左利きの右SBとして新たな一面を見せた小川。新たなチャレンジが飛躍のきっかけになるか。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ16節]柏0-1FC東京/7月18日/柏
 
 FC東京は再開初戦となるJJ1リーグ16節で柏を1-0で撃破し、リーグ戦8試合無敗を達成した。
 
 この試合、FC東京は柏から期限付き移籍中のディエゴ・オリベイラを契約上の理由で起用できず、加えて負傷者も多発。先発メンバーは大幅に変わり、システムも往来の4-4-2ではなく、4-2-3-1を採用した。それでも、苦しい台所事情を感じさせずに勝ち切った試合運びはさすがの一言だ。
 
 長谷川健太監督も柏戦の結果に、「固定の11人、12人では試合に勝てないと思いますから、いろんな意味でフレッシュな選手が勝利に貢献してくれたことが今後の力になる」と手応え十分。選手層の底上げが進んでいるチーム状況に充実の表情を見せた。
 
 普段とは異なる布陣で挑んだ柏戦で多くの選手が上々のパフォーマンスを披露したなかで、とりわけ目を惹いた選手がいる。右SBで起用された21歳の小川諒也だ。
 この起用には誰もが驚かされたことだろう。理由は小川が左利きだからだ。
 
 今でこそ欧州では左利きの選手を右SBに置くケースが増えてきたが、まだJリーグではあまり見られない。昨季、東京Vでレフティーの安在和樹(鳥栖)が右ウイングバックを担う機会を得ていたぐらいで、主流とは呼べない起用法だ。
 
 今回、イレギュラーな起用を選択した長谷川監督。そこに関しては、「単純に一番信頼できる選手。右利きが左SBをやる時代なので、逆もできるのかと。ほかにチョイスも少なかったので、無理やり『いけ』とやらせました」という。
 チーム事情から逆サイドに置かざるえなかったなかで、小川の右SB起用は新たな可能性を示した。攻撃面では空いたスペースを巧みに使い、中央へ切り込んでチャンスを創出。逆サイドからのクロスにも左足で合わせるなど、想像以上のパフォーマンスを見せた。
 
 そして、何より機能していたのは守備面。対面する相手はJ屈指のアタッカーであるクリスティアーノだったが、ほぼ仕事をさせなかった。
 小川は縦を切りながら、クリスティアーノを中央に誘導すると、すかさず、左足を伸ばして危険な場面を未然に阻止した。「相手が中に行ったときに(内側にある)左足でブロックできるので、やりづらさはなかった。むしろ、やりやすかったかもしれない」と、小川も新たなポジションに伸びシロを感じたようだ。
 
 もともと、流経大柏高時代は最前線から最終ラインまで難なくこなすポリバレントプレーヤーだった。同校の本田裕一郎監督から試合前に突然、「今日はFWで使うぞ」と言われても動じずに対応してきた経験値もある。そうした過去を思い返せば、右SB起用に対応した事実に驚きはない。ただ、前述のように新たな一面を発見できたのは、本人にとっても意外だったのだろう。
 
 レフティーを右SB起用する奇策。固定概念を覆すコンバートが、小川をさらなる高みに導くかもしれない。

取材・文●松尾祐希(サッカーダイジェストWeb編集部)