スタイリッシュなデザインで登場した「N-VAN」(撮影:今井 康一)

ホンダは7月12日、軽商用バン「N-VAN」を7月13日に発売すると発表した。今年、販売を終了した「バモス」「アクティ」の後を継ぐモデルで、ホンダの軽商用バンとしては19年ぶりの新型車となる。


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ダイハツ工業「ハイゼットカーゴ」「ハイゼットキャディー」、スズキ「エブリイ」などの軽商用バンと競合するとみられる。「軽でありながら荷室空間を最大限に取るとともに、不満だった燃費の悪さや騒音、加速性能などを高めた」(開発責任者の古舘茂・本田技術研究所 四輪R&Dセンター)ことで、ダイハツ、スズキに見劣りしてきた軽商用バンの分野で攻勢をかける。

ホンダは6月1日にN-VANの内外装デザインやボディカラー、グレード、メカニズムなどの一部情報を先行公開していたが、価格や性能、メカニズムなどの詳細がようやく明らかになった。

車両本体価格は126万円台〜

気になる車両本体価格は以下の通りだ。

●N-VAN
G・Honda SENSING(6MT・CVT)
  FF    126万7920円
  4WD   137万7000円
L・Honda SENSING(6MT・CVT)
  FF   134万1360円
  4WD   145万0440円
●N-VAN +STYLE
FUN・Honda SENSING (6MT・CVT)
  FF   156万0600円
  4WD  169万1280円
FUN・ターボ Honda SENSING(CVTのみ)
   FF   166万8600円
  4WD  179万9280円
COOL・Honda SENSING(6MT・CVT)
   FF   156万0600円
 4WD   169万1280円
COOL・ターボ Honda SENSING(CVTのみ)
FF   166万8600円
  4WD   179万9280円


「N-VAN」(右下)、「N-VAN +STYLE FUN」(上)、「N-VAN STYLE COOL」の3タイプがある(写真:ホンダ)

グレードはベーシックな「N-VAN」の「G」「L」と丸目スタイルの「N-VAN +STYLE FUN」、フロントのメッキグリルが特徴の「N-VAN +STYLE COOL」で構成する。全グレードともボディサイズは全長3395×全幅1475mmで共通。全高は「N-VAN」と「N-VAN +STYLE FUN」は1945〜1960mmと背が高く、「N-VAN +STYLE COOL」はそれより若干低い1850〜1865mmのロールーフタイプとなる。


FFレイアウトを採用した(撮影:今井 康一)

主な競合車の価格も見てみよう。

●ダイハツ「ハイゼットカーゴ」
    93万4200〜149万5800円(北海道地区除く)
●ダイハツ「ハイゼットキャディー」
   112万3200〜147万9600円(北海道地区除く)
●スズキ 「エブリイ」
    95万0400〜142万6680円

N-VANの価格帯は競合車と一部で重なるものの、やや高めの設定になっていることがうかがえる。特に「N-VAN +STYLE」は競合車よりも一段価格が高いので、趣味性の高い乗用車としてのニーズの取り込みもにらんでいるといえそうだ。

エンジンは現行N-BOXと共通

N-VANのエンジンは自然吸気(NA)とターボ(過給器付き)の2タイプ。各グレードともに前輪駆動(FF)と4WD(4輪駆動)が用意されるが、ターボが設定されるのは「+STYLE FUN」と「+STYLE COOL」だけだ。ターボ車はCVT(無段変速機)のみで、それ以外のグレードは6速MT(マニュアルトランスミッション=手動変速機)も選べる。エンジンは基本的に現行N-BOXと共通で性能は以下の通りだ。

●自然吸気タイプ
最高出力   53馬力
最大トルク  6.5kgf・m
燃費     17.6~23.8km/L(JC08モード)
●ターボ
最高出力   64馬力
最大トルク  10.6kgf/m
燃費     21.2〜23.6km・L(同)

いずれも従来のアクティやバモスに比べて加速性能、静粛性を高めつつ、燃費も向上した。複数のN-BOXユーザーが「特にターボは軽自動車で十分と感じさせる走行性能」と評するぐらいなので、N-VANの走りもそれに近いものになるだろう。静粛性は「ハンズフリーで会話ができるレベル」(開発担当の古舘氏)という。

N-VANはホンダの大ヒット軽自動車「N-BOX」のプラットフォームを活用しつつ、運転席以外のシートを床下へ座面ごと収納できる機構のほか、燃料タンクを前席の下に収めるセンタータンクレイアウトを採用。エンジンをボンネット内に置き、前輪を駆動するFF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式として荷室を低床化した。

併せて助手席側はボディの上下をつなぐピラーを廃止。ドアにピラーを入れる構造によって、助手席と後席のスライドドアを全開にすると幅1580×高さ1230mmの大開口部を実現した。助手席ピラーレスはダイハツ「タント」など軽乗用車で先行している構造だが、軽商用バンとしてはN-VANが初採用となる。


助手席をフラットにできるパッケージングは軽商用バンではN-VAN唯一(撮影:今井康一)

荷室の低床化と助手席の床下格納、助手席側の大開口部によって、これまでの軽商用バンにはできなかった荷物の積み降ろしが可能となる。

そして荷室空間は、段ボール箱(長さ380×幅310×高さ280mm)で71個、ビールケースなら40個を運ぶことも可能な大容量を実現した。脚立などの長尺物も積みやすく、自転車やレーシングカート、キャンプ道具、サーフボードなどを運びたい人が、レジャー用途で買い求めることもありえそうだ。最大積載量は350kgとなる(一部グレードは同300kg)。

基本的にはどのグレードにも、衝突軽減ブレーキや誤発進抑制機能、路外逸脱抑制機能などを備えた、ホンダの安全運転支援システムである「ホンダセンシング」が標準装備されるが、一部は装備しない仕様も選べる。

法人販売の弱さが課題か

「ホンダ『N-VAN』、19年ぶり新型軽バンの衝撃」(6月1日配信)でもすでに触れたが、N-VANの強みはこれまでの軽商用バンになかったパッケージングにある。室内の寸法は競合車と極端に大きな差はないが、助手席の部分をフルフラットにでき、助手席側からも大きな荷物を積み降ろしできるのは、軽商用バンにおいてはN-VAN唯一のレイアウトだ。

トヨタ自動車の「ハイエース」のように、商用ニーズはもちろん乗用車としても新たなニーズを掘り起こしそうなN-VAN。普通乗用車のバンからのダウンサイジングニーズもにらむ。

一方、「軽商用バンのモデルチェンジが長すぎて、アクティバンやバモスは保有台数が減ってきている」。N-BOXの商品企画を担当したホンダ商品ブランド部の澤本正悟氏は明かす。当初の課題はホンダ離れしてしまったユーザーの取り返し。そしてダイハツやスズキに比べると弱い法人向けの新規開拓力を、ホンダがどのように強めていくかだろう。