35歳からの「おしゃれ更年期」を乗り越えるには?(撮影:梅谷秀司)

30代半ばを過ぎ、微妙に体型が変わり始め、それまでは普通に着ていたお気に入りの服に違和感を覚えるようになってきた。でも少し上の世代が着ている洋服を選ぶと急に老けて見える――。
何を着ても似合う時代が終わったアラフォー世代。いったいどのようにして自分に似合う洋服を見つけ、自分を演出していけばよいのか。
前回記事に続き、人気スタイリスト・ファッションエディターの大草直子さんに、その考え方とコツを聞いてきた。

ルール‖里鱚採錣妨せるのはシャツとジャケット

――具体的に、どのような洋服を選ぶと良いのか、30代半ばからの迷えるアラフォー世代へのファッション解決法を教えてください。

歳を重ねるごとに背中にうっすら肉がつき、丸くなってくる世代ですから、手っ取り早く言うなら、シャツを着るのが良いと思います。

女の人の体は、年とともにエッジが取れて丸くなってくるのですが、それに対してシャツというのはエッジが硬いアイテム。実は、若くて余計な肉がどこにも付いていないシャープな体に、硬い印象のシャツというのは合わないんです。むしろ丸くなってきた体にこそ似合うのがシャツ。

ただし、そのシャツは10年前くらいに流行ったストレッチが効いていてウェストがくびれているようなタイトなものではありません。肩が落ちていて、首回りもゆったりと着られるようなもので、後ろに切り替えとタックが入っているもの。それだけで背中のシルエットが大きく変わりますよ。

ジャストサイズのシャツをピシッと着るのは、20代まで。30代以降は、背中に少しタックが入っていて、体を少し甘やかしてくれる、ゆったりしたシャツを選ぶことが大切。それでも、襟のあたりにはきっちりとした硬い印象も残っているので、ちょうど良いバランスになりますね。

ゆったり着ると、良い意味での隙や遊び心も出るので、若いときは「仕事は出来るけれど少し怖そう」という印象があった人も、歳を重ねてゆったりしたシャツを着ると、女性らしさや柔らかさが出て来るはずです。シャープすぎた人が少し可愛らしく見える、これも歳を重ねたことによるメリットだと思います。

ちなみに、同じようにエッジが硬いアイテムであるジャケットも、体が丸くなってくる世代に良いアイテム。360度すべて綺麗に見えますし、袖をまくって少し着崩すことも可能です。

ただし、中をシャツにしてしまうと、ジャケットもシャツも両方が男顔のものになってしまうので、中に着るものは女性らしく、レースのブラウスなどにしたほうが良いですね。

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――仕事をしていると、白・紺・ベージュなどのシンプルな着こなしが多くなりがちなのですが、どうもおばさんっぽく見える瞬間が増えてきて。特にベージュは、歳を重ねるごとに似合わなくなってきたという声も多いのですが……。

べージュは、本当に難しいです。トップスとして着ても良いのはピンクベージュくらいでしょうか。その他の色なら、顔まわりは避けてボトムに持ってきてください。

もともとイエロー系やゴールド系のベージュは、外国人は似合うけれど、日本人には難易度が高い。黄色い肌がくすんで見えてしまうんです。

――若いときには好きだった洋服でも、どこかのタイミングで潔く捨てないといけないですね。

変化しているのだから、以前と同じである必要はないし、似合わなくなったら「諦める」「卒業する」というのも、当然のことだと受け止めてもらえたら。変わっていくことは悪いことじゃなくて、良いことですから!

ルール30代半ばからは、膝を隠して知的に

――体型や肌の色、ほかにも注意するべきことはありますか?

やはり、欧米人と日本人は似合う色や形も違うので、そこは忘れないでほしいです。私が最も欧米人と違うと思うのは、脚の長さや胸の大きさではなくて、背中のラインと膝ですね。

ずっと畳で生活してきたのだから仕方ないことなんですが、欧米人のように背中が湾曲していないと、シンプルなTシャツやヨガウェアを着こなすのは難しい。たとえば、欧米のカットソーブランドのようなシンプルな服は、よほど計算しないとなかなか「似合う」には引き寄せられないんですね。


大草直子さん(撮影:梅谷秀司)

欧米人の膝は、とんがっていて小さいけれど、日本人は丸くて平い。フランス大統領のマクロン夫人のように、60歳を超えて膝を出していてもシャープで素敵なのは元々の美しい形と手入れの賜物だと思います。日本人の丸い膝を出していて本当に綺麗に見えているのか、客観的に見るべきだと思います。

もちろん、膝が自分のチャームポイントだと強く思うのであれば、出しても良いとは思いますが、その場合は生っぽさを消した足が良いと思います。少し日焼けをしていたり、鍛えていたり。もしくは素足ではなく、グレーなどのストッキングを履いたりすると良いでしょう。膝は本当に難しいパーツだし、乾燥してきたり、膝の上の肉が取れなくなってきたり、いちばん劣化が激しいところなので、ケアすることも忘れないようにしたいですね。

――個人的には、今の流行が少し長めの丈なので、それはアラフォー世代にとっても追い風なのかなと思います。

そうですね。ただ、流行は関係なく、私の膝はもう出しません(笑)。今後どんな流行が来ようとも、出しません。そう決めたら、ちょっと楽になりましたよ。もう迷う必要がありませんから。

顔がくすんで見えるイエローベージュを着ないと決めることもそうですが、どこかで潔く線を引くのも心がけるべきことかなと思います。

ルールたГ飽穗卒兇魍个┐燭蕁⊃味を少し変えてみる

――大好きな色、ずっと似合う色だったのに、急に似合わなくなったという声も聞くのですが、何か解決法はあるのでしょうか?

今、自分に似合う色を見てもらうカラー診断なども流行っていますが、それよりも、自分の姿を客観的に見ることが大切だと思います。

私自身、ベージュもグレーもずっと好きだったのですが、30代半ばからの「おしゃれ更年期」に入ったとき、それまで似合っていたグレーのカシミヤのニットが似合わなくなったんです。そのニットの色味は、杢グレーという、白やベージュも混じったソリット(単色)ではないグレーでした。それにジーンズというスタイルが私の定番だったのに、ふと客観的に自分を見たときに急に「おばさんっぽい」と思って。

その後、冷静に見てみたら、淡い色のグレーは似合っていたんです。グレーが似合わなくなったのではなく、似合う色味が変わっていただけでした。

――なるほど。歳を重ねるにつれて、似合うようになる色味というのは決まっていたりするのでしょうか?いわゆる深みがある色が似合うようになるとか。

厳密に言えば人によっても違うのですが、少しグレーがかったアンティーク調の色のほうが、年齢とともに似合うようになる傾向があります。昔からずっと好きな色があって、楽しくてウキウキして出掛けられる色だったのに似合わなくなってしまった、と思ったら、まずはちょっと違う色味を試してみてください。

たとえば、ピンクが好きな人は、少しくすんだピンクにしてみる。みんなが大好きな可憐で華やかなローズから、ビンテージ風のローズにしてみる。

20代の頃とずっと変わらないなんて人はいないので、似合わなくなる色が出てくるのは当然なんです。似合わなくなったと感じたら、色の濃度や調子を変えてみればいいだけ。難しいことはありません。

ルールシいら決めると上手くいく

――最新刊の中に「毎日のコーディネートは靴から決める」というメソッドがありました。

「靴から決める」というルールを始めたのは、30代中頃だったと思います。下積みが明けて、急に仕事が増え、引っ越したり再婚したり2人の子どもの育児と仕事に追われていた時期でした。

それでも、適当なファッションで人前に出ることはできません。私の仕事なら、尚更そうです。そんなとき、靴から決めていくと失敗が少ないし、時短になるということに気づいたんです。

――靴から決めるというのは、トップスやボトムスよりも持っている数が少ない靴から決めると合理的、ということですか?


そうです。皆さん、その日に着る洋服はトップスから決めがちなのですが、実はいちばん多く持っているのがトップスですよね。数が多いものから決めていくと、その次の選択肢が先細りになっていってしまうんです。

たとえば、朝から雨が降っている日、朝ちょっと子どもの学校に寄ってから、日中はずっと撮影、そして最後は夜にレセプションというスケジュールだったとします。そのスケジュールに対応できる靴は、エナメルの黒色のバレエシューズだけなので、靴が決まります。ボトムスは、ヒールが履けないとバランスが取れないのでタイトスカートは消える。黒のクロップトの八分丈パンツしかないかな。それなら、トップスも黒にしたほうがフォーマルに見えるかな、と数が少ない靴→ボトムス→トップスの順番で決めていく。

この足元から決めていくというのは、とても合理的(インテリジェンス)な選び方で、30代以降の女性にぴったりだと思っています。

これらのアドバイスはすべて、私自身も悩み倒した時代があって、「おしゃれ更年期」のトンネルも超えてきたから言えることです。今まさに悩んでいる方たちには、ファッションでも仕事でも、停滞期や更年期というトンネルは必ず明けるということも伝えたいですね。

と言っても即席の解決法はなくて、目の前にあることを一つずつ整理して、片付けていくこと。それが次に繋がっていくのではないかと思います。私のファッションルールが迷える世代の助けになることを祈っています。

ファッションは、自分を映す鏡のような存在。大草直子さんのスタイリング術は、時に辛辣だけれど、理論的で単純明快、とても分かりやすいルールなので、少しずつ取り入れていくこともできるのではないだろうか。
そして、本来は女性向けのスタイリストとして活躍している大草さんなのだが、「夫の洋服選びが難しい」という奥様や同世代の男性からの声を受け、男性のファッションルールについても記事にすることに。次回は、30代半ばからのアラフォー世代、5つのファッションルール“男性編”を紹介する。