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photo:@masamaxy

もくじ

ー 空冷、ふつうに乗れる?
ー 「蒸し風呂」はいやだ
ー 100万あれば大丈夫?!
ー 壊れても、笑えるか

空冷、ふつうに乗れる?

やっぱり空冷ポルシェに惹かれていて
笹本編集長の影響で930がとりわけ良く
しかし空冷ポルシェの中古車相場に涙し、
友人I君が993を買って落ち着かない気持ち
というところまで書いた。

話が散らかっているけれど
これがここ数日間で起こっていることだから
仕方がない。記録に残すだけでも必死である。

それはさておき、ひとつ気になることがある。

空冷ポルシェは
ふつうに乗ることができるのだろうか。
つまり、維持費や修理代が高い、のか。

あとは「クーラーが効くか」とか
そういった具体的なギモンがいくつかある。

「何を甘いことを言っているんだ」
なんて、どうか言わないでください。

生まれたときからクルマにはクーラーがあり
ときどき年長者から聞く
「昔はクーラーがなくて、
 暑かったけれどそれでも何とかなった」
というお話さえ、
どこか違う惑星の話のように聞こえる世代だ。

というかそもそも現代と平均気温だって違う。
それに日中だって、毎日ふつうに乗りたい。
現に編集長から借りたSCでは熱中症になったし……。

大変なのは、それだけではなさそうだ。
930を買うと(ま、あくまで妄想の話だけど)
ほかにも想像できない苦労があるのではないか。

考えれば考えるほど、怖くなってきた。

困ったら「シンリュウ」、だ。
箭内(やない)さんを訪ねた。

「蒸し風呂」はいやだ

まず、クーラーについて。
そもそも、僕がほしい930型ポルシェは
室内を冷たくすることができるのだろうか?

「どの程度を『効く』というのか
 むずかしいところだけれど
 冷たい風は出てくることはたしか」と箭内さん。

僕が笹本編集長に貸してもらった930 SCが
なぜ温風しか出てこなかったかというと
コンプレッサーが焼き付いているかもしれない
とのことだった。

「そりゃあね、笹本さんみたいに
 ほかに色々と乗るクルマがある場合は
 天候などの状況が整ったときに乗ればいいけど
 上野くんは暑い日も乗らないといけないからね
 やっぱり冷たい風が出たほうがいいよ」

(ばかもん! 気合いだ!
 とか言われなくてよかった。
 もちろん温厚な箭内さんが言うわけないけど…)

「それにやっぱり、できる限り長い距離乗って
 空冷ポルシェを体で理解してほしいしね」

買えるかどうかわからないけれど
(というか、おそらくムリだけど)
そう言ってもらえるだけでもうれしい。

具体的な整備方法についても聞いてみた。
オーバーホールという手もあるが、
やってくれるところはほとんどないとのこと。

そのかわりに、
ロータリーのコンプレッサーを探してきて
オイルを入れ替えて使うといった手があるそうだ。
金額はまちまち。どういうことかというと
コンプレッサー自体の購入金額によるとのことだ。

またコンデンサーファンのフロントが
仕事をしていない可能性があったり、
リキッドタンクを交換する必要があったり……
など、金額が上下する要因がいくつかあるそうだ。

シンリュウに入庫している930を拝見したところ、
たしかに日常的に距離を重ねるひとは皆、
それぞれの対策が施してあることがわかった。
(930だけを家族4人使っている方もいた)

ほかにも壊れやすいところはあるのだろうか?
恐る恐る聞いてみることにした。

100万あれば大丈夫?!

930 SCの場合は、
ウォームアップレギュレーターと
フューエルアキュムレーターがキモになるという。
ちなみに前者は個体差があるので、
どんな状況でもマルっと受け入れるしかない。

また、
クラッチ操作に慣れが必要だったことについては
レリーズフォークを見直せばよいとのことだった。
「コクっ」とミートするのが
「スー」っとつながるようになるのだそう。

もうひとつ気になること。

「どれくらい長く乗れるものか?」
という点。手入れすれば、永遠に乗れるもの?

箭内さんいわく、きちんと整備すれば
「ぜんっぜん大丈夫」とのことであった。
特に930はボディが強いのだそうだ。

強いというのはどういうことかというと、
・使っている素材が多岐に渡らないこと
・剛性が優れていること
が理由になっているのだそうだ。

「ただし事故はしないほうがいいよ」と箭内さん。
テールライトのハウジングが少なくなっているそうだ。

あとは俗に言うナロー、SC、ターボの場合、
燃料ポンプとCDIに弱点があるとのことであった。
CDIはひとことでいうと点火装置。

……なんだかお金がかかりそうだ。

気になる整備費用については
さらりと「100万円あれば十分だね」とのこと。

「……」

壊れても、笑えるか

僕が言葉を失っていると、
「ははは!
 もちろん脅かすわけではないよ(笑)
 上野君みたいな珍しいひとにこそ
 若いうちから、空冷ポルシェ乗って欲しい。
 100万円あればすごい余裕があるという意味。
 ひと通りの整備が済むまでに
 ちょくちょくお金がでていることは
 ちゃんと理解しておいてほしいというわけさ」

「ひととおり整備が終われば、
 エンジンのオーバーホールをするひともいるね
 オーバーホールといったって色々あるんだけど
 大掛かりな作業であることに変わりがないから
 どのみちエンジンの調子には注意を払ってね」

「いずれにしても、お金がカツカツだと
 整備にだせず乗れない時期がでてしまうから
 たとえばデートの予算が1万だったなら
 それを6000円に抑えてキープしておく
 といった細かい日々の努力が必要だね」

デートについて、そもそも僕には
彼女がいないので問題なさそうだ。
いや、そういう問題ではないか……。

「まぁ、古いクルマであることには違いないから
 酸いも甘いも愉しんでほしいな。
 お金というよりもココ」といって胸を叩いた。

「クルマが壊れても、笑いながら
 それを肴にお酒が飲めるくらいの気持ちでね」
とのことであった。

シンリュウに行く前は、撃沈するかと思っていたが
・少しずつでもお金をためておく
・優先順位を決めてコツコツ整備する
・930は特に頑丈
という3つを、プロから教えてもらえて
すこしポジティブな気持ちになれた。

※今回も最後までご覧になってくださり、
 ありがとうございます。

 そうこうしているうちに、
 993を買ったI君が、
 どうやら悲鳴を上げています。

 今後とも、inquiry@autocar-japan.com まで、
 皆さまの声をお聞かせください。
 もちろん、なんでもないメールだって
 お待ちしております。