高級化が進む香港・西営盤地区のワンルームを購入したエイドリアン・ロウさん(2018年5月23日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】住宅価格が高騰し続ける香港(Hong Kong)では今、若い社会人たちが、おしゃれな解決法として売り込まれている「ナノフラット」と呼ばれる極小スペースや共同住宅で暮らすようになってきている。

 狭い土地に建物が密集するこの都市では、最新設備を整えたしゃれた狭小マンションが次々に出現しており、魅力的でより手頃なライフスタイルの選択肢として売り出されているが、その価格はやはり驚くほど高額だ。

 金融の仕事をしているエイドリアン・ロウ(Adrian Law)さん(25)は、高級化が進む西営盤(Sai Ying Pun)地区の新規開発エリアにあるマンション内の小さなワンルームを2年前に600万香港ドル(約8600万円)以上で購入した。

 ひょろっとしたガラス張りの建物には各階に4つの住戸があり、そのうちの一部が215平方フィート(20平米)未満の部屋を指すナノフラットとなっている。

 ロウさんの部屋はそれよりも大きい292平方フィートだが、価格は1平方フィートあたり2万香港ドル(約29万円)ほどだ。

 限られたスペースを有効活用するため、机を収納できる折りたたみ式ベッドといった複数の用途を備えた家具を購入したり、持ち物の大半を実家に預けたりしている。

 その一方で、指紋認証式の扉や洗濯機、テレビ、冷蔵庫の他、カーテンまで備え付けられている。ロウさんによれば、この部屋を買ったら必要なものがすべて付いてきたという。

 ロウさんはAFPの取材に対し、「不動産開発業者らは、寝る場所が必要なだけで他のことはすべて外でできるというコンセプトを打ち出している」と話し、料理ができるほどキッチンは広くないため、食事は主にテイクアウトを利用していると語った。

 ロウさんが投資目的でこのマンションを購入した時、物件価格の30%にあたる頭金は両親が負担してくれた。住宅ローンの月々の返済額は2万4000香港ドル(約34万円)、ロウさんの給与の約40%にあたる。

■健康上の脅威

 米調査会社デモグラフィア(Demographia)による2018年の国際住宅価格調査によると、香港の不動産価格は世界で最も高く、住宅価格の中央値は対平均所得比19.4倍と世界的に見て最悪の比率だという。

 中国本土の投資家や開発業者が注ぎこむ潤沢な資金によって不動産価格はさらに高騰しており、加熱する不動産市場を制御できていないとして香港当局は批判にさらされている。

 政府の公式データによると、新たに売りに出された430平方フィート(約40平方メートル)未満のマンションの60%以上は、投資目的の顧客に売却されたという。

 香港住民740万人の大多数にとって、マイホーム購入は高根の花になっており、開発業者らはより大きな市場を掘り起こすためさらに狭い物件を生み出している。

 香港の法律では、住宅面積の最小値に関する規制はない。

 公共政策を専門とするシンクタンク「Our Hong Kong Foundation」の上級研究員であるライアン・イップ(Ryan Ip)氏は、開発業者らが生活の質よりも利益を優先している現状を「不健康な」傾向だと指摘。

「狭小マンションを1平方フィートあたりの価格で見ると、より広いマンションよりも高額になることさえある」と語った。今後も住宅面積の縮小が進めば、心身の健康が損なわれることになるとイップ氏は考えている。

 賃貸物件の価格も急騰しており、政府が助成する公営住宅へ入居するのに5年も待たなければならないこともある。

 政府も現在、さまざまな選択肢を検討しており、新たな人工島の建設や、貴重な公園を住宅地として再開発する案などもある。 

■スペースの共有

 まともな物件は、良い給与をもらっている人々にさえ手が届かないこともある。

 教師のジェズ・イン(Jezz Ng)さん(29)には、毎月3万2000香港ドル(約46万円)の収入があるが、家賃に大金を支払うよりも新たな住居形態であるシェアハウスに住むことを選択した。週末はいつも実家に帰っている。

 7人の女性たちと共有するマンションの一室で、インさんは小さな個室を借りているが、その広さはシングルベッドと机がちょうど収まる程度だ。

 このシェアハウスは、労働者階級が暮らす油麻地(Yau Ma Tei)にあるリノベーション済み集合住宅にある。同物件を所有する香港の不動産会社「ビブリオテック(Bibliotheque)」は、全15戸166室を1か月の家賃3500〜6200香港ドル(約5万〜8万9000円)で賃貸している。

 すべての居住者は、浴室やキッチン、プレイルーム、書斎といった共用施設を利用できる。

 AFPの取材に応じたインさんは、「賃貸物件を探し始めた時、私の予算は光熱費込みで最高8000香港ドル(約11万5000円)でしたが、簡素できちんとしたワンルームはこの予算を優に超えそうだった」と語った。

 彼女は今、1か月5600香港ドル(約8万円)の家賃を払っている。そのおかげで両親を経済的に支え、修士課程で学ぶ妹の学費も払うことができるという。香港では、仕事をしている若者たちが家族を経済的に支援するのが一般的だ。

「自分のマンションを持ちたいけれど、今のところは目標達成のための手段はない」「安定した職業に就き、給与も徐々に上がっているけれど、不動産価格の高騰にはついていけないでしょう」とインさんは語った。
【翻訳編集】AFPBB News