全銀協のウェブサイトでは「カードローン借りすぎに注意」というページがある(全銀行ウェブサイトより)

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■“来るもの拒まず”で、個人融資を増やしてきた

銀行カードローンを利用して、お金を借りる人が増えている。専用のカードを使えば最寄りのATMからお金を引き出せるため、使い勝手が良い。しかも、資金の使途は原則自由であるため、生活資金や遊興費などにも使える。

銀行は貸金業法の対象ではないため、事実上、銀行は“来るもの拒まず”の姿勢で、個人への融資を増やしてきた。その背景には、国内で低金利環境が続き、相対的に利ザヤが厚いカードローン事業を強化したいという銀行の事情があったとみられる。お金を使いたい個人にとっても、カードローンは気軽に使えるという感覚を持ったはずだ。

この結果、返済に行き詰まる人が想定以上に増えているとの指摘が増えている。それに対応するために、昨年半ばごろからは審査の厳格化や貸し出しの上限設定などを自主的に進める銀行が増えてきた。今後は、貸し出しを増やしたいという銀行の営業上の考えと、多重債務者の増加防止という社会的な要請をどう均衡させるかがポイントだ。法規制の側面からカードローンビジネスに関する一定のルールを策定すべきとの声も上がっている。

■年収の3分の1以上も借り入れている人が全体の52%

長引く低金利環境の中、現在、わが国の銀行は少しでも高い利回りが確保できる分野での貸し出しを増やそうとしている。そのひとつが個人向けのカードローン事業だ。住宅ローンなど、お金の使途が決められているものに比べ、カードローンは使い道が限定されていない。その分、金利は高い。その水準は平均すると10%を上回る。

それに注目し、大手銀行はカードローンを積極推進してきた。足元でカードローンの残高は6兆円程度に達している。景気が安定し、10年物国債の流通利回りを中心に市中の金利が低位で推移する間は、相応の利ザヤを稼ぐことはできるだろう。

相対的に高い金利が設定された背景には、もともと返済能力にやや不安のある個人への貸し出しが想定されていたことがある。日弁連によると、日弁連に電話で相談してきたカードローン債務者のうち、年収の3分の1以上の金額を借り入れている人が全体の52%にのぼるという。

銀行は、個人にカードローン債権が焦げ付き、回収できなくなることに備えて、グループ内のノンバンク(アコム、オリコなど)の保証を受けてきた。ただ、持ち株会社全体でみれば、銀行のカードローン残高の増加に伴い、グループ全体で負担する信用リスクは上昇する。状況次第では、ノンバンクが保証してきたカードローンの貸し倒れ関連費用が増え、メガバンクグループの業績の足を引っ張ることも考えられる。

また、銀行が個人に“貸しすぎ”との見方も増えてきた。昨年3月、全国銀行協会は、その対応として自主的な取り組みを申し合わせている。こうした取り組みは、返済に行き詰まる個人の増加を防ぐために重要なことといえる。

■借り入れに違和感を持たないカードローン利用者

銀行のカードローンを利用する個人はどのような考えを持っているのだろうか。2018年1月に全国銀行協会が公表した『銀行カードローンに関する消費者意識調査に関する報告』を見ると、利用者の多くが、“借り入れ”に慣れてしまっていることがわかる。

報告によると、利用者の40%超は消費者金融からお金を借りたことがあり、クレジットカード会社からの借り入れ経験がある利用者は60%超に達する。

■「銀行は過剰な取り立てをしないだろう」という安心感か

また、カードローンの情報源(どこで知ったか)については、テレビのコマーシャルが圧倒的に多い。銀行のカードローンを利用する理由に関しては、最も多いのが“金利の低さ”だ。それに次いで多いのが、“銀行への信頼感”となっている。

銀行のカードローン利用客の多くは、借り入れに強い抵抗感を持っていない。その上で、テレビコマーシャルで宣伝されてきた金利の低さや「銀行は過剰な取り立てをしないだろう」というような安心感を理由に、カードローンに申し込んだと考えられる。

見方を変えれば、当初、銀行はこうした個人の心理をうまく利用してきたといえる。カードローンが、借入総額を年収の3分の1に制限する「総量規制」の対象ではなく、申し込みに年収の証明が不要であることは、すでに借り入れのある人にとって、魅力的な機会と映っただろう。その結果、返済負担を冷静に考えるよりも、お金を借りて満足感や安心感を満たしたいという心理が強くなったと考えられる。

このように考えると、銀行のカードローンは、債務返済に迫られる個人のラストリゾートと化している恐れすらある。状況を放置すると、多重債務者が増える可能性が高まるだろう。先行きは楽観できない。

■テレビコマーシャルの自粛などを進めているが……

この状況を適正化するためには、銀行、監督官庁、個人、それぞれの取り組みが必要になるだろう。

すでに、銀行はテレビコマーシャルを自粛するなど、過度な勧誘の是正に動いている。いまだ取り組みは十分ではないとの考えもあるようであり、自主的な是正措置は今後も強化されるべきと考える。過去の貸し出し案件の中には、年収がないにもかかわらず、銀行カードローンを使ってお金を借りていた人もいる。銀行のカードローン事業の継続性、消費者保護の観点から、業界全体で厳格な審査の実施が求められる。

また、銀行業界は、個人がカードローンの利用に付随するリスクを正確に理解できるよう取り組みを進めるべきだ。全銀協はウェブサイトでカードローンの借りすぎに注意すべきという広告を掲載している。ただ、借り入れへの抵抗感が少ない個人が増えているというリスクを考えると、課題は多い。

■今後は「レンダーズ・ライアビリティー」が問われる

現状、こうした取り組みは、銀行の自主的な取り組みに任せられている。低金利の現在、金融庁が銀行カードローンを貸金業法の対象外とするのであれば、銀行カードローン事業はうまみのあるビジネスでありつづけることに変わりはない。従来のように、できるだけ貸し出しを増やしたいという考えが重視されるケースもあるだろう。業界全体でカードローンビジネスのあるべき姿を考える必要がある。

また、多重債務者を増やさないためにも、金融庁をはじめ監督官庁に対し、銀行業界と連携して相応の規制を検討すべきとの指摘もある。リーマンショック後の米国のように、一方的な勧誘やリスク管理の甘さを是正するために、規制を強化する手法にはそれなりの効果があったといわれている。それが、返済能力を超えた借り入れを防ぎ、利用者(消費者)の保護にもつながる。

個人は、借り入れの負担、リスクを理解しなければならない。他の借り入れの返済のために、カードローンを使えば、支払い金利などの負担は増す。それは、“真綿で首を絞められる”ことに等しい。現状の収入をもとに、借入金の金利を支払った後に、自由に使うことができるお金がいくら残るか、その範囲内で生活ができるかというように、自らの収入と支出のバランスを理解することがファイナンシャル・リテラシーを身に着ける第一歩となるだろう。

今後は「レンダーズ・ライアビリティー(貸主責任)」が問われる。その時のガイドラインは銀行業界で統一されたほうがいいだろう。その上で、銀行はカードローンビジネスの営業を行い、持続可能な形で個人向けの貸出ビジネスを行う。それが、あるべきカードローンビジネスと考える。

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

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(法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)