ブルガリアの首都ソフィア郊外の小さな村ツルクバで、スクラッチくじをこする96歳のストヤン・ストイメノフさん(2018年5月28日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】ブルガリアの首都ソフィア郊外の小さな村ツルクバ(Tsurkva)で、96歳のストヤン・ストイメノフさんさんは硬貨を持って前かがみになり、スクラッチくじをこすっている。

「『また勝つさ』と自分に言い聞かせる。可能性はあまり高くはないが、どうなるか誰にもわからないだろう?」ストイメノフさんはそう言ってウインクした。

 ストイメノフさんは、欧州連合(EU)最貧国のブルガリアで近年、スクラッチくじに取りつかれた多数の人のうちの一人だ。一部の人々の間では現在、依存症がまん延することの危険性に対する警告の声が高まっている。

 今年2月、ストイメノフさんは、自身の年金25か月分に相当する5000レフ(約33万円)の賞金を手にした。賞金は、子や孫、ひ孫たちに分け与えた。

 5月6日のストイメノフさんの96歳の誕生日には、彼らはそのお礼にとさらなるスクラッチくじを贈った。

 ストイメノフさんが賞金を獲得した小さなカフェでは、テーブル席が仲間のギャンブラーたちで埋め尽くされている。

 反対派からは、スクラッチくじ賭博の氾濫に法律が追いついておらず、年齢制限がないため子どもでも購入できる状態になっていると批判が出ている。

 1日あたりの昼食代2レフ(約130円)でチケット1枚を買っていたデニスラフ君(10)は、「時々チケットを買っている。でも僕のクラスには、スクラッチばかりやっている男子がいる」と語った。

 2016年7月、ある専門家が政府機関からの依頼で行った、EU内で最も貧しいブルガリア北西部を対象とした調査によると、高校生の10%が毎日スクラッチくじを購入しており、週に1度購入する高校生も11%にのぼった。

■「まん延」に対する警鐘

 ブルガリアの経済週刊誌「Capital」の推計によると、人口700万人足らずの同国では2017年に1億枚のスクラッチくじが販売された。

 また4月に実施されたギャラップ(Gallup)社の世論調査によると、何らかの形でギャンブルを行っているブルガリア人は推定57%に上ることが明らかになった。専門家らは、ブルガリアは地中海の島国マルタに次いでEUで2番目に大きな賭博産業を擁すると指摘している。

 賭博事業は利益が大きいという特徴があるのに加えて、同業界がタバコ関連業界よりも低い税率を享受しているという事実もある。ブルガリアは、EU加盟国の中で唯一、宝くじ事業を行う企業が利益の一部を慈善活動に寄付することが法律で義務化されていない。

 こうした現象を食い止めるため、一部の政治家からは対策を求める声が上がっている。

 与党「欧州発展のためのブルガリア市民(GERB)」のツベタン・ツベタノフ(Tsvetan Tsvetanov)副党首は、スクラッチくじ依存が「若者や社会的地位の低い人々の間でまん延」すると警告している。

 現行の法律に見られるずれは、賭博の宣伝についてのルールでも明らかだ。

 宝くじやスクラッチくじに関しては、厳密にはテレビコマーシャルが禁止されているが、くじに当たった人が最高20万レフ(約1300万円)の賞金を手に熱狂したり、いかにして毎朝コーヒーと一緒にくじを買い続けたかを語ったりするインタビューをテレビ局が放送することは禁じられていない。

 バレリ・シメオノフ(Valeri Simeonov)副首相は今年に入り、賭博に関する法律の改正を提案し、現在、議会で審議されている。

 改正案では、宝くじ抽選会や賞品、勝者などをテレビで紹介することを禁じる他、未成年者に対するスクラッチくじの販売禁止や一部売店に対する販売規制などが盛り込まれている。

■規制強化でスポーツが衰退?

 しかし賭博法の厳格化に対する猛烈な反発も起きている。

 ブルガリア事業者連盟KRIBは、シメオノフ氏の改正案はメディアやスポーツクラブの他、ギャンブル業界で働く17万7000人に対しても「深刻な結果」をもたらすとの懸念を表明。

 ブルガリアの調査会社「Nielsen Admosphere」のデータによると、2017年の同国テレビの最大の広告主は賭博企業だった。

 またブルガリアサッカー協会も、複数のクラブがインターネット上の賭博サイトから後援金の多くを得ている事実を鑑み、断固反対の立場を表明している。同国を代表するサッカー選手で、こうしたサイトの広告にも起用されているフリスト・ストイチコフ(Hristo Stoichkov)氏はこれまでに、規制強化は「スポーツを殺す」として同業界を擁護する発言を行っている。
【翻訳編集】AFPBB News