ワールドカップ開催にともない、約2カ月間中断されていたJ1がいよいよ再開。中断明け初戦となった第16節では、湘南ベルマーレとサガン鳥栖が対戦し、1-1で引き分けた。

 中断前の時点で12位の湘南と、17位の鳥栖の対戦は、どちらにとっても後半戦の巻き返しへ向けて勢いをつけたかったところだろう。だが、両チームが互角に攻め合いながら、同じように決め手を欠いた試合としては、結果は「妥当な引き分け」(湘南・者貴裁〈チョウ・キジェ〉監督)である。

 しかしながら、この試合の取材にやってきた報道陣の多くにとって、最大の関心事は試合結果よりも、おそらく試合に出場していなかったひとりの選手だったに違いない。

 いうまでもなく、夏の移籍で鳥栖に加入した元スペイン代表ストライカー、FWフェルナンド・トーレスである。


F・トーレスは日本でどんなプレーを見せてくれるのだろうか

 今やトーレスの存在は、鳥栖だけにとどまらず、Jリーグ最大の関心事といってもいい。ヴィッセル神戸入りが決まったMFアンドレス・イニエスタとの相乗効果もあり、Jリーグは現在、ちょっとした”スペイン熱”に浮かされている。試合後の記者会見でも、鳥栖のマッシモ・フィッカデンティ監督に対する質問は、すべてトーレスに関するものだった。

 イタリア人指揮官は「今年頭からケガ人が多い。特にアタッカーにケガ人が多く、苦しいシーズンになっている」と現状について語ったうえで、新たに加わる世界的ストライカーへの期待を口にした。

「トーレスは、ヨーロッパでも世界でも、あらゆるタイトルを獲ってきた選手だ。彼が加わることで、戦術もレベルも大きく変わってくると思う。チームにパワーを与え、他の選手のモチベーションにもなっている」

 実際、キャプテンのDF吉田豊が「(トーレスが)来たことで雰囲気がよくなった」と語るように、トーレスがチームに合流してまだ数日ながら、すでに”トーレス効果”は表れている。吉田は「やっぱりオーラがある」と冗談めかして話しつつも、「すごく真面目で、走りのメニューも率先してやっている」と、一流選手の姿勢に感心しきりの様子だ。

 ポジションを争うことになるFW田川亨介も、「(トーレスの合流初日に)アップのときからずっと見てしまった」と苦笑交じりに語り、「ライバルでもあるが、まずは手本にしたい。何年後かに超えられるよう、いいところを盗む、ものにする、ということを考えている」と、トーレスの加入を歓迎する。

 では、トーレスの加入は鳥栖のサッカーにどんな変化をもたらすのだろうか。

「まだ1日しか(一緒に)やっていないし、それもアップ程度なので、完全にイメージでしかないが」

 そう前置きしたうえで、トーレス加入後のサッカーについて語るのは、攻撃の組み立て役を担うMF原川力である。

「(DFラインの)裏へ抜け出してシュートというイメージはあるので、スピードを生かせるような展開のほうが生きると思う。僕は中盤なので連係が大事になる。時間は必要だと思うが、意識して(トーレスのよさや要求を)探りながらやっていきたい」

 サイドバックの吉田もまた、「裏へのスピードがあるので、まずトーレスを見てクロスを上げたい」と語り、「前線でのキープ力もあるので、3人目の動きを生かすことでもできるし、攻撃のバリエーションは増えると思う」と期待を込める。

 トーレスの1日も早い出場、そしてゴールが待たれるところだ。

 選手登録の規定により、この試合には出場できなかったトーレスだが、7月22日に行なわれるJ1第17節から出場可能になる。フィッカデンティ監督は「まだ4日くらいあるので、コンディションを評価して、どれくらいの時間で、どう使うかを考える」としながらも、「確実に(先発11人+控え7人の)18人には入ってくる」と明言した。途中出場も含めれば、次節ベガルタ仙台戦での出場の可能性はかなり高そうだ。

 とはいえ、日本の夏は高温に加えて多湿でもあり、ヨーロッパの夏とは明らかに異質なものだ。サッカー選手としてのトーレスの能力が、Jリーグでは突出したものであることは間違いないとしても、彼が適応しなければいけないことは、おそらくピッチ内外を問わず少なくない。

 早く彼のプレーを見たい気もするが、その一方で、焦らずしっかりと準備を整えてからピッチに立ってほしい気もするというのが、正直なところだ。もちろん、J2降格の危機に立たされている鳥栖にとってみれば、あまり悠長なことは言っていられないのだろうが。

 とにもかくにも、フェルナンド・トーレスのJリーグ・デビューはまもなくである。

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