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■ベッキー、山尾志桜里衆院議員、安倍昭恵総理夫人

ここ数年、日本ではSNSでの発言が猛批判を浴びる「炎上」という言葉がすっかり定着しました。これだけ一般化したのは、日本は、よくも悪くも「空気を読む」ことが大切な国だからだと考えられます。

つまり、多くの人が安心に思っているときに不安を煽ったり、不安を抱えているときに安心だと言い放ったり。たとえ言っていることは正論であろうとも、そんな「空気を読まない」発言をしたときに、炎上は起こりやすいのです。社会には守るべき「文脈」があって、多数派の文脈を乱してしまったときに炎上が起こると言えるでしょう。

炎上を大きくしやすい要素が、「ギャップ」です。たとえば週刊誌で不倫が報じられたタレントのベッキーさんや、不倫疑惑があった山尾志桜里衆院議員、そして森友問題で揺れる安倍昭恵総理夫人。ここ最近、炎上を経験した人たちを見ると、ベッキーさんはもともと爽やかで好感度が高かった。山尾議員は正義を掲げて与党を追及する立場だった。昭恵夫人は「私人」とは言え、総理大臣夫人という立場にあります。

本来は個々人にはいろいろな側面があるのでしょうが、このような一面の「イメージ」を大衆に抱かれている人が、こと問題になる言動をすると、一気に炎上してしまうのです。「空気を読まず」に、相手の気分を害してしまった人は攻撃の対象になる。それを彼女たちはよく表しているでしょう。

空気や文脈、イメージ、気分という、抽象的だけれど多くの人が共有しているものと相性がよかったのが匿名のネットの世界です。SNSで炎上した奥さん、または旦那さんは、一昔前はご近所のルールやマナーを守れずに揉めて、ちょっとした喧嘩になっただけで済んだかもしれないのに、ネットに書き込んでしまったせいで、匿名の大衆から攻撃され炎上してしまう。今日のネット社会では、誰にでも起こることです。

■炎上コメントをしがちな妻の「欲求不満」

では、炎上しがちな妻にはどう対応すればいいのでしょうか。このような場面において、夫は物事を論理的に考えて解決しようとするのに対し、妻は感情的な面を大切にします。夫が「どうしてそんな理屈に合わないことをするの?」と訊ねても効果はありません。妻が前のめりの言動をとってしまったのは、「私は正しいのに、認められない!」という満たされない承認欲求があったせいだと考えられます。抑えられていた承認欲求がはじけてしまって、空気を読まない正論をぶったり、批判される行動をとったりしてしまった。

つまり、この承認欲求を解消してあげればいいのです。もし嫁姑問題や教育問題などがあるなら解決すべきです。もっと言えば、夫婦仲がよければ、欲求は満たされていたはずで、炎上は起こらなかったでしょう。

満たされない欲求が背景にある炎上は、感情に突き動かされているので、その不満を受容してあげなければいけません。辛さや悲しみに寄り添い「その気持ち、わかるよ」と声をかける。相手が「わかってもらえた」と思えるよう、夫婦の会話を増やすことが大切です。

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勝 久寿
精神科医
人形町メンタルクリニック院長。著書に『「いつもの不安」を解消するためのお守りノート』がある。
 

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(精神科医 勝 久寿 構成=伊藤達也 写真=iStock.com)