トヨタ・センチュリー愛好家「鳳凰俱楽部」オフ会

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 トヨタ・センチュリーがフルモデルチェンジされ、6月22日より発売された。初代が発売されたのが51年前の1967年のことで、2代目が30年後の97年、そして3代目となる今回は21年ぶり――これほどのんびりしたモデルチェンジは他にない。そして日本が誇る最高級車でありながら、これほど知っているようで知らないクルマも珍しい。

 そこで、数少ないセンチュリー愛好家の集まり、オーナーズクラブにその魅力を聞いてみた。

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 新型3代目モデルのカタログには開口一番、こう記されている。

〈幾度もの、技術革新と熟成の時を重ねながら、至高の存在へと走り続けるクルマがあります。私たちトヨタ自動車の最高級車であり、日本を代表するショーファーカー、センチュリーです……〉

トヨタ・センチュリー愛好家「鳳凰俱楽部」オフ会

 なんだかウイスキーの宣伝文句のようだが、世界のトヨタが最高級と自負するクルマなのである。V型8気筒 5リッターハイブリッドエンジンを搭載した総出力は431馬力! エンブレムにトヨタマークはなく、工匠が1ヶ月半かけて手彫りした金型でつくる「鳳凰」マークがつく。運転席からは後部座席用エアコンの調整もできて、その後部座席はリクライニングが可能。左席にはオットマンやマッサージ機能、靴べら差しまで備わる“おもてなし”のクルマである。お値段1960万円(税込)は、もちろん同社最高価格だ。

 ちなみに「ショーファー(Chauffeur)」とは「お抱え運転手」のこと。つまり、公用、社用、要人警護用に使用されるクルマであり、その豪華な装備は、あくまでも後部座席に納まる人にために作られ、乗り心地はむろん、乗り降りのしやすさが重要なテーマとされている。その精神は初代モデルから変わっていない。

トヨタ・センチュリーがフルモデルチェンジされた(トヨタグローバルニュースルームより)

御料車センチュリーロイヤル

 初代が発売された1967年は、グループ創設者の豊田佐吉(1867〜1930)の生誕1世紀であることから、センチュリーと名付けられたとされる。米国の高級車に普及していたATを取り入れ、デザインには伝統的な日本の美と重厚さを取り入れた。当時の佐藤栄作首相(1901〜1975)の公用車となり、以後、内閣総理大臣専用車となっている(現在はレクサスも併用)。

 2代目は日本の市販車として初(現在のところ最初で最後)のV型12気筒5リッターエンジンを導入。フェラーリやランボルギーニなどに使用される12気筒エンジンだが、センチュリーではあくまで静かで滑らかなエンジンを目指した。万が一、エンジントラブルが起こって片側6気筒が不動となっても、残りの6気筒だけで走ることができるという。このエンジンをもとにした「センチュリーロイヤル」が、御料車として宮内庁に納入されたのは2006年のこと。もちろん、一般発売はされない特別仕様車である。

 このような存在であるから、いったいどのような乗り心地なのか、説明できる人が身近にいないのだ。

「そうでしょうね。購入するのは後ろ座席の人ですし、クルマ好きというわけでもないでしょう。陛下はクルマ好きとして知られますが、センチュリーの運転はされませんし……」

 とは、センチュリー・オーナーズクラブ「鳳凰倶楽部」の代表(50)である。鳳凰倶楽部が設立されたのは4年前とまだ新しいが、登録台数は95台を数える。毎月、オフ会を開催しているという首都圏のパーキングエリアにお邪魔した。

立体駐車場は無理

 夜9時、集まったセンチュリーは初代と2代目合わせて19台。漆黒のセンチュリーが多いが、シルバー、紺、真っ白(特注)もある。それぞれ、所定の位置に止めると、クルマを磨き出す……。

「今日はちょっと少ないかな……」

 しかし、センチュリーが20台近くも集まると、その一角は異様な迫力に満ち、他車は近寄ろうともしない。そもそも、運転を楽しむというクルマではないと言われるセンチュリーを、なぜ所有し、運転するのか。

「もともとデカいセダンが好きだったんですよ。クラウンやセドリックはみんな乗ってるけど、センチュリーは見ないからね。そして乗ったら、ハマった。独特のオーラというか、醸し出す匂いとでもいうか……。僕は初代から乗り始めて4台目だけど、初期は運転席が固定されてたりしますが、2代目後期は運転席も後ろに下げられる。V12エンジンはホントに静かで、エンジンかかってるのに気づかなくて、もう1回、セル回しちゃったなんて人もいる。今回、新車が出て旧車になったけど、長い間、現行車でしたから、古くならない。みんな『運転するクルマじゃない』と言うけれど、意外に小回りも利くし、くせになる乗り味。人の目も楽しめる」(鳳凰倶楽部代表)

 駐車していると、「どなたか、いらっしゃってるんですか?」とよく尋ねられるとか。VIPが来ていると勘違いされるというわけである。だが、その駐車が難しいとも言う。

「コインパーキングや立体駐車場は、長さ5メートルまでがほとんど。センチュリー(2代目)は5.2メートルあるから、頭1つ分はみ出ちゃう。傷つけられるのも嫌だしね。かと思えば、人が管理している駐車場だと“満車”とあるのに、なぜか誘導してもらえたりすることもあるんですよ」(同)

役員よりいいクルマで来るな

 みなさん、中古車である。古い年式のモノでも基本的には丈夫だという。

「前の所有者は、財務省だったり、都庁、大会社のモノだったりしますよ。数年前には宮内庁の出物もありましたね。もちろんセンチュリーロイヤルは出ません。最近は個人情報とかで、前の所有者が分からなくなってしまいましたけどね。古くても、同じ年式のベンツよりも丈夫です。やっぱりメイド・イン・ジャパンの最高峰ですよ。でも、さすがにシリンダーヘッドからオイルがにじんだり、サスペンションがへたったりすることはあります。問題はそういうときで、ディーラーが引き取ってくれないんです。トヨタが威信をかけて手造りしたクルマでしょ、『うちでは預かれない。触ったことがないので責任取れない』と。だからこうしたオフ会で情報交換をするわけですよ。それと“反社”の人と勘違いされて、修理に身分証明が必要になることもありますね……今時、あの人たちだって、こんなクルマ乗らないと思うんですけど」(同)

 普段はどんな乗り方をするのだろうか。

「センチュリーでダイエーに買い物に行くという主婦もいますし、後部座席は妻専用という人もいる。オーナーは自営業だったり会社員だったりしますが、会社員の人は『ウチの役員よりもいいクルマで来るんじゃない!』と怒られることもあるそうです。もっとも燃費はリッター5キロ程度ですから、普段使いは軽トラという人もいます。センチュリーは磨き専用で、オフ会だけなんて人もいますね。また、覆面パトの同好会というのもあって、そこから『警備させてくれないか』という申し入れで車列を組んでコラボしたこともあります。我々をヘンタイって言いたいんでしょ? まあ、デカいコスプレですよね」(同)

3代目の評価は?

 人それぞれ、クルマもそれぞれ、いろいろな楽しみ方があるものだ。ところで発売されたばかりの3代目センチュリーに興味はないのだろうか。

「それも人によりますね、V12でないと認めないという人もいれば、うらやましいと思う人も。試乗した人に聞くと、速いそうですよ、やっぱりハイブリッドは違うと。でもね、2000万円でしょ、買えませんよ。当分先ですね」(同)

週刊新潮WEB取材班

2018年7月14日 掲載