サッカー日本代表の守備の柱・吉田麻也が自叙伝で明かす、イギリスでの“我慢の日々”

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ロシアワールドカップでベスト16に入った日本代表。惜しくもベルギーに2−3で敗れたが、その闘いぶりに日本中が沸いた。そんな日本代表のセンターバックとして活躍しているのが吉田麻也選手だ。

『吉田麻也 レジリエンス――負けない力』(吉田麻也著、ハーパーコリンズ・ ジャパン刊)は、そんな吉田選手にとって初の書下ろし自叙伝で、6月1日に日英同時で刊行された。
ちなみに、日本版には「青いサムライ」が特別収録されており、その最後には「ついに、4年前の借りを返す時が来た」という力強い言葉が記されている。

本書のタイトルにある「レジリエンス」は、日本語にすると「逆境力」「折れない心」「復元力」「回復力」「耐久力」といった訳になるが、吉田選手は「負けない力」と解釈する。
長崎県で生まれ育ち、12歳にして親元を離れ、名古屋グランパスエイトのユース入団。そして、プロデビュー。オランダのVVVフェンロ移籍を経て、少年時代からの夢でもあったイングランドのプレミアリーグでプレーしている。
サウサンプトンでのキャリアは丸6年。今なおプレミアリーグで、センターバックとしてさらなるレベルアップを目指し続ける「マヤ・パワー」の源が、「負けない力」、すなわち「レジリエンス」なのだ。

吉田選手に対して、「おちゃらけた性格」という印象を持っている人も多いかもしれない。だが、3兄弟の末っ子ということもあり、幼い頃から「こうすればいいのか」「ああなっちゃいけない」と、一歩も二歩も引いた視線で年の離れた兄たちを観察し、物事を客観的に見ていたという。

はたから見れば、着実にステップアップしているサッカー人生だが、様々な壁にぶつかり、持ち前の「負けない力」でクリアしてきたのが本書を読むとわかる。

海外クラブなら、衣食住の全てをクラブが用意してくれると思ってしまうが、それはビッグクラブでの話らしい。
フェンロやサウサンプトンでは、携帯電話や自宅のインターネット環境、車、生活に必要なものはクラブが用意してくれるわけではない。自分で手配しなければいけないという。英語は話せても、イギリス英語の壁にぶつかった。

そして、サウサンプトンで選手キャリア「最暗最長」の我慢の日々を過ごすことになる。サウサンプトンに移籍して1年目はリーグ戦32試合に出場し、幸先の良いスタートを切ったもの、翌シーズンから怪我の影響もあり、試合に出場できない日々が続き、もがき苦しんだ吉田選手。レギュラーになれないまま4年目のシーズンまで苦しむが、5年目を迎えるシーズンの時期に暗黒期を脱出する糸口を掴みはじめる。そのトンネルの先に見えたものとは――。

試合を見ているだけでは分からないプレミアリーグで活躍している選手の生活や吉田選手の人柄を知ることができる本書。
本を通して彼の人柄に触れれば、ファンになってしまうだろう。また、吉田選手が普段からどのようなトレーニングを積み、試合中に何を考えてプレーしているのがわかると、注目するポイントが大きく変わるはずだ。

プレミアリーグでプレーし、日本代表としてワールドカップにも出場している一流アスリートの吉田選手は、もはや次元の違う人間と思えてしまう。だが、サッカーや物事に対する考え方や海外での生活のことは、私たちの仕事や勉強など、様々なことに生かせるはずだ。

(新刊JP編集部)

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