最低地上高を確保しつつ出口面積を拡大するための手段だが……

 スポーツカーが持つハイパフォーマンスの象徴といえるのが、大径マフラーだろう。マフラーの出口部分が大きいということは、排気抵抗の小ささを感じさせ、フルパワーを出しているときにも無理なく排気できるだけのポテンシャルがあることを感じさせる。

 つまりマフラーに感じるスポーツ性というのは、機能に裏付けされたものといえる。とはいえ、単純な大径化というのは最低地上高の余裕がなくなっていくことにつながる。そこでテールエンドのダブル化、トリプル化というのが進んでいく。単純に断面積を計算しても、120mm径のシングル出しより90mm径ダブル出しのほうが面積は広く、排気抵抗は低減できるといえる。もちろん、途中のパイプ系や曲がり度合いも影響してくるし、なにより触媒やサイレンサー部分の抵抗もあるので、出口径だけですべてが決まるわけでは
ない。

 その意味ではスポーツカーのデザインとして与えられているマフラーエンドというのは象徴的な意味合いも強い。かつては加工性を含めて大径パイプを使うのが現実的ではなく、テールエンドの数を増やして排気効率を上げるというのが常套手段だった名残ともいえる。

 左右に分かれたデュアルテール・デザインには、V型エンジン、水平対向エンジンのようなシリンダーが左右に配置されているエンジン形式を暗に示すという見方もでき、機能をマフラーデザインによって表現することに意味がある。また、太さの異なる出口が、ターボエンジンらしさを示す(メインマフラーとウエストゲートの出口を分けているイメージ)という例もある。

 もっとも、上記のような演出がされているとしても、実際にはひとつのサイレンサーから左右出しにしているだけだったり、メインパイプ自体はエンジン直後の触媒部で集合していたりと、あくまでもイメージであることが多い。現代のスポーツカーにおけるマフラーデザインというのは、純粋な排気効率というよりは、スタイリングやキャラクターの演出としてマフラーエンドの形状を整えていると考えていいだろう。

 なお、機能的な要素としては、サイレンサーの形状によりフラットフロアに貢献するといった空力的な工夫がなされているケースもある。