コンビニ業界の知られざる裏側を、内情に詳しいライターの日比谷新太さんがレポートする当シリーズ。前回の「セブンイレブン公式アプリ」の話題に続いて、今回取り上げるのは「コンビニの新規商品とそのプロモーション」について。売上不振なら1週間で棚から消えることもあるコンビニの新規商品を、各メーカーはどのようにしてプロモーションしているのか、日比谷さんがその実態を明かしています。

「高商品回転率」で支えられるコンビニ

コンビニでは、毎週火曜日に新商品が店頭に並びます。そのような新商品を、消費者はどのように認知し、購入しているのでしょうか。

コンビニが産声を上げて約40年。コンビニは流通の一大勢力となり、各メーカーからすると「販売数量が稼げる」「価格が守られる」「高頻度来店の消費者にアプローチできる」「詳細な販売データが入手できる」と良い面と、「売れないと2週間で店頭から排除される」「新規商品を発売続けないとメーカーシェアが奪われる」といった苦しい面が同居している販売チャネルです。

コンビニの現場では、毎週水曜日頃から来週に入荷する新規商品の販売方法を検討します。同時に、売れない(死筋)商品を選び出し、「発注停止」の作業を行います。発注停止をかけているため、売れていくと在庫が無くなっていきます。

月曜日の午後の時間からは、その日の深夜に入荷する新規商品の陳列場所を決めて売場の準備を行います。火曜日の朝からは新規商品がビッチリと陳列されていることで、消費者の「飽き」に対応することができ、高頻度での来店が実現されています。

コンビニビジネスはこのような「高商品回転率」で支えられているのです。そのため、新規商品と死筋商品の入れ替えという新陳代謝は必要不可欠であり、メーカーからすると新規商品を開発・発売し続けなくてはいけません。もちろん新規商品開発には、マーケットリサーチや商品パッケージデザイン、製造ラインの変更などのコストがかかり、メーカーにとってはかなりの負担となります。

消費者が新規商品の存在を知るきっかけは?

ここまではコンビニにおける新規商品の重要性についてお話しましたが、では消費者により多くの新規商品を「知らせ」「買ってもらう」には、どうしたら良いのか。そこで重要となってくるのが、商品のプロモーションです。

プロモーションは大きく分けると「アウトオブストアプロモーション」(店外)と「インストアプロモーション」(店内)があります。一般的にメーカーはTVCM、鉄道広告、ネット広告などの広告費を多く支出し、商品の認知度を高めて販売を増やす取組みをしています。

ただ、コンビニで売られる新規商品の販売促進にとって、TVCMなどの広告は有効なのでしょうか。株式会社ネオマーケティングが週1回以上コンビニエンスストアを利用する20〜69歳の男女1000人に行った「コンビニエンスストアでの購買行動に関する調査」というアンケートの報告によると、以下のような結果が出ています。

Q.新商品の発売を知ったのは?

1位:「店内(コンビニエンスストア)」66.9%

2位:「テレビ番組/テレビCM」59.6%

この結果は、私が知っている中でも約20年間傾向は変わっていません。消費者が新規商品を知る(買おうと思うきっかけ)のは、店頭で商品が陳列されている様子を見た時です。

各メーカーも当然この結果は知っています。でも、相変わらず新商品を発売する際には、膨大な広告費(5千万以上かかると言われています)が掛かるTVCMを検討するのです。これは、これまでの大量消費型の良い時代の成功体験から抜け出せていないからです。また広告代理店(電通等)のアドバイスも、時代が変わっても大きく変化していません。

しかし、やっと近年になって「ショッパーマーケティング」という概念ができつつあります。これは、ショッパー(=買物客)に対して直接店頭で商品告知を行おう、直接的に商品購買をする後押しをしようという活動です。実際に、とある大手菓子メーカーではこの方針を打ち出しており、TVCMに掛かるコストをショッパーマーケティングに全額回しているところもあります(しかも、過去最高益を出しました)。

ただ全体的には、いきなりショッパーマーケティングに移行することは無く、徐々にTVCM等のアウトオブストアプロモーションからインストアプロモーションの世界に移っていくと考えられています。要するに完全移行ではなく、ハイブリッド型や連携型になるのです。

新規商品は調べてから買う人が多い

さらに「コンビニエンスストアでの購買行動に関する調査」ではもう一点、興味深い調査結果が発表されています。

Q.新商品を購入する際の行動は?

1位「他に並んでいる商品と比較して良さそうなら購入する」73.8%

また20代限定では、以下のような傾向もあります。

「店内でスマホを使い商品情報を検索した後に購入する」25.0%

「その場では買わず、商品を調べてから後日購入する」20.5%

他商品と比べて迷ったら、検索してから購入する“購入慎重派”“失敗回避型”の割合が増えているのです。

実際「SNSがきっかけでコンビニエンスストアの「新商品」を購入した経験は?」という質問に対して、49.3%の人が「SNSがきっかけで、コンビニエンスストアで新商品を買ったことがある/新商品に興味を持ったことがある」と回答。年代が若くなるにつれてその割合は高くなり、30代で58.0%、20代では68.0%となっています。

このような傾向を鑑みるに、今後はネット広告(SNS)と店頭プロモーションの連動が、今後の新規商品拡販プロモーションの重要なキーとなってきそうです。……それにしても今の若い人は、それだけ自分のチョイスには自信がないのでしょうか? それとも友達の意見を大事にしたがるのか? そもそも衝動買いをしたいという欲求が低いのか? こういう傾向があるのであれば、店頭にサイネージを設置して、アマゾンの星やコメントを出すといった施策も、有効なのかもしれません。

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