政治家が少子化に対する対策の質問を受けて、「女子が産めばいい」「産むって言っても一人産むだけじゃダメ、複数産むべき」というような発言をして「はぁ?」とさせられる事態は少なくありません。

なので今回のこともネットでは炎上しましたが、「もう、おじいちゃんのたわごと……」とウンザリはするものの、毎回目くじらを立てるべきなのかさえ、よくわからなくなってきています。しかし、大人の対応のつもりでスルーしていると、失言謝罪撤回したあとに「共感している人も多い」とか言って調子に乗られてしまう。なので、やっぱり黙っているのはよろしくない。

ということで、今週は、自民党・二階俊博幹事長の「子供を生まないのは身勝手」発言について、もやもやしてみようと思います。

ざっくりまとめると、自民党の二階俊博氏が講演後の質疑応答タイムの際、参加者から「自民党と政府が一体になって早く結婚して早く子供を産むように促進してもらいたい」という意見があり、「大変すばらしいご提案だと思います」と支持した上で、それに受ける形で「戦前、戦中、戦後に、子供を産んだら大変だから、産まないようにしようと言った人はいないんだよ」「この頃は子供を産まないほうが幸せに(人生を)送れるんじゃないかと勝手なことを自分で考えてね、国全体が、この国の一員としてこの船に乗ってるんだから、やはり、みんなが幸せになるためには、子供をたくさん産んで、みんなで頑張ろうじゃないですか」などと言ったらしい。

ネットで抽出されているのは「子供を生まないほうが幸せに(人生を)送れるんじゃないかと勝手なことを自分で考えて(いる人がいる)」の部分。これを「子供を産まないのは身勝手ということか」「望んでるのに産めない人もいることを知らないのか」「産まない選択を国ぐるみで否定するつもりか」「国のために産むつもりはない」「産めない社会にしているのはお前(たち)」と燃えました。

田舎のおじいちゃんの与太話……未だにそれでいいのか!?

なんというか、会話全体を見れば、「そういう気持ち」のおじいちゃんたちが集まって与太話をしてるだけともいえます。私たちがいい年をして「女子会」などと称して「結婚はしたいけど、結婚したいと思える男がいないのよねー」などと、わちゃわちゃ言ってるのと変わらないじゃないかと言われれば、あれ?そうなのか?とうっかり思ってしまいそうにもなります。でも待って。この人と市井の庶民とでは絶対的に立場が違うし、発言力が違う。これを放置していると、知らないうちに「産む機械のくせに産まない女子が日本を滅ぼす」的な話に戻って、え?平成最後の夏だっていうのに、未だこれ?ってなってしまいます。

まぁ基本、富国強兵時代の日本を知っているおじいちゃんたちは「悪いのはお前たち(=女子)」と思っているんでしょうね。その時代はその時代で大変だったでしょうに。そこからは目をそらして、いい思い出の部分だけを広げて「あの時代はよかった」というのは、不倫している女子が「彼以上の人はいないから結婚できない」と言うのと似ています。膨らませきったファンタジーに敵うものはないのです。とはいえ、前を向くのが大変なときは、楽なほうへ行きがちです。なので、まぁ、しょうがないんですけどね。不倫している女友達を生暖かい目で見守るように、おじいちゃんたちについては「それ、あんまりよくないよ」という視線は持ちつつ、時が過ぎるのを待つしかないのかもしれません。

そして、この蔓延している「早く結婚して早く子供を産むべし」という理論は、未婚のみならず既婚女性にも重くのしかかってきます。「産むべし」のせいで、「好きな人はいるけれども、子供は持ちたくないので結婚しない」という選択をする人だっています。

現代女性は、昔ながらの「家を守る」「血筋を絶やさない」「育児家事をする」「墓を守る」といった結婚もそりゃ大事よね……という気持ちと、「生涯をともにしたいくらい好きな人とは結婚するのが普通」という感覚のはざまで大いに揺れます。「どっちにしろ結婚しないと人としてやばいんじゃないか」という焦燥感です。もちろん、結婚は女性が子供を産み育てるために、自ら働いて収入を得られない時期、結婚によって社会的権利をもつために機能してきたという部分はあります。つまりは経済的パートナーシップです。でも、逆を返せば、自立している女性にとって、結婚と愛はイコールではなくなってきています。それもあって「結婚したい、けど結婚したいと思える相手がいない」だったり、「結婚したい、と思ったけれど、好きな人がいないのに結婚する理由ってなんだっけ?」と思ってしまうのです。そんなもやもやを解消する方法はあるのでしょうか。

「支え合えるパートナーが欲しいというのが結婚理由っていうのは、わがままなんですかね」「子供を産まないのが身勝手なら、子供を産むのも身勝手でしょう?」その2では、婚活中の独身と既婚の女性のみなさんに「子供を産まないのは身勝手だと思いますか」をズバリ聞いてみました。〜その2〜に続きます。

平成最後の夏ですが「幸せの基準は人それぞれ違う」は、未だ一般化してないっぽい。