おカネが増えない素人投資家は3つの「NG投資信託」を選んでいる可能性がある(写真:node/PIXTA)

私たちファイナンシャル・プランナーの事務所には、さまざまなおカネの相談が舞い込んできますが、投資に関する相談で多いのが「金融機関のオススメのままに商品を買ったら失敗してしまった……」というものです。

筆者は最近、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(少額投資非課税制度)に関するセミナーに登壇したり、相談を受けたりすることが多いのですが、どんな投資をするか選択するにあたって、共通しているのが「投資信託」を選ぶという点です。

投資信託の選択を間違えると「お荷物」に

個人で購入できる投資信託は現在約6000本あります。購入する商品を間違えると、資産をつくるどころか、むしろお荷物になります。今回は、投資信託の購入で陥りがちな「3つの罠(わな)」についてお話しします。早速1つずつ見ていきましょう。

罠1:人気ランキング上位にある投資信託を買う

40歳独身A子さん(私立中学校教員、年収600万円)のケースです。

A子さんは、私立中学校の教師をしており、性格はまじめ。独身ということもあり、将来は老人ホームに入る計画を立てており、毎月きちんと貯蓄をしてきました。その結果、普通預金に700万円、定期預金に800万円と合計1500万円。模範生のような貯蓄額です。

ここまで貯まっていたからでしょうか、預金先の銀行から投資信託購入の勧誘を受けたのでした。A子さんは「人気ランキングの上位に入っているし、窓口の人のオススメなら安心」と、「テーマ型」「毎月分配型」「通貨選択型」など複数の投資信託などに合計250万円を支払って購入。また、これとは別にインデックス型投資信託にも50万円購入したとのこと。すると、期待したほどおカネは増えず、購入した商品の中には大きく元本割れをするものも出てきました。

そこでA子さんはかなり不安になり、筆者の元に相談にきたというわけです。「勧められた商品は、売れ筋の上位ランキングに入っている商品ばかりでした。こんなに売れているなら良い商品なのだろうという安心感もありました」と言います。

筆者がある銀行に行ったとき、壁に貼りだされている人気ランキングを見て、目を疑いました。そこには、まさにA子さんが購入した「投資家にとって不利な商品」が並んでいたからです。「毎月分配型」は毎月銀行の利息のようにおカネが分配されますが投資家から集めた元本を取り崩しているものも少なくありません。また「テーマ型」は旬を過ぎたら利益を出しづらく長期投資には向きません。さらに「通貨選択型」は商品内容が複雑でリスクも大きいのが特徴です。

しかも、投信には手数料がつきものです。投信には購入時に支払う「販売手数料」や、投資信託を持っている間ずっと支払う「信託報酬」がありますが「毎月分配型」「テーマ型」「通貨選択型」などの商品は共通して手数料が高く、利益の出しにくいものばかりなのです。

「人気ランキング」とは金融機関が売りたい商品一覧

ここで重要な視点は、「なぜその商品をオススメするのか」です。つまり、売り手側の視点に立つこと。高い手数料は、売り手が儲かるという事実を認識しなければなりません。人気ランキングは、投資家の人気を反映したものではなく「金融機関が売りたい商品の一覧にほぼ近い」といっていいでしょう。

そもそもリスクをどれくらい取れるのかは、人によって違うはずです。それなのに人気ランキングというものが大きく張り出されるのも不思議ですよね。そこにはやはり「人気があるなら大丈夫(買いたい)」という気にさせようとする金融機関の意図を感じます。

もちろん、内容が良くて多数の投資家から支持される投資信託もあります。しかし、そうした投資信託は、書籍やインターネットで探したほうが良いかもしれません。ネットの場合は有力メディアだけでなく、個人のブログも1つの手です。

投資信託の世界では、個人投資家の目線でつねに考え情報を集め、ブログを書いている「投信ブロガー」の人たちの存在感が大きくなってきています。彼らは投資信託をつねに研究していて、書籍などを出版している人も多く、プロからも一目おかれている人もいます。玉石混交ですが、信頼のおけるブロガーを見つけることができれば、非常に有益な情報を得ることができます。

2つめの罠は、前出のA子さんも買ってしまった商品の中に隠れていました。別の方の例をあげてみましょう。

罠2:市場で話題の「テーマ型投資信託」を買う

32歳独身B男さん(IT会社勤務、年収450万円)のケースです。

数年前、B男さんはあるメーカーで営業職についていましたが、なかなか思うように給料が上がらず副業でもしようかと考えていたそうです。そんなとき、証券会社に勤めている友人から「良い投資商品があるから話を聞いてみないか」との連絡があり、早速聞いてみることに。友人はBRICSをテーマにした投資信託を勧めてきました。ブラジル、ロシア、インド、中国などの新興国へおカネを向ける投資信託は確かにはやっていました。

B男さんも、BRICSは今後成長が期待できると思い、当時の貯蓄額200万円のうち半分の100万円をこのテーマ型投資信託に投資。購入して1年くらいは利益が出ていたのですが、その後伸び悩み、数年経って「繰り上げ償還」(約款に従って期日を待たずに運用を終了、償還すること)になってしまったときには元本割れになっていたそうです。この手痛い経験から「今度はきちんとしたアドバイスを受けよう」と、相談にやってきたのです。

「テーマ型」投信は好成績が続きにくい

B男さんが購入した「テーマ型」とは、世の中で話題になっているテーマに関連する銘柄に的を絞って、投資する投資信託のことです。CSR(社会的責任)投資、バイオ、再生可能エネルギー、再生医療、ロボット、AI、ヘルスケア、FinTech(フィンテック)など、旬なテーマに関連している銘柄に絞ったテーマ型がたくさんあります。今後も新たなテーマが出てくれば増えていくことでしょう。

なお、テーマ型は、テーマに沿った銘柄を選別するアクティブファンドがほとんどなので、ファンドマネジャーの銘柄選定にかかる調査や分析などの負担により、手数料が高いものばかりです。手数料が高くても高いリターンが実現できるならば、良いのかもしれません。しかし、現状ではそうした高リターン商品は多いとは言えず、もしあったとしても、好成績が長く続きにくいのです。

なぜ好成績が長く続きにくいのかですが、世間で注目されるテーマは時間と共に変化し、あっという間に忘れられるから、というのが一番の要因でしょう。仮に注目度が低くなっても、投資している企業の業績がそのテーマに沿って長期的に伸びるのなら株価も上昇すると考えられるので問題はありません。しかし注目度が低くなるだけでなく、業績が伸びず株価も上昇しなければ、テーマ型の運用成績も悪化するという流れです。

また、B男さんのケースのように、テーマが忘れ去られると、ファンドへの資金流入が減るため純資産総額が小さくなり、その結果、運用継続が困難になって繰り上げ償還されることもあります。テーマ型はコストが高い上にリスクが大きく、とてもオススメできる投資信託ではありませんが、どうしても投資したいという方は、長期的にそのテーマが存続しうるのかを検討のうえで、「このタイプの投信は旬の時期が続かないので短期的に投資する」と割り切って行うのが良いでしょう。

最後に3つめの罠についてお話ししましょう。

罠3:定期預金とセットの投資信託を買う

27歳独身C子さん(メーカー勤務、年収350万円)のケースで見てみます。

C子さんの年収は多いとは言えず、旅行が趣味でおカネもそこそこかけるタイプ。しかし自宅暮らしなので順調に貯蓄は増え、貯蓄額は500万円になっていました。

期間限定の高金利預金につられてはいけない

預貯金におカネを預けていてもまったく増えないし、かといって投資をするのは怖いし……と思っていたところ、会社の近所にある銀行で「投資信託セット定期」のチラシが思わず目にとまりました。

投資信託もセットになっているのは気になるけど、定期預金の金利がすごく高くなるのはお得かも」と、窓口に説明を受けにいくことに。勧められるままに、預貯金をする感覚で200万円購入したそうです。

その後、明細が送られてきて、びっくり! 定期預金の金利は4%のはずが、そんなに利息がついていない……。むしろ投資信託の手数料を支払っているせいでマイナスになっていました。そこで、友人のご紹介で相談に筆者の元にやってきたのでした。

銀行では、今回C子さんが購入した、投資信託の購入と同時に定期預金に預ければ、通常よりも相当高い金利をつけるといった「投資信託セット定期」の商品が盛んに売られています。確かに超がつくほどの低金利の中、定期預金の金利が3%〜7%にもなるといわれれば、興味を持ってしまうのもわかります。

では、「投資信託セット定期」は本当に得なのでしょうか?

パンフレットをよく見てみると気がつくのですが、「投資信託セット定期」の商品は、魅力的な高金利が適用になるのは最初の短期間(たとえば「3カ月のみ」)というケースがほとんどです。その後の定期預金の金利は通常の金利が適用になり、ほとんど金利がつかない超低金利預金になるのです。「始めの3カ月だけでも高金利がつくのであれば得なのでは?」と思うかもしれませんが、ポイントは、投資信託にかかる手数料です。

8000円の利息収入を得るのに5万円払うことに

投資信託セット定期で販売される、投資信託の手数料はほとんど高い傾向にあります。実際の購入例で確認してみましょう。投資信託セット定期では、定期預金と同額の投資信託を購入することを条件としていることが多いので、仮に200万円の投資信託セット定期の商品を購入するとした場合、定期預金100万円、投資信託100万円ずつ購入することになります。ここでは定期預金の金利が3カ月のみ4%(年率)、投資信託の販売手数料3%、信託報酬2%(同)とします。

定期預金に3カ月預けた場合の利子は、100万円×年4%×(3カ月÷12カ月)=1万円。定期預金の利息には、20.315%の税金がかかりますので、実質8000円程度がもらえます。一方、投資信託の手数料は、購入時に100万円×3%=3万円がかかります。さらに信託報酬2%は、投資信託を持っている間ずっとかかります。最初の1年間で考えれば、単純計算で100万円×5%=5万円かかるということになります。

つまり、100万円を定期預金に預けて3カ月後に8000円もの利息がもらえると思いきや、投資信託は運用成果にかかわらず、手数料分が確実にかかり、トータルでマイナスという結果になってしまったというわけです。運用成績が良ければ良いのではないのかという意見があるかもしれませんが、それは間違いです。毎年2%もの信託報酬を払って預けたおカネがプラスになるような投信を見つけるのは、そう簡単ではありません。


投資信託の中には、販売手数料がかからず信託報酬も低い投資信託がたくさんあります。元から投資信託の運用成果を期待するなら定期預金と投資信託は別々で活用し、投資信託は手数料が低いものを購入して運用したほうが、効率良くおカネを増やすチャンスが広がります。

今回は3つのケースをご紹介しましたが、これらはよくある投資信託の罠です。投資信託に投資するのは、おカネを増やしたいからですよね。であれば、儲かりにくい商品に投資するのはNGです。「まずは投資をしてみる」という行動を取れることはすばらしいことですが、必要最低限の「知識武装」は行ったうえで、おカネを投資していきましょう。