タイでは電子タバコ利用者の逮捕が後を絶たない(写真:タイ王国観光警察ホームページより)

IQOS(アイコス)を吸うと逮捕される国があるのをご存じですか?
ずばり、その国は日本人の旅行先としても人気のタイです。

日本人がIQOS使用で逮捕されたと7月16日、タイでウェブ制作を行うYINDEEDのオウンドメディアで伝えられて話題を呼んでいます。

以前から、電子タバコ「VAPE(ベイプ)」を使用した観光客の逮捕や、タイ人の逮捕は報じられていましたが、日本人が逮捕されたのは初めて。このニュースは拡散され、ネットで話題となりました。

タイ国政府観光庁のオフィシャルページでは昨年10月、“重要なお知らせ”として、「日本ではあまり知られていませんが、タイでは電子タバコ禁止条例がタイ商務省から2014年12月27日より発令されています。アイコスをはじめ、加熱式のタバコも含まれます。違反した場合、最高で10年の懲役、または50万バーツ(約169万円)の罰金のいずれかが科せられます。商売目的でなく、個人的に所持・利用していた場合でも罰せられますのでタイへ渡航される場合は十分にご注意ください」と警鐘を鳴らしています。

また今年5月には、在東京タイ王国大使館が同様の注意喚起を行っています。

数年前までは露店で販売されていた

ほんの数年前までは、タイの露店で各種VAPEが販売されており、主にマレーシア産のニコチン入りリキッドを至るところで目にすることができました。

規制後もロードサイドのバーなどで、VAPEで爆煙を吐き出す外国人ツーリストの姿が散見されていましたが、どうやら近年取り締まりが特に厳しくなったようです。

YINDEEDを運営する明石直哉さんによると、所持品検査などにより警察署に連行される日本人は連日後を絶たないとのこと。

実は、アジアの各国でも同様の厳しい規制が進んでおり、たとえばシンガポールでは同様の規制が今年2月より始まり、最大16万3000シンガポールドルの罰金が課せられます。

また、台湾では加熱式タバコ、電子タバコ双方の持ち込みが禁止のほか煙害防止法が施行され、一般人からの通報も受け付ける厳しい取り締まりが行われています。

一方、VAPE先進国で知られる、マレーシアやフィリピンでは現状VAPEは禁止されておらず、フィリピンの「禁煙法(国内の喫煙に関する大統領令)」でも電子タバコも加熱式タバコもその中に含まれていません。

ただし、今後規制対象が変更されることもありうるので渡航前には最新情報の調査が必要でしょう。

なぜIQOSがダメなのか?

少し詳しい方は「電子タバコ(VAPE)」の規制なのになんで「加熱式タバコ(ヴェポライザー)」のIQOSが規制されるんだ?と思うかも知れません。

電子タバコ専門サイト関係者によると、この規制は「燃焼(火)以外による、加熱等で蒸発した成分を吸入する装置」すべてに対して行われているそうです、しかも手荷物検査等をされることもあり、その際に「これは加熱式タバコで電子タバコではない」と主張してもまず聞き入れられないだろうとのこと。

VAPEは、MODと呼ばれる電力供給源とアトマイザーと呼ばれる蒸気発生部分を接続し、アトマイザー内のコットンに含まれたリキッドと呼ばれるグリセリンと香料でできた液体を蒸発させ、発生した蒸気を吸入する装置です。

日本国内ではニコチン入りのリキッドの販売は禁止されていますが、マレーシアやフィリピンをはじめニコチン入りのリキッドが販売されている地域は少なくなく、タバコの代用として吸入する人もいます。

日本たばこが販売する「プルーム・テック」は構造上「VAPE」に該当します。

一方、加熱式タバコは、ヴェポライザーと呼ばれて流通しているもので、タバコの葉を熱して気化した成分を吸入するタイプの喫煙具です。

成分は200℃前後で気化するのですが、タバコ葉を燃やすわけではないので、タバコ葉に含まれているわずかな水分しか蒸気とはならず、多くの加熱式タバコにはタバコ葉に“リキッド”を添加して煙を発生させています。


タイで没収された電子タバコとリキッド(写真:タイ王国観光警察ホームページより)

一般的にプルーム・テックのようなVAPE方式のものは「電子タバコ」と呼ばれ、IQOSのようなものは加熱式タバコまたはヴェポライザーと呼ばれて区別されています。

これらを根拠に、なぜ電子タバコの取り締まりでIQOSが対象になるのか疑問に思う方もいるでしょう。

タイが定める「電子タバコ」とは?

さて、それでは「タイ王国商務省告示 水たばこ・水たばこ用煙草の葉・植物及び電子タバコをタイ王国への輸入禁止品」を見てみましょう。

「電子タバコ」とは、輸出入統計品目番号 8543.70.90 と定められた電動のタバコ型水蒸気吸入器具で、タバコ煙のような水蒸気を発生させて吸入する器具をいう。

実に幅広い表現で「電子タバコ」を定義付けています。

しかも、

水タバコ及び電子タバコ吸入時、器具内で煙又は水蒸気を発生させる煙草の葉、植物、発酵植物、植物エキス等をタイ王国への輸入禁止品と定める。

とも定めておりますので、IQOS用のヒートスティックも輸入禁止品であるのは間違いないと言えるでしょう。

タイ旅行時はおとなしく禁煙するか、免税店で買ったタバコを吸うか、おどろおどろしい健康被害の写真が貼られた現地購入のタバコを吸うしかないようです。