横浜市の林文子市長

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 参院で審議入りしたカジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案は政府・与党が目指す今国会(22日会期末)中の可決・成立に向けて、大詰めを迎えている。

 今国会での成立を急ぐ政府に対して、候補地として有力視されている横浜市の林文子市長は「白紙」を貫き、慎重な姿勢を崩さない。態度決定を留保している市の動向に注目が集まる一方で、足元の世論の方向性も定まっていない。(王美慧、写真も)

 「まだまだ白紙状態ではありますが、国の方で自民党・公明党で進めているカジノを含む統合型リゾートを、国内では誘致しようとし始めている」。6月18日午後、同市中区で開かれた自民党横浜市連大会で、関係者580人を前に市連幹部は力を込めた。市連幹部は「横浜が今後とも光り輝く、輝き続けられるような政策を自民党横浜市連の市会議員を中心に、国会議員らとスクラムを組んで進め、魅力づくりをして参りたい」などと強調した。

 ■有力候補地

 “ラブコール”を受ける林市長は、平成28年12月にIR整備推進法が成立した際は前向きな姿勢を示していたが、昨年の市長選を前にトーンダウンし、「白紙の状態」とアピール。先月19日にIR実施法案が衆院本会議で与党などの賛成多数で可決された際に、林市長は「法案や国の動向などを踏まえ、引き続き情報の収集、分析を進める」とコメントを出すなど、従来の「白紙状態」を改めて示した。

 IR実施法案では、国際会議場や展示施設、劇場、ホテルの集約をIR認定の条件とする。まとまった土地が必要なため、臨海部の新たなにぎわい拠点として再開発の準備が進む同市中区の山下ふ頭(約47ヘクタール)が建設候補地の“本命”とされている。市港湾局によると、山下ふ頭では現在、観光スポットに近いという立地特性を生かし、商業施設や宿泊施設といった再開発の準備が進められている。

 28年度から民間業者と移転交渉をしており、24棟あった倉庫のうち7棟がすでに移転契約が済んでいる。同局は事業者に対し、34年3月までを山下ふ頭の営業期間としており、更地化に向けて倉庫などの解体作業が着々と進められている。

 現在、国会審議では、政府がIR誘致による地域振興や雇用効果などを訴えるが、野党は地域活性化やギャンブル依存症対策の効果などを疑問視している。6日にはギャンブル依存症対策基本法が参院本会議で可決・成立し、ギャンブル依存症の予防や患者たちの相談、医療支援などを行なうとしている。

 林市長はIR実施法が成立した場合に、経済効果やギャンブル依存症の影響などについて具体的な検証を始める方針だ。一方で、市内の世論はギャンブル依存症や治安悪化などに対する懸念が根強く、カジノ導入への反感は強い。

 ■経済界の熱い視線

 IRには国内の企業も関心を示す。地元経済界を中心に誘致を望む声が上がっており、横浜商工会議所の川本守彦副会頭(62)は5月の定例記者会見で、市のIR誘致に向けた動きについて「表面上は遅れているように見えても、水面下でいろいろやっていることがある」と述べた。

 京浜急行電鉄は、26年8月、社内にプロジェクトチームを設置。「IRが沿線や地域の活性化につながると捉え、今後は国や市の動向を見ながら、IR事業への参画を検討していく」(担当者)と意欲を示している。

 横浜元町商店街の発展のために活動する協同組合元町SS会の加藤祐一事務局長(59)も「IRができた場合、商店街をどう運営していくべきか、今年度から検討を始めている」とし、「競合施設としてではなく、商店街の活性化にもつながる施設を期待している」と前向きだ。横浜中華街発展会協同組合の高橋伸昌理事長(59)は「集客施設として新しい“マグネット”ができることは、中華街にとっても大きなチャンス」とするが、「IRが全てだとは思っていない。できなかったとしても、横浜が発展しないというわけではないのでは」との見方を示した。

 ■懸念の声は根強く

 27年3月に、市はIRの年間の経済効果を4100億円と試算した。だが、IRが地域経済を必ず潤すという保証はなく、民間資金による開発でも失敗すれば傷跡を残すことになるほか、海外ではIRが周辺のレストランなどの収益を奪い、地域振興に失敗した例もあるとされている。

 誘致反対の市議は「地元周辺と共存できるのか、はかりかねる」と指摘したうえで、「収益が上がってもうかればいいが、そうなったとしても、それがどこまで続くか」と懸念を示す。港湾関係者の有力者も反対を唱えており、粘り強く反対を訴えていく考えだ。