夫婦とは、不思議なものである。赤の他人同士が一緒になり、そして家族となって家庭を築いていく。

しかし、厚生労働省が発表している人口動態統計調査によると、2017年度で21万2,000組の夫婦が離婚している。

-永遠の愛を誓いますか?

そう誓ったはずなのに、どうして離婚を選んだのか。踏み留まった方が良かったのか、それとも離婚して正解だったのか…。当人たちにしかわからぬ事情。

この連載では、離婚まで至った背景とその原因について探ってみた。




名前:淳平
年齢:32歳
職業:外資系戦略コンサルティングファーム勤務
年収:1,200万
結婚歴:1年半
前妻の年齢と職業:28歳・看護師

待ち合わせ場所である帝国ホテルの『ランデブーラウンジ』へやって来た淳平はすらりと背が高く、目を引くような容姿だった。

実家が家業を営んでいると聞き、滲み出る品格に納得する。

穏やかで、優しそうな淳平。そんな彼が離婚したのは、約2年前のことだと言う。

「前の妻は、新卒時代から交際していました。周囲の人からも“仲が良くて羨ましい”と言われるほど親密で、結婚するなら彼女以外とは考えられなかった」

しかしそんなにも愛し合っていたはずの二人だが、結婚生活はわずか1年半で破綻した。

「結婚と恋愛は、違いますからね」

ブラックコーヒーをすすりながら、どこか遠くを見つめる淳平。

果たして二人に、何があったのか。そして何故、“離婚”という決断に至ったのだろうか。


仲良し夫婦の突然の崩壊。その原因とは!?


「僕と前妻...茜と言いますが。茜と出会ったのは、新卒時代に同期が開催した食事会でした」

看護師として働く茜。仲良くなったキッカケは、淳平が風邪を引いた時に看病をしてくれたことだと言う。

「そこから一気に仲良くなって交際が始まり、 結婚までトータルで6年間交際していました」

周囲からも羨まれるほど仲が良く、いつも二人一緒。

しかし、今から考えるとそれがいけなかった、と淳平は言う。

「全く喧嘩をしなかった僕たち。お互い嫌なことがあったら黙り込むか自分自身で処理するタイプで、ぶつかり合ったことが一度もなかったんです」

結婚前にしておくべき、“価値観の擦り合わせ”ができていなかったのだ。

だが当時の淳平は、これが離婚の引き金になるなんて思いもしなかった。

「結婚は必然でした。30歳目前で当たり前のようにプロポーズし、ゴールイン 」

結婚して最初の3ヶ月は変わらず仲良しで、特に交際期間が長いこともあり、相手のことは十分知っていると思っていたそうだ。

「でも実は、何も知らなかったんです」

『ランデブーラウンジ』が、一瞬静寂に包まれた。




キッカケは、家事


長年交際はしていたものの、同棲はしていなかった淳平と茜。

「何の疑問も感じていませんでした。子供はいつ作ろうか、など話をしたり、まさに幸せな新婚生活そのものだった気がします」

しかし茜の妻としての行動に疑問を抱き、徐々に歪みが生じ始めたのは、 結婚してすぐのことだった。

「茜が、家事が嫌いだということを初めて知ったんです。苦手なのは知っていましたが、まさか洗い物を全くしないほどとは思っておらず...6 年間も交際していたのに、結婚してから初めてその酷さを知りました」

そう言いながら、苦笑いをする淳平。

「でも洗い物は食洗機に入れればいいし、洗濯は洗濯機に任せればいい。それに掃除だって、今はお掃除ロボがありますしね」

共働きだったため、手が空いている方がすればいい、と淳平も考えていたそうだ。

しかし離婚の決定打となったのは、家事をしないことではなく、茜のある考え方だったと言うのだ。

「いざ結婚してから、 交際中には全く見えていなかったお互いの“ボロ”が次々と出てきたんです。よく、結婚前に同棲はしない方が良いって聞きますが、実際はどうなんでしょうね。同棲してみないとわからないこともありますよね。」

恋愛期間が長かったからと言って、お互いのことをすべて理解し合えていたわけではない。

「6年も付き合い、100%知っているという過信の元で結婚してしまうと、そこからはマイナスしかない。結婚生活が、減点方式になってしまうんです」


離婚の決定打になった、価値観の違いとは?


長すぎた春の残酷な結果。好きが嫌いになる、負のオセロ


決定打となったのは、淳平の父親の退職祝いで家族が集まる時だった。

「“家族”のお祝いでしょ?私は行かなくてもいいよね?」

茜が放ったこの一言に、淳平はハッとした。

淳平は茜と結婚する時に、彼女の両親とも家族になるんだ、という気持ちでいた。だから当然、茜だって同じような気持ちでいてくれていると思っていた。

-僕の両親は家族じゃないってことか!?

交際期間が長かった分、お互いの両親にも何度も会っていたが、茜が淳平の親のことを話題にするのは、挨拶に行く日や会う日のみだったことをふと思い出した。

「結婚するために、うちの両親と仲良いフリをしてただけだったのかなって思うようになっちゃったんですよね」

決定的に違った、家族に対する価値観の違い。

両親との付き合いに関して何度も口論になるうちに、今まで寛容に見てきたはずのこと全てが癇に障るようになってきたという。

「掃除の件に関しても、気がつけば僕が全てやっている。共働きである以上、こちらだって疲れている時もあるのに、いつもソファーでダラダラしている彼女に対し、急激に嫌気がさしてきたんです」

一つのことが嫌になると、それに付随する全てのことが嫌になってきてしまう。

交際中は可愛いと思っていたぶりっ子も、ただの“イタイ女”としか見えなくなってきた。

朝が苦手な所も、おっちょこちょいな所も、歩くのが遅い所も、交際中は好きなポイントだったのに、全てがオセロのように“好き”が“嫌い”にひっくり返っていったのだ。

こうなるともう、“負の連鎖”を止めることはできなかった。




だが、喧嘩をしている時はまだ良かった。

徐々に関係は悪化し始め、結婚してから1年が経つ頃には、お互い口を利くことすらなくなってしまったそうだ。

「長く付き合っていた僕たちには、結婚した当初から新鮮さなんてなかった。だから、結婚生活で感じた違和感を乗り越えようとするほどの情熱も、すでになかったんだと思います。交際期間が短くて、まだ情熱で溢れていれば、その違和感を乗り越えようとお互いに努力できてたのかなって思います」

結婚前もケンカを避けて、互いの価値観を擦り合わせてこなかったのに、交際期間が長くなるほどに、お互いのことを知っている“つもり”になっていた。

そうして、いざ結婚して互いの価値観の違いを目の当たりにした時に、それを解決するほどの情熱を、二人はもう持ち合わせていなかった。

結局、このまま結婚生活は続けていけないと双方が判断し、離婚を決意した。 “あんなにも仲が良かった二人なのに”と周囲には驚かれたそうだ。

「何度も言いますが、結婚するなら交際期間は短い方がいい。新鮮さも優しさもお互いにまだ残っているから。

トキメキや愛情が枯渇してからでは、もう修復不可能だから」

現在、32歳の淳平。今は新たな彼女がおり、幸せな毎日を送っている。

ちなみに茜とは離婚後一度も連絡を取っておらず、何をしているかは知らないそうだ。

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