仕事ぶりや人格すべてを否定するほどの強烈なマウンティングを仕掛けてしまうのです。

あからさまなマウンティングの問題を放置すると、マウンティングする側だけでなく、される側やそれを傍観しているリーダーの人望をも著しく下げることがあります。あなたがチームを束ねる立場なら、対策が必要です。まずやることは、マウンティングをする部下も含めて、すべての部下の業務上の評価を正当に行うことです。

そのうえで、あなたの評価基準を公表します。例えば、「個人の成績だけでなく、チーム内で連携をとっているか、リーダーに報告、連絡、相談をしているかも評価基準にしている」といった具合です。マウンティングする人は、他人から非難されることを極端に嫌います。そのために1人で勝手に判断して仕事を進めてしまうタイプが多いので、それを予防するのです。

次に、マウンティングをする部下を呼び、一対一で話を聞きます。あなたが心を開いてくれていることがわかれば、部下が抱える「恐れ」が軽減し、周囲への攻撃は減ってくるはずです。

このとき、部下があなたに対してもマウンティングを仕掛けてきたら、「俺はおまえのことをわかっているからいいけど、ほかの人にもそういう言い方をしていると、誤解を招くよ」と、この機会に伝えましょう。決して無関心を装わず、あなたが相談役であり、味方であるということを体現しながら、組織内のルールは守るように指導することを忘れないでください。

一方、あなたが単なる同僚の場合は、マウンティングする同僚を過剰に意識すると、相手のマウンティングは増長します。その場の感情だけで行動せず、客観的に接してください。

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▼対処法
評価基準を公表し、組織のルールを守るように指導

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浅野寿和
神戸メンタルサービス所属の心理トレーナー
カウンセリングサービス所属の人気心理カウンセラー、講師。年間400件以上の面談カウンセリングやセミナー等を担当。
 

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(神戸メンタルサービス所属の心理トレーナー 浅野 寿和 構成=干川美奈子 写真=PIXTA)