マンスリー・コムズの内容。同院には最新設備もそろい「脳の血流を測る“光トポグラフィー検査”を行うと発達障害でどんな二次障害が起こるか、ある程度予測できる」という

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 かつては未成年の問題だと思われてきた発達障害が、「大人の問題」として急速に認知され始めている。メディアでの露出も増え、自分や周りの人間に対して「実はそうなのかも」と思った人もいるのではないか。果たして「大人の発達障害」を抱える社会人たちの現状とはどんなものなのか。大人の発達障害の「最前線」を探ってみた。

◆診断予約の電話が殺到中。専門外来に集まる人たち

「1か月分の外来枠が30分で埋まるほど、発達障害を疑う人は多いです」

 そう語るのは、大人になってはじめて気づいた“成人専門”の発達障害外来を設けているメディカルケア虎ノ門の五十嵐良雄院長だ。

「自分で疑って病院を訪れる方、奥さんに連れられてやってくる方、または子供に発達障害傾向があることから自分もそうではないかと疑ってくる方など、受診の理由はさまざまです。年齢層としては20〜40代と広く、新卒入社前の方もいれば、それなりのポジションにいる方もいます。業種だとIT系や、不得意なジャンルの仕事を任せられてうつになってしまった研究職の方などが目立ちますね」

 知的障害を伴わない発達障害者は、ASDだと「むしろ学業は優秀だった」という人も多い。それだけに有名企業の社員だったり、官庁勤めの人などもいるという。そのようなステータスのある人でも「単に苦手なだけなのか障害なのか、診断を希望して受診しにくる」と五十嵐院長は続ける。

「発達障害があっても、普通に働けているなら問題はないんです。病院に行くか行かないかは、『自分や周囲が困っているか?』という基準で判断すべきだと思います」

 診察ではまず、看護師や心理士が小さい頃からの病歴や育った環境、現在の困りごとなどを1時間半ほどかけて聴取し、ASDとADHDに関するチェックリストをそれぞれ記入する。そして、心理検査や「WAIS-掘廚噺討个譴訝稜集〆困2時間半ほどかけて実施。病院によっては心理分析で有名なロールシャッハ・テストもする。その後ようやく最終診断が出るのだが、そこまでに1か月ほどかかる場合もあるという。

「発達障害の診断が下りた場合、患者さんの意思によりますがADHDに関しては薬物療法があります。ただ、ASDも混在している人が多いので、服薬によって効果があった場合、逆にASDの特性が目立ってくることもあるんです」

 一方でASD用の薬はない。そのフォローとしてメディカルケア虎ノ門では「マンスリー・コムズ」と呼ばれるデイケアを行っている。これは自分の特性について理解を深めることが目的で、毎月1回、患者が集まってテーマごとに対処法や意見交換を行うプログラムだ。

「一般の人が思う“普通”と発達障害の人にとっての“普通”は違うということを、まずお互いが知るべきなんです」

 カリキュラムでは、それを自覚するための勉強を行っている。途中で通わなくなる人もいるが、毎回70〜80人が詰めかけるほど人気だという。それにしてもなぜ今、働く人々は発達障害にこれほど敏感なのか。五十嵐院長はこう語る。

「原因の一つに、働き方の変化があります。PCやスマホが当たり前となり、一人の労働者の仕事量が昔に比べて2〜3倍に増えた印象です。多くの業務をこなすにはそれなりのコミュニケーション力が要る。発達障害の方は視覚に基づく文字情報の処理には長けていても、聴覚情報を駆使するコミュニケーションは苦手なことが多く、仕事にも支障をきたしたり、叱責されて傷つく人が多いのです」

 利便性とともに生きづらさも増したとは、皮肉な時代である。

【五十嵐良雄院長】
メディカルケア虎ノ門院長。釻03年の開院以来、さまざまな精神疾患を抱える患者に対処。近著に『「はたらく」を支える!職場×発達障害』(南山堂)がある
― 大人の発達障害 ―