日産はインフィニティ「QX30」と同等の高級小型車を共同開発する計画だった

写真拡大

 日産自動車が、独ダイムラーとメキシコで進めていた高級小型車の共同開発を凍結したことがわかった。新型車を両社の現地合弁工場で生産し、それぞれのブランドで投入する計画だったが、日産は共同開発コストをカバーするだけの販売台数が見込めないと判断した。一方、メキシコおよび米国、カナダの北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉では自動車分野も焦点。合意までの先行きは不透明で、日産以外の日系自動車メーカーにとってもメキシコ事業のかじ取りが難しくなっている。

 日産は2014年にダイムラーとメキシコ事業で提携し、高級小型車の共同開発、合弁工場での共同生産を柱に協業を進めてきた。カルロス・ゴーン会長は「(ダイムラーとの)最も大きなプロジェクトの一つ」と位置付ける。

 小型車の共同開発ではダイムラーの「MFA」プラットフォーム(車台)の次世代型を採用した複数タイプの新型車を日産の「インフィニティ」、ダイムラーの「メルセデス・ベンツ」の両ブランドで生産し、主に米国市場に投入する計画だった。しかし米国での新車需要がピックアップトラックなど大型車にシフトしていることもあり、当初見込んだ販売台数の達成は難しいと判断した。

 合弁工場では18年3月にインフィニティの中型SUV(スポーツ多目的車)「QX50」の量産を始めた。18年中にはベンツ車の生産に乗り出す計画だが、いずれも両社それぞれの独自プラットフォームを採用する。日産の今後の生産車種は未定。投資判断を難しくしている要素の一つが、米トランプ政権の保護主義的な通商政策だ。NAFTAの再交渉でも、自動車部品の域内調達比率の引き上げ要求など強硬姿勢を示す。

 日系自動車メーカーはメキシコを対米輸出拠点に位置付ける。日産のほかトヨタ自動車やホンダ、マツダが工場を構え、系列サプライヤーも集積する。NAFTA再交渉の合意内容によっては戦略転換を迫られる。