ビッケブランカが6月29日、東京・TSUTAYA O-EASTで全国ツアー『ビッケブランカ ULALA TOUR 2018』のファイナル公演を開催。同ツアーは4月に発売した、1stシングル「ウララ」を引っ提げ、6月1日の北海道・札幌cube garden公演を皮切りに全国6カ所6公演をおこなったもの。「ウララ」や8月にリリースされる新曲「WALK」を初披露するなど全17曲で観客を魅了。ドリーミーでマジカルなステージで熱い一夜を演出した。

この舞台劇めっちゃ気持ちをアゲ続ける

ビッケブランカ(撮影=星野健太)

巨大な白い布で覆われたステージ。期待に胸を膨らませた人たちの身体から放つ熱気が、次第に場内へ充満していく。ミュージカル劇が始まるような華やかでゴージャスな「Get Physical」の音色へ導かれ、ライブは幕を開けた。

 演奏に合わせ幕が開いた中から姿を現したビッケブランカは、歌いながら舞台上を駆けだした。ファンキーな音の数々が、まるでカラフルなこんぺいとうのように飛び散っていく。華やかな空気が舞台上からあふれだす。ピンク色のツナギ姿のメンバーたちが、楽しさを振りまく歌のコンダクターを担うビッケブランカの歌声に合わせ、笑顔へ導く明るく弾けた音色を次々とステージ上から飛ばしていく。ヤバい、胸の奥からどんどんワクワクが沸き上がる。フロア中には、大きく手を振り上げ、身体をシェイクする人たちに埋めつくされた光景が広がっていた。

快に音を弾き出すビッケブランカのエレピの演奏を合図に飛び出したのが、「Natural Woman」だ。胸を熱くときめかすパーティロックンロールチューンに刺激を受け、思いきりはしゃぐ観客たち。ウキウキとした気持ちがどんどん昂りだす。もっともっと熱く身体を揺らし、弾けたノリへ飛び乗りたい。一緒に笑顔のまま、華やかなパーティを彩るメンバーとして、ノンストップで騒ぎたい。

これは、1曲の中へ物語をギュッと濃縮したミュージカル? まるで早回しで巡るドラマを味わうように、どこかハロウィンの音楽にも似たダークでホラーな雰囲気から、力強くポップに弾けた表情までを、まるでジェットコースタームービーのよう1曲の中へ映し出したのが「Bad Boy Love」だ。次々と音と場面が変わるたびに、気持ちもスリリングさを覚えたり、躍動したりと嬉しいくらいに大忙し。いいよね、この手のドラマチックな楽曲って。むしろ、ビッケブランカの得意な表情と言うべきかな。

ライブは、「Bad Boy Love」のエンディングを受け、軽快に鍵盤を叩くビッケブランカの音の調べに導かれるまま「アシカダンス」へ。演奏に合わせ無邪気に手拍子を送る人や、跳ねた演奏に合わせ、その場で一緒に跳ねる人たちの姿などが、フロア中のあちこちへ広がっていく。アシカが早足でピョコピョコ氷上を走ったりお腹でスーイスイと滑るように、ビッケブランカのピアノの演奏も、踊るように次々と笑顔呼び込む音色を解き放っていた。ウキウキが止まらない。この舞台劇、めっちゃ気持ちをアゲ続けてくれるじゃない!

不思議な微睡みの中へ

ビッケブランカ(撮影=星野健太)

ビッケブランカの奏でるエレピの調べがファンキーに弾け飛ぶ。スタイリッシュでソウルフルな「Alright!」が、一緒にリズムに合わせ「遊ぼうぜ」と呼びかける。舞台上でもメンバーどうしのセッション風景が飛び出せば、炸裂したファンキーな歌と演奏に触発され、フロア中の人たちもガンガン身体を揺さぶりだす。まだまだ熱狂は上がっていく…と思ったところで、表情は一変。

 ビッケブランカは月夜に照らされた魅惑のストーリーテラーと化し、優しく、物憂げに語るように「Broken」を歌い出した。彼の醸しだす妖しいムードに導かれ、会場中の人たちは、しばし不思議な微睡みの中へ身を浸していた。

 再び場内には、熱がこもりだす。ビッケブランカと観客たちによる「アー、ハッ」「アー、ハッ」と交わす声のやり取り「Want you back」の演奏が始まると同時に、会場は一気に巨大なディスコ空間へと変貌。躍動する力強いリズムに身を預け、ビッケブランカと一緒に声を張り上げ、思いきり身体を揺らしダンシング。終盤には、ビッケブランカとファンたちよる<Booyakasha!>と声を交わしあう熱いやり取りが何度も続いていた。

心のストッパーを外したまま

ビッケブランカ(撮影=星野健太)

中盤には、ミドルメロウやバラードナンバーを軸に据えたブロックを用意。ライブは、切なさの中にも晴れた表情を映し出した「SPEECH」からスタート。ビッケブランカのハートフルな歌声に触れていると、心が穏やかに揺れていく。胸の奥に秘めていた想いを、ビッケブランカは歌声に乗せ優しく解き放つ。その温かみを覚える歌声に、ずっと触れていたかった。続くバラードナンバー「Your Days」では、淡い光を全身に浴びながら、ビッケブランカはエレピの弾き語りで歌を届けてくれた。歌が心に染み渡る。全編英詞ながら、彼の歌声から滲み出る切なさが、胸の中へジワジワと広がり続けていく。

同じく、切ないピアノの弾き語りから始まったのが、美しくも切なさを抱いた「TARA」。あの頃を懐かしむように、いや、痛みに震えたあの当時の心を慈しむよう、ビッケブランカは想い出を美化することなく届けてきた。彼の痛い心模様が、次第に重なる演奏陣の音と一緒に切なく広がりだす。笑顔を導くだけじゃない、心にじわっと染みる歌もビッケブランカの魅力であることをこの曲に教えられた。

ビッケブランカは「これまでは想像を巡らせた作り物の歌しか書けなかった自分が、初めて自分の心の中の恥ずかしい部分を、未練たらしい気持ちを正直に書いたのが『TARA』でした。衝動のままに、初めて自分をさらけだした、まさにビッケブランカのターニングポイントとなった歌です」と語った。

自分の音楽人生の一つの転換曲ともなった「TARA」を生み出す背景や、メンバー紹介をしたところで、ここからはラストへ向け、ふたたびビッケブランカはテンションを上げだした。

ギターを手にしたビッケブランカは、熱く、激しくロックンロールな演奏をぶつけだした。「Black Rover」を通し、彼ビは躍動する演奏の上で、攻めるような歌声をぶつけていく。そのエナジーに触発され、フロア中からも無数の拳が突き上がる。

激しさを持った演奏は、続くファンキーでロックな「Moon Ride」へシフト。ウキウキとした気持ちが、ドキドキとした楽しさが、渦を巻くように大きく膨らみだす。テンションの高い演奏が、熱を持って駆けていく。途中には、ギタリストとギターを手にしたビッケブランカとのギターの掛け合いバトルも登場。ファンキーに駆ける演奏に、会場中の人たちの興奮も上がりっぱなしだ。

続く「Slave of Love」を通しビッケブランカは、ドリーミーでマジカルなロックンロールの風景を描き出した。触れた人たちを、ロックンロールなドリームの主人公へ塗り替えるように、この歌は場内の人たちにいろんな最高の夢を見せていく。

「WALK」を一足早くライブで

ビッケブランカ(撮影=星野健太)

「ファビュラス」の演奏が飛び出すと同時に、フロア中に無数のパルーンが上空から降り注いだ。思いきり明るく弾け飛ぶ楽曲に合わせ、ビッケブランカも、会場中の人たちも、歌と演奏に合わせ無邪気にはしゃぎ続けていく。

気持ちが弾むのなら、その気持ちへ素直に寄り添い夢中ではしゃげばいい。思いきりステップ踏みたいなら、ステップ踏んで騒げばいい。この歌は、心に歓喜を注いでいく。そう、ビッケブランカと一緒に心を開放し、満面の笑顔で騒ごうじゃない。それこそがファビュラスな風景だ。

最後は、最新シングル「ウララ」だ。気持ちを明るく華やかに解き放つ極上なパーティチューンに合わせ、心のストッパーを外したままアガり続けようじゃない。ウキウキと騒ぐ胸のときめきがとまらない。歌の光を全身に浴びながら、麗らかな気持ちのまま、曲に合わせ誰もが無邪気な青春時代の自分に戻り、夢中ではしゃぎ続けていた。

アンコールでは、8月8日に発売する両A面シングル「夏の夢/WALK」に収録している、アニメーション映画『詩季織々』の主題歌「WALK」を一足早くライブで披露してくれた。

アコギとエレピの優しい音色が寄り添うあう中、どこかノスタルジーを覚える歌を、穏やかに流れる旋律の上で、物語を描くように歌う。なんて心にいろんな想いを染み渡らせる歌だろう。また胸の内側にいろんな心模様を刻み込む名曲が生まれた。そんな手応えを最後に届けながら、ビッケブランカのライブは幕を閉じた。

 なお、この日の公演で今年の冬頃に新作のアルバム発売と、来年1月から新作アルバムを引っ提げて全国ツアーをおこなうことをビッケブランカは伝えてくれた。制作はこれからとのこと。

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