同じ読みで意味が違う「同音異義語」は日本語にたびたび登場します。その中でも特に厄介なのが、例えば「更正」と「更生」など意味が微妙に異なっている同音類義語の使い分けです。今回の無料メルマガ『仕事beginのメール作法』では著者の神垣あゆみさんが、上手に使いこなせるようになりたい同音類義語について解説しています。

間違いやすい言葉 「かたよる」

「かたよる」には「片寄る」「偏る」の2通りの表記があります。

「片寄る」は、ずれて一方に寄ること。

例)積み荷の片寄りを防ぐ。

  対策台風の進路が東に片寄る。

「偏る」は、中立的でなくなるとか、公正さを欠くことを意味します。

例)支店により売れ行きが偏る。

  原因栄養の摂取に偏りが見られる。

「偏る」の送り仮名は「偏・る」で、「偏・よる」とするのは間違いです。

物が片側に寄ることを指すのが「片寄る」で、ある基準からはずれて、一方によることを「偏る」という違いがあります。区別の仕方としては、「片寄る」は目に見える形で分かることが多いですが、「偏る」は思想や考えなど、目に見えないものを指すことが多いといえるでしょう。

間違いやすい言葉 「とくよう」

値段が安い割に量が多いものを「とくようひん」と言います。漢字で書くと「得用品」? それとも「徳用品」?

記者ハンドブックによると「得」と「徳」の違いは、損の対語が「得」で、人徳や恩恵の意味で使うのが「徳」とあります。「お買い得」「お得な品」「100円の得」など、安くて得なことを意味する言葉には「得」を使います。

ならば、割安でお得な品である「とくようひん」は「得用品」と表記するのかと思いきや、記者ハンドブックでは「徳用品」とあります。「徳用米」「お徳用パック」「徳用タイプ」なども「得」ではなく「徳」を使います。損の反対は「得」ですが、「徳」にも利益という意味があるからでしょうか。

「とくよう」には「徳用」のほかに「特用」もあります。「特用」とは、特別な用途、限られた用途に使うこと。お茶、麻、タバコ、藍など、食用以外の用途にあてる農作物のことを「特用作物」と言います。

ほかには「特養」もありますね。これは、特別養護老人ホームの略称です。

間違いやすい言葉 「とくい」

「とくい」には「得意」と「特異」の2通りの表記があります。

「得意」は、手慣れていて上手なこと。

例)得意中の得意、得意分野

「苦手」の対語として使うほか、いつもひいきにしてくれることや人という意味でも使います。

例)お得意さま、得意先、上得意

また、「失意」の対語として、望みどおりになって満足しているという意味もあります。

一方、「特異」は、字のとおり「特に異なる」こと。普通の様子と違い、非常に稀なことを指します。

例)特異体質、特異な事態

特に優れているという意味でも使います。

例)音楽の分野で特異な才能を発揮

「特異」の類語は「特殊」。「特殊」は「一般」の対語で、普通と違うこと。

例)特殊な才能、特殊鋼

ちなみに「特殊自動車」と「特種用途自動車」では「とくしゅ」の表記が異なります。キャタピラー車やフォークリフトなど、形態・構造・用途などが通常と異なる車が「特殊自動車」。救急車、パトロールカー、レッカー車、キャンピングカーなど、8ナンバー車は「特種用途自動車」です。

間違いやすい言葉 「あらげる・あららげる」

「声を荒らげる」の読みは「あらげる」? 「あららげる」?

「荒らげる」と書いて「あららげる」と読みます。意味は、声や態度などを荒くすること。激しい語気の声を出すことを「声を荒らげる」と言います。送りがなを入れる場合、「荒げる」「荒ららげる」は間違いで、「荒らげる」とします。

ただ、「荒らげる」を「あらげる」と読み、使うケースは増えているため(実は私もそうでした)、テレビやラジオの放送では「あらげる」を使うことも認められているようです。

●参考:NHK放送文化研究所「荒(あら)らげる」と「荒(あら)げる」どちらがよい

一方、共同通信社「記者ハンドブック」では、「荒(あら)らげる」で統一されており、新聞表記では「荒(あら)げる」は使われていません。

では、「荒らげる」の対語は何でしょう? 「和らぐ」と書いて「やわらぐ」です。気持ちが鎮まることを意味します。

例)怒りが和らぐ 気持ちを和らげる

日本酒を飲むとき、チェイサーとして添えるのも「和らぎ水」です。

「柔らぐ」「軟らぐ」と表記するのは誤りで、送りがなも「和ぐ」ではなく「和らぐ」です。

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